周囲に訊いた、ヨシロットンの知られざる素顔とその人柄

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    アーティストのヨシロットンのまわりには多くのクリエイターが集まっている。さまざまな分野で活躍をしている6人の仲間たちに、協業やプライベートを通して見えた素顔や人柄について話を訊いた。

    Pen 2024年12月号の第2特集は『YOSHIROTTENとは何者か?』。デジタル感あふれる作風で多くの一流企業やブランドと協業するYOSHIROTTEN。しかし、彼のこれまでの歩みや交友関係、影響を受けたカルチャーなどについて詳細に記された文献は意外にも少ない。今特集では、初期作品や根底にあるビジョンを深掘りし、知られざる側面にも光を当て紐解いていく。

    Pen 2024年12月号(10月28日発売) ¥990(税込)
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    YOSHIROTTEN ●アーティスト

    1983年、鹿児島県生まれ。ファインアートから商業美術、都市文化から自然世界まで、幅広い領域を往来する。多くのブランドやミュージシャンのアートディレクションも担当。クリエイティブスタジオ「YAR」を率いて多様な仕事を手掛ける。

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    ひと目でわかる、圧倒的な個性とバランス(宇多田ヒカル)

    今年、大きな話題となった音楽作品のひとつが、宇多田ヒカルのベストアルバム『サイエンス フィクション』だ。宇多田はこの記念碑的作品のアートワークについて思案している時に、知人からヨシロットンを紹介され、彼の世界観や枠に収まらない活動に共感。その日のうちに依頼したという。ヨシロットンの魅力については、「さまざまな肩書やメディウム、ストリートからハイブランド、これだけ幅広い活動の中で作品のどれもがひと目でヨシロットンさんのものだとわかる個性とバランス感覚」と語ってくれた。

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    『サイエンス フィクション』(2024年)
    2024年4月にリリースされた、宇多田のキャリア初のベストアルバム。25年間に制作された全楽曲から宇多田自身がセレクト。アナログレコードでもリリース。ヨシロットンは本作のアートワークを手掛けた。
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    宇多田ヒカル ●ミュージシャン

    1983年、アメリカ生まれ。98年に「Automatic / time will tell」でデビューし、翌年リリースした初のアルバム『ファースト・ラブ』は日本のアルバムセールス歴代1位を記録。以後、時代ごとの傑作を発表し続けている。

    作品の背景を語る、グラフィックに驚嘆(真鍋大度)

    音楽を愛するふたりは、DJでの共演を機に友人関係に。その後、協働プロジェクトを進めた際に作品のクオリティの高さに驚いたという。「当初、ダンスパフォーマンスのフライヤー用のグラフィックを依頼したのですが、その内容が予想以上に作品の背景を物語るものだったので、作品本体にもそのグラフィックを使わせてもらいました」。また、仕事の進め方にも共感したそう。「手を動かしてアウトプットを見せてくれるところが、自分たちのようにプログラムをゴリゴリ書く、ハッカー文化に近い気がします」

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    『Syn : 身体感覚の新たな地平』(2023年)
    真鍋と演出振付家のMIKIKOが共同で制作した新作ダンスパフォーマンス。観客が参加者として作品に関われるプロジェクトで、ヨシロットンはその試みを見事にグラフィックで表現した。
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    真鍋大度 ●アーティスト

    1976年、東京都生まれ。ライゾマティクス共同設立者。リオデジャネイロ五輪閉会式やPerfume結成25周年展のクリエイティブディレクションなどの仕事で知られる。デジタル技術を駆使したアート作品は評価が高い。

    感覚的なだけでない、ロジカルな仕事術(小川 哲)

    ともに通っていたバーの周年企画でコラボ作品を展示することになり、店長が引き合わせて初めて対面したふたり。「アーティスト然とした方を想像していましたが、実際はロジカルな面も持ち合わせていて、話も明快でした」。宇宙をテーマにした作品制作は、小川哲の短い文章とヨシロットンのグラフィックでキャッチボールを続けて完成した。「絵と交わることで僕の文章表現が変わっていくようで面白かったです。彼の作品は感覚的で難解に思う面がある一方、アートに詳しくなくても理解できる面もあると思います」

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    『ナイトパズル』(2024年)
    小川とヨシロットンの初のコラボレーションプロジェクト。見る者の想像をかき立てる文章とグラフィックを組み合わせた複数の作品で構成され、下北沢のバーで2週間ほど展示された。
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    小川 哲 ●小説家

    1986年、千葉県生まれ。2015年に『ユートロニカのこちら側』でデビューを果たす。23年には『地図と拳』で直木賞を受賞する。今年10月には最新作『スメラミシング』を刊行。photo: Seiichi Saito

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    過去の傑作に、新たな生命を宿すセンス(南塚真史)

    数多くのアーティストを目にしてきた南塚真史。「2018年の個展を見て、可能性を感じました。グラフィックデザイン出身のアーティストは多いけれど、彼のオリジナリティは気になりましたね」。また、南塚のギャラリーに所属するイラストレーター山口はるみとのコラボを絶賛。「エアブラシを使った彼女の古典的なペインティングをレンダリングし、3DCG化しました。現代的なグラフィックのように見せ、新たな生命を吹き込んでいます。作品に対する理解とセンスを要す技。時代をつなぐアーティストだと感じています」

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    『ハルミズ サマー』(2018年)
    ギャラリー「ggg」で開催された山口はるみの展覧会では、70年代の傑作「ハルミ ギャルズ」をはじめとしたペインティングをヨシロットンがレンダリング。いまどきのCGグラフィックのよう。
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    南塚真史 ●ギャラリスト

    1978年、東京都生まれ。ギャラリー「NANZUKA」を運営。田名網敬一や空山基などのアーティストを世界に送り出し、ポップカルチャーやストリートアートを背景とする作品を中心に、アートの新しい価値観を提示する。Courtesy of NANZUKA

    “ありそうでなかった”新しいものを構築(守屋貴行)

    最新テクノロジーでエンタメをアップデートする守屋貴行。出会ってすぐに「『この人と仕事したい』と直感的に思わせるなにかがあった」と振り返る。13組のアーティストが参加したグループ展「imma天」では、守屋のつくったバーチャルヒューマンにヨシロットンのアートディレクションを加えた。「彼の手が少し入るだけで、それはもう“ヨシロットンの作品”になる。よく見ればわかりますが、引用される70〜90年代のコンテクストが彼のフィルターを通ることで、ありそうでなかった新しいものに生まれ変わります」

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    『imma天』(2021年)
    バーチャルヒューマンimmaと13組のアーティストがコラボレーションしたグループ展。リアルとフェイクにまたがるimmaの曖昧な存在感を、ヨシロットンがアブストラクトに表現している。
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    守屋貴行 ●プロデューサー

    1983年、神奈川県生まれ。26歳で映像プロデューサーとして活動開始。2019年、日本初のバーチャルヒューマンimmaを生み出す「Aww」を設立。東京五輪パラリンピック閉会式の映像制作など、その活動は多岐にわたる。

    誰に対しても、ニュートラルなスタンス(榮倉奈々)

    多くのクリエイターと親交が深いヨシロットンは、どのような人柄なのだろうか。15年ほど前から友人だという榮倉奈々に聞いた。「出会った時、既に俳優としてドラマなどに出演していた私に対してもニュートラルに接してくれて、うれしかったです。自然体だけど、人の懐に入るのが上手で、さりげない優しさも感じます。あとはロマンチスト」。仕事とは無縁の関係から始まり、その後個展を訪れて、その才能に衝撃を受けたそうだ。年月を経てそれぞれ活躍していても本音を言い合える関係性はずっと変わらない。

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    榮倉奈々 ●俳優

    1988年、鹿児島県生まれ。2010年、映画『余命1ヶ月の花嫁』で日本アカデミー賞新人賞を受賞。その後も数々の話題作に出演を続ける。23年には自身がCEOを務めるアパレルブランドのニューナウを立ち上げた。
    photo by jun yasui from ELLE Japon Sep.2022

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