オアシスの写真コラージュ作品展がスタート! 作家の河村康輔が切り貼りのテクニックを語った

  • 写真・文:一史
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別会場で同時開催されている「リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展」用に河村康輔が制作したアレンジロゴ。

東京「六本木ミュージアム」で11月1日(金)より開催されている英国のロックバンドであるオアシスのデビュー30周年記念展覧会「リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展」が話題を呼ぶなかで、もうひとつ見逃せないオアシス展がある。同バンド関連の写真やロゴをコラージュ手法で再構築したアート作品が並ぶ「Oasis Origin + Reconstruction」である。同展ではこのアートにも使われている写真家ジル・ファーマノフスキーが撮影したオアシスのドキュメント写真も展示。コラージュアートを手掛けた河村康輔に話しを聞いた作品の制作テクニックと、会場の様子を紹介しよう。

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東京・神保町に2024年3月にオープンしたギャラリー「New Gallery」にて、10月31日(木)〜11月24日(日)まで。

記事冒頭の水面の波紋のように波打つオアシスのロゴは河村氏が手掛けたもの。「リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展」の公式ロゴでもある。河村氏は主にコラージュ手法を用いるアーティスト/グラフィックデザイナー。よく知られる作風が、短冊のような細いストライプで画面を切り分け再び組み直したもの。1枚の絵や写真が曇りガラスの透過のように揺らぐ。ネットに流通する作品を眺めるとデジタルイメージと思えるかもしれない。しかし実物を目にするとその認識が変わる。制作の過程でデジタル技術を用いても、組み立て作業はアナログな手仕事だ。グラフィカルな彼の作品には繊細な奥行きがある。

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主要メンバーのギャラガー兄弟の顔がドッキングしたコラージュ作品。
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河村作品は細くカットした紙をずらして貼り付ける手法でつくられている。

東京・神保町のコンパクトなギャラリーでこの展覧会が開催されている。会場にて河村氏に作品制作のやり方を解説してもらった。まず尋ねたのは、オアシスを撮ったハイレベルな写真の受け取りについて。印画紙に焼きつけられた紙写真? もしくはデジタル化したデータ?
「デジタルデータです。誰かの写真を使うときは必ずデータでいただくようにしています。作品のつくり方と大きく関わりますので」
河村氏が問いにそのように答えてくれた。それではデータを彼がプリンター出力した紙を細くカットしていくのだろうか。紙は写真に向く光沢のある厚手用紙?
「プリントに使う用紙は普通のコピー紙です。いちばん使い勝手がいいのです。最初に出力の大きさをデータ調整してコピー用紙にプリントします。その紙をシュレッダーマシンに掛けて切り分けます。機械の歯のザラつき具合が好きでこの手法を利用しています。シュレッダーは均等にカットしますが、そのなかにも偶然性の動きがあります。このとき厚みのある紙だとカットしたエッジが反ってしまい使いにくくなります。画面に貼り合わせたあと最終的にコーティングするのですが、その作業でも薄いコピー用紙が最適です」

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1枚の写真を、レコード盤と同じ30cmの正方形に4分割して構成した作品。

作品は最初にデジタル(パソコン画面)で完成形をシュミレーションするのだろうか。
「いえ、シュレッダーした紙をパズルのように並べつつ試行錯誤しながら仕上げていきます。シュレッダーの歯の間隔が一定なのに様々な線の幅があるのは、単に横に並べて1枚に組み立てるのでなく重ね張りを繰り返しているから。パーツを上下にずらしたり、別のプリント写真と交互に貼っていく作業は、そのときの感覚で調整していきます」
シュレッダーを使うことで作品づくりに生じる制限は?
「紙幅がA4までしか対応できないことですね。縦幅はA3にもできますが、横は定まっているからプリント時のカットに気を配ります。今回のオアシスの作品はすべて正方形で、レコード盤と同じ約30cmに揃えています。A4の幅も29.7cmでほぼ同様です。プリントするときは印刷のトンボのように紙に余白が残るようにして、微調整しつつ整えました」

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モチーフはステージから見たコンサート会場。
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ノーマルと青の2色で2タイプ存在する同じ構図の写真を、交互につなぎ合わせてストライプを強調した作品。

カラー印刷向けでないコピー用紙に写真を出力するのは色やトーン調整が難しそうである。
「確かに元の写真を忠実に再現することはできないでしょう。ただこれまでの経験では写真家に問題視されたことがありません。別の作品と呼べるほど変化していますから。それを不服に思う人が少ないようです」

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英国国旗を歪ませたオアシスのオリジナルロゴが、河村氏の手によりさらに揺らぎを与えられた。

写真データを自分流に活用して作品をつくる河村氏。とはいえ今回のオアシス写真とのコラボレーションでは、2色のバージョンがあるジルが撮り下ろした写真を交互にストライプで配置した作品もつくっている。写真と被写体への尊敬心が息づくことが、アート好きも写真好きも魅了する理由のひとつかもしれない。今回の作品のオリジナル写真はすべて、主催側(ソニー・ミュージックエンタテインメント)から提供された権利問題もクリアされたもの。選べる幅は限られたようだが、河村氏はそこを気にせず全力で制作に臨んだようだ。

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ファッションシーンとも関わりも深いコラージュアーティスト/グラフィックデザイナーの河村康輔。

オアシスが好きかどうかは、この展覧会を観に行くのに必須の前提ではないだろう。もっと言うならロック音楽が好きかさえ重要ではない。美しく端正な写真とグラフィックに惹かれる気持ちさえあればOK。ユニクロのTシャツラインであるUTのクリエイティブ・ディレクターも務める河村氏と、長年に渡りオアシスと付き合い続ける写真家ジルとのスタイリッシュな合同展。スマホ画面では感じることのできない、作品が持つ確かな物質感にも気づける貴重なチャンスである。

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写真家のジル・ファーマノフスキー(Jill Furmanovsky)が1994年から2009年に掛けて撮り続けたドキュメンタリー写真も今展覧会の柱の一翼。

Oasis Origin + Reconstruction

New Gallery
東京都千代田区神田神保町1-28-1 mirio神保町 1階

会期:2024年10月31日(木)〜11月24日(日)
開館時間:12時〜20時

https://newgallery-tokyo.com/oasisoriginreconstruction

 

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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