写真家TISCHが描く鉱物世界。個展「ANT」で1968年以降の別世界線を表現

  • 文:倉持佑次
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写真家のTISCH(ティッシュ)が、11月1日から10日までTHEO GALLERYにて開催する個展「ANT」。本展は、鉱物への変容を願う人々の物語を通じて、知覚の本質に迫る野心的なプロジェクトだ。

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Penでも活躍中のTISCHは、写真のみならず動画撮影も手がける多才なクリエイター。東京藝術大学出身の彼の作品には、その豊かな感性が如実に表れている。今回の個展では、絵画、写真、オブジェを駆使したインスタレーションを通じて、観る者を未知の世界へと誘う。展示のコンセプトは、日常的な知覚の枠を超えた想像の旅。人間とは異なる生物、さらには無機物の視点から世界を捉えようとする探求は、TISCHの創造力の深さを物語っている。

「ファンタジーの結末で主人公が石化したり氷に閉じ込められたりするストーリーを読むと、なぜかどきどきしました。自分も石になりたいと思ったからかも知れません。石は強く美しく永遠のようにあり続けるからです」とTISCHは語る。この言葉には、物質の永続性への憧れが垣間見える。それは同時に、人間の儚さへの洞察でもあるのだろう。

展示タイトルの「ANT」には、鉱物への探究心が極限まで高まった世界という意味が込められている。それは、かつて1968年に起こっていた政治運動や機械化に対する人々の行動の原理を、そっくりそのまま鉱物に向かう情熱のうねりに置き換えたフィクションだ。本展は、その壮大な物語の幕開けとしての役割を担う。「今回の展示を通じて、物語の導入部をお楽しみいただければ幸いです」とTISCHは語り、これが長期的なプロジェクトの出発点となることを示唆した。さらに、ファッションやアートのオーディエンスを含む幅広い来場者を想定しているという点も注目に値する。TISCHの作品が、ジャンルを超えた普遍的な魅力を持つことの証左だろう。

本展は、単なる視覚的体験を超えた、思索的な旅路となりそうだ。日常の知覚を疑い、物質の本質に迫るTISCHの試みは、現代アートの新たな地平を切り拓く可能性を秘めている。アートファンはもちろん、哲学や科学に興味を持つ人々にとっても、刺激的な体験となるはずだ。

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*実際の展示風景とは異なります。

TISCH SOLO EXHIBITON "ANT"

会期:2024年11月1日(月)〜11月10日(日)
会場:THEO GALLERY
住所:東京都港区南青山7-4-2 アトリウム青山201
開園:11時〜18時 ※最終日は20時まで