ミニの新型EV。キュートなルックスと洒落たインテリアが魅力の「エースマン」試乗記

  • 文:小川フミオ
  • 写真:Mini
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ミニが「エースマン」と名付けた新型車を2024年6月に発売した。特徴は全長4m程度のコンパクトサイズの4ドアハッチバックボディと、ピュアEVのみの設定。さらに斬新なデザインも魅力的だ。

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全長4mのコンパクトな車体だが、そうは見えない押し出し感がある。

まず面白いのは、デザインコンセプトだ。「オリジナルミニの設計者が生きていたら、いまならどんなモデルチェンジをするだろうと考えました」。ミニでヘッド・オブ・デザインを務めてきたオリバー・ハイルマー氏は語る。

メディア向けにエースマンの試乗会が開催されたのは、デンマークのコペンハーゲン。10月だったが、昨今は半袖でも歩ける。温暖化の証拠だと住人は言う。試乗には気持ちよくて助かったが、安穏とした気分でいてはいけないのだなと感じた。 ---fadeinPager---

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2017年から24年までミニのデザインに携わってきたオリバー・ハイルマー氏。

2017年からミニのデザインに携わってきたハイルマー氏。ミニはオリジナル(1959年)のイメージを活かすという基本コンセプトを守りながら、モデルチェンジのたびにちゃんと新しいイメージを創出するのに成功している。どうやって?と私はハイルマー氏に尋ねた。

「エースマンは、とりわけ新世代のミニ(2024年のカントリーマンとクーパー)のなかでもコンパクトなモデルです。どういうデザインコンセプトが相応しいか。私たちは過去にさかのぼって、オリジナルミニの設計者、サー・アレック・イシゴニスの当時の思いを検証し、いまの状況下だったら、どんなミニを設計するのか想定するところから始めました」

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新しくなった、リアコンビネーションランプのデザイン。

私が「あなたはポケットのなかに、今後のミニのデザイン案をどれだけストックしているんですか」と尋ねたとき、ハイルマー氏は「ストックしているのはないのです」と答えた。

「トレンドやマーケットも影響していますから、前もってなにがなんでもこのモデル、と決めるのは難しいです。今回のエースマンは、さきにカントリーマンとクーパーという、強い個性をもちつつ、まったく異なる市場を相手にしたモデルがありましたら、その間に入るものとしてコンセプトを展開しました。状況を鑑みつつデザインしたわけです」 ---fadeinPager---

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「レブルレッド」なるバーミリオン系の車体色もよく似合っている。

コンパクトなサイズ、でも室内は考えている以上に広々としていて、合理的で機能的。それゆえ日本市場にもよく合うと言われている「エースマン」。

実車を観ると、写真から想像していたオモチャ感はほとんどない。むしろ、張りのあるボディ面、ユーモラスな雰囲気のフロントエンド、黒い剛性樹脂製のタイヤまわりのクラディング(モール)、キキャビンが後方で絞られてフェンダーの含みが強調されたリア、といったデザインで強い存在感を放っている。

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ヘッドランプもグリルもミニ的だが、新しさも感じさせる。

私が乗ったブルーの車体のモデルは、ルーフが前から後ろにかけて白と青を使ったグラデーションになっていた。ミニではこれまでにもルーフを、個性を演出する手段として使ってきており(たとえばユニオンジャックを描いたことも)、運転者にとっては、他車との差別化のためにも喜ばしいデザイン手法だ。

私がコペンハーゲン近郊の道をドライブしたのは、「エースマンS E」。バッテリー容量は54.2kWhで、同時に発表された「エースマンE」の場合42.5kWhだ。日本における一充電走行距離の認可値は「S E」が414kmで、「E」は327km。パワーもSEが最高出力160kW、最大トルク330Nmであるのに対して、「E」は135kWと290Nmとやや控え目。---fadeinPager---

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タイヤが四隅にあって室内空間が出来るだけ広くとられている。

ひとことで印象を記すと、スムーズ。モーターの駆動トルクはたっぷりあるものの、発進から飛び出していくようなパワフル感は抑えられていて、アクセルペダルを踏み込むと、徐々に力が増していく感覚だ。大人っぽくて、気持ちよい。

同時に、ハンドルを操作したときの動きも、やたら機敏というほどでなく、反応はよいが、動きはやたらとクイックでない。「エースマン」を買う層には合っているんじゃないだろうか。よりスポーティなドライビングが好みならミニクーパーを選ぶ手もある。

乗り心地も快適。コペンハーゲン周辺の道路は舗装状態もよかったというのもあるけれど、乗員は外乱の影響を受けることなく、乗車姿勢は終始フラットでいられて気持ちよかった。

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デザインテーマはカントリーマンやクーパーと共通だが細部の凝りかたではエースマンがダントツ。

ユニークなのは、インテリアのデザインだ。いまのカントリーマンで導入された新素材のニット生地の使用範囲がさらに拡大。シート、ドア内張り、それにダッシュボード全体が覆われている。

しかもニットはやはり2色がドットのようにグラデーションを見せていて、たとえばくすんだトルコブルーにバーミリオン(赤みの強いオレンジ)が配してある。この雰囲気は魅力的だ。

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2Dニットを大きく使ったインテリア。

加えて、室内照明にも凝っていて、ドライブモードに応じて、赤や緑と室内各所を照らす照明の色が変わるし、グラスルーフ仕様では開口部まわりの照明も、同様に変化する。

ミニの説明によると、内装のデザインテーマは、車内を「フィールグッドプレイス」にすることだそう。素材を含めたデザインの参照に「ファッション(とくにスニーカー)、アート、建築、現在の家具」といったものを、そもそもBMWでインテリアデザインを担当していたハイルマー氏は教えてくれた。---fadeinPager---

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シートのトリムも2色づかいと凝っている。

さきにニットと記したが、実際はリサイクルされたポリエステルから作られた2D(二次元)の生地素材とのことで、デュアルカラー(2色)の場合は、2色にして微妙な色づくりをしているとか。「居心地のよい空間づくりが重要」と説明される。なるほどと思う仕上がりだ。

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「エースマン」はピュアEVのみの設定。

私が走ったコペンハーゲンは、自転車を優遇して脱・自動車化を進めていることでよく知られた街だが、EVのための充電器はいたるところで見つかる。車内のナビゲーション地図で、充電器の位置や数がわかるので「エースマン」の魅力を堪能できた。

日本での価格は、「エースマンE」が491万円から、今回の「エースマンS E」が556万円からとなっている。

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筆者が泊まったホテルの部屋に置いてあったメッセージ。(撮影:筆者)
 

ミニ エースマン S E

全長×全幅×全高:4,080×1,755×1,515mm
最高出力:160kW
最大トルク:330Nm
航続距離:414km(WLTC)
価格:¥5,560,000
www.mini.jp