ブレゲの「タイプ XX 2067」は、フランス航空史に燦然と名を残す伝説をゴールドとセラミックで表現する最新作だ。空の名品の一方、「マリーン」コレクションに象徴される、海をモチーフにした時計の歴史も見逃せない。
海と空へ、仏軍とともに時を刻んだブレゲ
ブレゲは、18世紀の昔から21世紀の現代まで途切れずリスペクトを受け続ける時計ブランドである。創業者アブラアン-ルイ・ブレゲは〝時計の進化を2世紀早めた人物〟とも呼ばれる天才時計師。フランス革命時代のパリにて王妃マリー・アントワネットの心を射抜き、その後も皇帝ナポレオンをはじめ世界の王族たちを顧客とした。高級機械式腕時計の花形機構であるトゥールビヨンも、初代ブレゲが1801年に特許を得た発明なのである。
そのブレゲ栄光の生涯で得た名声のなかでも特筆すべきが、ルイ18世に叙せられた〝フランス王立海軍時計師〟の称号である。航海術の要でありすべての時計に優越して正確さが要求されるマリーン・クロノメーターの製造は、国防上の重要課題。その責任を一身に負う職は、同時代でただひとり。時計師として最高の名誉だった。
仏海軍に奉じた最高の時計師とマリーン・クロノメーターの伝説は、現代のブレゲ「マリーン」のコレクションに生きている。その名の通り海の時計であり、象徴的な波のギョーシェ模様が文字盤に彫り込まれたゴールドモデル、防水性能にこだわったクロノグラフ、アラームウォッチや複雑時計も揃う。秒針カウンターの図形は、海洋上で使われる国際信号旗のなかで、ブレゲの頭文字でもあるB旗をかたどったものだ。
一方、現代のブレゲが得ているもうひとつの名声が、空の名品のつくり手であることだ。ブレゲ家は世界初のヘリコプター飛行に成功した航空界の偉人、ルイ-シャルル・ブレゲを輩出した。彼が設立した航空機メーカーの機体には、ブレゲ製航空機器も搭載された。ブレゲは1950年代にコックピット・クロノグラフを製作し、フランス軍のミラージュ戦闘機にも採用。さらにブランドが1954年にフランス空軍から受注し、5年にわたり1100本が供給された高性能フライバック・クロノグラフは、現在まで続くブレゲ「タイプ XX」のルーツである。
ローズゴールド製の両方向回転ベゼルにブルーのセラミック製リングがセットされ印象がガラッと変わった「タイプ XX」の最新作や「マリーン」のフルラインアップ。魅力的なブレゲのニューモデルと出会えるいちばんの場所は、今年全面改装されたブレゲ ブティック銀座だ。店舗へ訪れたブレゲ家7代目、現在ブレゲ・ミュージアムの館長を務めるエマニュエル・ブレゲ氏は語る。「ブレゲは19世紀から世界に向けて店を設けており、東京でも取り組みは継続しています。ブレゲの歴史とは過去だけではなく現在です。過去の変遷を感じながら、落ち着いた雰囲気で商品が見られる環境。ここで新しい私たちの歴史を発見してもらいたいです」
---fadeinPager---
海とのつながりから誕生した、「マリーン」コレクション