エベレストで「100年前の登山家の足」を発見。初登頂の記録が変わる可能性も?

  • 文:Takahashi Rikako
Share:

 

shutterstock_2476521557.jpg
Photo:Daniel Prudek/shutterstock※写真はイメージです

100年前、世界最高峰の山エベレストに登り、行方不明になっていた登山家の“足”が発見された。

ナショナル・ジオグラフィック誌のドキュメンタリー制作チームが、溶けた氷河からブーツと靴下、その中に残った人間の遺骨を見つけた。

---fadeinPager---

「エベレスト初登頂」の歴史が変わる?

1924年、イギリス人登山家のジョージ・マロリーとアンドリュー・“サンディ”・アービンが、記録では当時初となるエベレスト登頂を目指した。ところが6月8日、頂上から約240メートル下の地点で、当時22歳の2人は消息を絶った。

1999年にマロリーの遺体は発見されているものの、アービンの遺体も所持品も行方が分からなかった。今回チームが発見したのは、アービンのブーツだ。靴下には「A.C. IRVINE」と刺繍が入っている。

2人が登頂したかどうかは明らかになっておらず、ナショナル・ジオグラフィックいわく「史上最大の謎として語り継がれてきた」。もし2人が登頂したという確実な証拠が出れば、ニュージーランド人のエドモンド・ヒラリーとシェルパのテンジン・ノルゲイが頂上に足を踏み入れる29年前に、すでに初登頂が達成されていたことになる。

マロリーの遺体にはロープの跡があり、2人は最後の瞬間にロープで繋がれていた可能性がある。透過率の低いゴーグルがポケットに入っていた点から、夕方、つまり登頂後下山中に滑落したのではと推測されている。

マロリーは妻の写真を携帯しており、山頂に置いていく予定だったそうだ。その写真は、マロリーの所持品から発見されなかった。

登山中、アービンはコダック製のフィルムカメラを持っていた。そのカメラを探しあて写真を現像すれば謎の解明に近づくのではと、チームは胸を躍らせている。遺体のほかの部分や所持品が、ブーツの発見場所の近くにある可能性は高い。

---fadeinPager---

山中に未だ200人以上の遺体か

ヒマラヤ山脈、ネパールと中国との国境にまたがるエベレスト。毎年約800人が許可を得て登頂に挑戦する。ふもとの“観光客向けエリア”を含めると、毎年約270万人が登山を試みる。

その中で、滑落事故などにより命を落とす者も毎年いる。2023年は、18人と過去2番目の死亡・行方不明者数を記録した。

エベレストに残されるゴミや遺体、遺物の回収も長年の課題となっている。定期的に「清掃登山」が開催されるが、今年行われたネパール軍による大規模な清掃では11トンのゴミ、5人の遺体が回収された。

BBCによると、50トンを超える量のゴミと、200人以上の遺体がまだエベレストを覆っていると推定されるという。

---fadeinPager---