国内と海外のギャラリーが共演する現代美術のアートフェア、『Art Collaboration Kyoto』が京都で開催

  • 写真・文:中島良平
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国立京都国際会館を会場にスタートしたACK。VIPとプレスを対象とする初日から活況を呈した。

「コラボレーション」をコンセプトに、京都で開催されるアートフェア『Art Collaboration Kyoto(ACK)』。国内と海外、行政と民間、美術とその他の領域、など複数の意味でコラボレーションを形にしているアートフェアだが、国内のギャラリーがホストとなり、海外のギャラリーとタッグを組んでブースを展開する「ギャラリーコラボレーション」のコーナーが独自であり、また興味深い組み合わせやコンセプトの展示が生まれる仕組みとなっている。目を引いたいくつかのブースを紹介したい。

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小山登美夫ギャラリーと台北のEach Modernによるコラボレーション。 現代水墨画家のツェン・チェンインの作品(画面左の2点)が、桑原正彦、川島秀明、中園孔二の作品と共演する。
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2022年に東京・日本橋馬喰町にオープンしたCON_と韓国・ソウルのWWNNのブースは、会場そばの宝ヶ池にインスパイアされたという展示が秀逸だ。アポリナリア・プロッシュによる立体作品を池に咲く花に見立て、その周囲の景色を複数の絵画作品で表現した。
 
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樂家15代樂直入の作品を扱う水戸忠交易がホストとなって迎えるのは、ロンドンのアネリー・ジュダ・ファイン・アート。「創造的な芸術における純粋な感覚の絶対性」を説くシュプレマティズムの提唱者、カジミール・マレーヴィチの小品ドローイングと、千利休の思想を具現化した初代長次郎の技を受け継ぐ樂直入の作品が繊細なハーモニーを奏でる。
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無人島プロダクションは、パリのCrèvecœurとロサンゼルスのNonaka-Hillを迎えて作品を展示。Nonaka-Hillは祇園にギャラリーNonaka-Hill京都をオープンしたばかりであり、柿落としとして今井麗の新作絵画展『ARCADIA』を開催中。町家に大型ペインティング作品が展示された様子が印象深い。
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京都のKANAGAEが香港のTHE SHOP HOUSEと共有するテーマは「現代素材問答」。廃棄されたPCや携帯電話から採集・精製したレアメタルから銀を集め、陶器に銀彩を施す福村龍太の作品(手前左)などが並ぶ。
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群馬県高崎市でコレクターの原田崇人が運営するrin art associationと香港のWKM Gallery。それぞれのギャラリーから、植物をモチーフとする立体作品と、抽象絵画を対比的に表現する作家4名の作品を展示している。

「ギャラリーコラボレーション」には合計27のブースが並び、57軒のギャラリーが出展している。大型ブースで各ギャラリーが推す作家の作品を探すのもいいが、小型ブースでコンセプチュアルにキュレーションした展示を楽しむのもお勧めしたい。そしてもうひとつ、京都にゆかりのある作品を扱う国内外のギャラリーや、京都を拠点とするギャラリーが集まる「キョウトミーティング」にも13のブースが登場した。

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大阪のアートコートギャラリーは、京都在住の2名の作家の作品を展示。亀裂を特徴とする陶表現を行う秋山陽と、目に見える風景の向こう側へと眼差しを向ける画家の児玉靖枝。深遠なる自然を体感させる展示空間となった。
 
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韓国・釜山のジョヒョン・ギャラリーが展示しているのは、パク・ソボやイ・ベなど京都にゆかりのある韓国人作家の作品。パク・ソボは生前、毎年のように京都を訪れていたそうだが、画面左の作品《Ecriture No.130417》は、京都で見た夕焼けにインスパイアされて制作したという。
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大丸松坂屋百貨店が実施するアーティスト育成プロジェクト「ラダー・プロジェクト」の一環として、本年度の対象作家である渡辺志桜里の展示をプロデュース。非人間から見た生態系をテーマに制作を続ける渡辺は今回、外来魚ボックスに遺棄されたブルーギルを素材にインスタレーション《堆肥国家》(写真)を手がけ、能をもとにした映像作品《射留魔川》とあわせて発表した。
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「伝統と革新」をテーマにMUFG工芸プロジェクトを展開する三菱UFJファイナンシャルグループの協賛によるKOGEI Cafèを出口付近に設置。帰り際に抹茶と和菓子でひと息つくのも一興。
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会場出口でパブリックプログラムとして来場者を見送ってくれるのは、アートコートギャラリーの秋山陽の立体作品。

ACKの関連プログラムのいくつかと、時期をあわせて企画された展示などが市内にもいくつか展開する。 そのひとつが、建仁寺の両足院で行われているボスコ・ソディ&加藤泉『黙:Speaking in Silence』。2007年以来の付き合いだというメキシコと日本の作家が初めてふたりで自ら企画した展示は、死生観や自然観などの深い位置でのつながりを想像させる見応えのある内容となっている。庭園などにそっと置かれた立体作品なども見流さないでほしい。

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ボスコ・ソディ&加藤泉『黙:Speaking in Silence』展示風景より

秋の京都。紅葉はまだだが、アートと出会い、魅力的な作品を購入できる貴重な機会だ。この週末に訪れてみてはいかがだろうか。

『Art Collaboration Kyoto』

開催期間:2024年11月1日(金)〜11月3日(日)
開催場所:国立京都国際会館
京都府京都市左京区岩倉大鷺町422
https://a-c-k.jp

ボスコ・ソディ&加藤泉『黙:Speaking in Silence』

開催期間:2024年11月2日(土)〜11月17日(日)
開催場所:両足院
京都府京都市東山区大和大路四条下る4丁目小松町591
https://ryosokuin.com