「大人の名品図鑑」アメリカ大統領編編 #6
11月5日の決戦の日が迫っている。4年に一度行われるアメリカ大統領選挙の投票日だ。ドナルド・トランプ前大統領が再びその地位に返り咲くか、あるいはカマラ・ハリス副大統領が「ガラスの天井」を破り、女性初の大統領に選ばれるのだろうか。今回の名品図鑑は、歴代アメリカ大統領が愛用した名品を集めてみた。
アメリカ大統領にまつわるファッションの話で本人以上にメディアを賑わすのが、アメリカ合衆国大統領夫人、つまりファーストレディの装いであろう。いちばん有名なのが第35代大統領ジョン・F・ケネディの夫人だったジャクリーン・ケネディ。彼女はこの時代のファッションアイコンだったが、ダラスでの暗殺事件で着用していたピンクのスーツがどこのブランドのものかなど、彼女のスタイルはいつも注目の的だった。最近では第44代大統領バラク・オバマの夫人であるミシェル・オバマの装いが大きな注目を浴びた。ラグジュアリーブランドから新興ブランドまで、さまざまなブランドの服を意識的に選び、ファッションの多様性を表現したファーストレディと言われている。
現在アメリカではトランプ前大統領とカマラ・ハリス副大統領による激しい選挙戦が繰り広げている。もしカマラ・ハリスが女性初の大統領に選ばれれば、間違いなく、ファーストレディ以上に彼女=大統領のファッションがメディアで取り上げられることになるだろう。
そのカマラ・ハリスの“三種の神器”と呼ばれるファッションアイテムがある。パンツスーツ、パールのネックレス、それに「チャックテイラー」の靴だ。「チャックテイラー」については、2021年に公開した「大人の名品図鑑 スニーカー編」でも書いているが、20年の選挙戦で、彼女がいつもこの靴を履いていて「チャックテイラーの全種類を持っているわ」とまで発言している。彼女が言うチャックテイラーとはスニーカーの名品であるコンバースの「オールスター」に名前が刻まれる伝説のバスケットボールプレーヤーで、彼女のおかげでチャックテイラーの名前はこれまで以上に知られるようになった。
---fadeinPager---
カマラ・ハリスの魅力を引き立てるパンツスーツ
三種の神器のひとつ、カマラ・ハリスの代名詞的アイテムがパンツスーツではないだろうか。
3年前の21年の民主党大会でカマラ・ハリスが副大統領候補に指名されたときに、彼女が着用していたネイビーのスーツを手掛けたのは、実は日本人のデザイナーだ。製作を担当したのは、現在はオーバーコートというブランド名でコレクションを展開する大丸隆平さん。このスーツは正確にはほかのブランドから依頼を受けて、大丸さんはパターン=型紙などを開発、これまで8着製作されたと聞く。
ちなみに大丸さんはニューヨークではプレタポルテ以外にも、プロのバスケットボール選手のスーツやミシェル・オバマ夫人のドレスなど、年間2000着のオーダーを受けた実績を持つデザイナーだ。『Precious.jp』のファッションジャーナリスト・藤岡篤子さんの記事によれば、大丸さんは「カマラさんの服は、パンツスーツであっても女らしい、しなやかさを表現している」と書かれている。
今回紹介するダブルブレストのセットアップモデルは同ブランドを代表するアイテムだが、ユニセックスで着用でき、レーヨンとポリエステルを交撚した糸を使った独特の素材が、身体を包み込むような美しいドレープを描く。肩回りの着心地を追求した独自のアームホールの形状も特徴があり、前述の記事でも「運動量の多い袖は二の腕が細く見えるよう、そして何より動きやすいパターンを心がけました」と書かれている。
美しく、しかも動きやすく着やすい。これが大丸さんの仕立てるスーツの大きな特徴だろう。颯爽とした彼女のイメージづくりに大丸さんのスーツが貢献したことは明らかだ。ちなみに大丸さんのブランドであるオーバーコートは、東京・青山に続いてニューヨークにも旗艦店をオープン、大統領選挙に合わせたオリジナルキャップも製作されていると聞く。
---fadeinPager---
---fadeinPager---
---fadeinPager---
---fadeinPager---