天空に続くプールのようにラグジュアリーなこの風呂は、ホテル「はつはな」ご自慢の温泉のひとつ。
樹木が生い茂る山に向かう開放感は現代アートのよう。
宿泊客のみが利用できる貸切風呂で、館内に全4種類あります。
プライベートを望む客が多いホテルなだけに、他者とバッティングしない事前予約制。
45分間という時間はのんびり過ごすには短いものの、このホテルに泊まるなら空間と絶景を独り占めできる機会を逃す手はありません!
その気になれば全4種類を制覇することもできちゃいます。
利用に追加料金が派生しないのも嬉しいですね。
全35部屋のベランダに自家源泉の露天風呂がある、はつはな。
部屋に籠もって湯に浸かるもよし、館内を歩いて貸切風呂に行くもよし。
さらに大浴場も2つあります。
そのうちひとつはサウナつき。
風呂というカルチャーを好みで選択できる自由度の高さが素晴らしい。
はつはなに一泊ご招待いただいたこのレポート記事は、前編と後編にわけてお届けしています。
前編の「宿泊部屋、夕食・朝食」に続く今回の後編は、「館内、貸切風呂、大浴場」
心惹かれた館の注目ポイントを掲載します。
主な内容は掲載順に、
1. 展望テラス
2. 貸切風呂
3. 大浴場
4. ロープウェイ
館内を歩いているだけで驚く発見が多く、いつの間にか時が過ぎていきました。
箱根湯本駅から車でわずか10分の距離なのに、外界と隔離された静かでひっそりとしたホテル。
チェクインの15時から翌朝のチェックアウト11時まで、ここにいるだけで幸せになれます。
前編でも宿泊の感想を述べていますので併せてご覧くださいませ。
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ホテルのエントランスから奥に歩き進むと出現するのがこの展望テラス。
長方形に屋外の風景を切り取り、現実の風景を絵画に見立てた日本家屋の「借景(しゃっけい)」が頭に浮かぶ建築構造です。
すごくモダンな空間ながら、和の伝統が息づく心地よさ。
入館すぐに「来てよかった〜!」と思える最初のイベント。
このあとに客室に行ったら、ベランダがこの小規模版だったというサプライズまで待ち構えてました。
(客室の詳細は前編にて)
最高に気持ちいい空間で、撮影以外に何度もここに足を運んでしまいました。
翌日の帰りのときも、送迎バスを待つ時間に景色を眺めながら気持ちの整理を。
山は11〜12月に紅葉を迎えるそうです。
春になると桜も咲くようで。
四季折々の景色が移り変わるテラスです。
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続いて冒頭の貸切風呂「明灯の湯(あかりのゆ)」に加え、残す3つ「水面の湯(みなものゆ)」「静寂の湯(しじまのゆ)」「川音の湯(かわとのゆ)」を見ていきましょう。
「水面の湯」
冒頭の湯と同様の屋外につながるオープン構造の風呂。
撮影したときは雨降りで、屋外に溜められた水がしずくで揺れ動き、不思議な視覚効果を生んでいました。
浴槽が丸い明灯の湯と異なり、こちらは四角でややハードな印象。
こちらも同じ「水面の湯」です!
夜に入浴しに行ったらゴージャスなライトアップが。
夜の繁華街っぽい色気は自分の趣味ではないのですが新鮮な体験でした。
色彩の美しさは一見の価値ありです。
仕切り窓がなくても屋外に出るのはNGなのでご注意を。
ひとつ私的にマイナス要素に感じてしまったのが、ピアノソロの音楽が流れ続けていたこと。
ごく小さな音量でしたが、消したかったです。
湯を動かす音と、静寂の自然界とで十分なハーモニーが奏でられてましたから。
ソロなら例えば現代音楽のスティーヴ・ライヒやフィリップ・グラスなどの本格アートなら相性抜群でしたね。
グラス作曲のアルバム『Agauas da Amazionia』などはアマゾン川をイメージした曲で、ここにハマりそうです。
(ピアノソロではありません)
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「静寂の湯」
全4つの貸切風呂のなかで唯一露天風呂でない場所がここ。
窓のないクローズ空間。
自慢は材木が組み上げられた吹き抜けの高い天井。
浴槽の木の縁に頭を寝かせ、落ちてくるであろう水滴も楽しむ哲学的な風呂。
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「川音の湯」
屋外が明るい朝風呂に、ここを選んで大正解でした!
朝7時半ごろに入浴してきました。
自然(樹木)をもっともダイレクトに感じられる貸切風呂。
全4つのうちここだけが低階層にあり、屋外に出てしばらく階段を歩く秘湯感も心地よくて。
この先に流れる須雲川の音がよく聞こえるから“川音”の名が。
縁なしのインフィニティ風呂は、湯がザバ〜ッと外に流れ落ちます。
浴槽はもっとも深い場所で110cmもあり、立ち湯ができます。
プール気分の爽快な風呂。
わたしも軽くツィ〜と身体を泳がせちゃいました。
贅沢な空間のなかで童心に戻れたひととき。
景色を内側で反射する丸窓も美しかったです。
丸窓は日本の歴史的な家屋を思い起こさせ、気持ちが落ち着きます。
ここが日本の箱根であることが、この1点だけでも十分に表現されていました。
浴槽に屋根を設けて景色を横長に切り取った構図もこの国の美学でしょう。
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続いて大浴場を。
全面ガラスの窓から竹林を眺める、縁側のようなラウンジと着替えスペース。
宿泊客だけが利用できる露天風呂に入るまでがすでに、ラグジュアリーな和モダンの世界。
大浴場「竹の葉」はなんと岩風呂でした。
デザイン空間の貸切風呂とメリハリをつけた土着的な温泉。
上の写真以外にも幾つか浴槽があり、一箇所に人が密集せずゆっくりできそうです。
ラウンジなども含めると、かなりの敷地面積になる大浴場です。
思わず「宿泊客以外にも温泉施設として開放すれば、ここだけで別の経営ができそう」と考えてしまったのは、野暮なビジネス発想でしょうか。
この館には貸切風呂に加えて全客室が温泉風呂つきです。
わざわざ大浴場に行くのは、日本風情を味わいたい人、“ザ・浴場”を好む人に限られそう。
とはいえ選べる範囲を広く設定しているのが、はつはな流のホスピタリティ。
ここに泊まって風呂に不満を持つ人は皆無なんじゃないかと思います。
実はもうひとつ大浴場「山の端」があります。
その一角が上の写真。
時間帯での男女入れ替え制。
これでもかっ、てほど温泉を充実させたホテルです。
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離れの大浴場に行くにはスロープカーを使います。
箱根といえばロープウェイ、それに似たプチ体験ができるのが楽しすぎ!
ごく短いルートながら充分にアトラクション気分です。
客が入口でボタンを押して呼ぶだけの簡単操作。
大人だって、ワクワクするものはワクワクするんです。
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前編<宿泊部屋、夕食・朝食>、後編<館内、貸切風呂、大浴場>と2回にわけてお届けした今回のはつはな紹介はいかがだったでしょうか。
旅をする宿泊客に特化した「泊まり体験して、ここだけで完結する」ホテルです。
館内にはほのかにオリジナルのアロマが香り、エントランスから入館したとき、客室から廊下に出たときに爽やかな気分になれます。
客を居心地よくさせる温もりの工夫が、シャープな現代建築を冷たく感じさせないことにも役立っています。
前篇でも述べたように、一般的なラグジュアリーホテルとはやや存在が異なる宿泊所だと思います。
風呂を選ぶ自由度がとても高い反面、食事の種類は限られます。
(夕食はコース料理のみ)
食べられる時間帯も制約があります。
食事のルームサービスはなく、家電類の生活用品の装備も限られます。
ホテル周辺は、ほぼ山と道路だけ。
軽食やアメニティを買えるコンビニ類が近くになく、ホテル内にも同様の売店や薬局がありません。
宿泊客は泊まるために何が必要なのか把握しておく必要があるでしょう。
ただ宿泊した実感でお伝えしておきたいのは、チェックインから翌朝まで居続けて、退屈する大人はまずいないだろうということ。
この記事に掲載した写真と紹介文で「自分に合いそう」と感じた方であれば。
気分をリラックスさせつつも感覚を研ぎ澄ます、大人流の箱根の楽しみ方をこのホテルは教えてくれました。
ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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