「大人の名品図鑑」アメリカ大統領編編 #5
11月5日の決戦の日が迫っている。4年に一度行われるアメリカ大統領選挙の投票日だ。ドナルド・トランプ前大統領が再びその地位に返り咲くか、あるいはカマラ・ハリス副大統領が「ガラスの天井」を破り、女性初の大統領に選ばれるのだろうか。今回の名品図鑑は、歴代アメリカ大統領が愛用した名品を集めてみた。
マイケル・ユーが書いた『ホワイトハウスの職人たち』(新潮新書)の中に、第37代大統領のニクソンから第41代大統領のブッシュまで、4人の大統領の髪を切っていた理容師ミルトン・ピッツの話が載っている。
大統領が住むホワイトハウスには理容室も美容室もないそうで、ピッツはホワイトハウスに週2回通い、ウエストウイング1階の小部屋で大統領と副大統領の髪を整えていたと書かれている。そのピッツは「ヘアスタイルこそ、リーダーの品格を表す一番いい証拠」と語っていて、「79年にカーターが分け目を右から左に変えた時、ピッツは周囲の人に語った。『彼は長続きしないだろう』。ピッツは政治には素人だが、長年の経験から、リーダーシップを発揮できない政治家ほど、急に外見を変える傾向があることを知っているからだ」と書かれている。ウォーターゲート事件で傷ついたアメリカ社会を背景に民主党から第39代大統領に当選したジーミー・カーターだったが、華々しい成果を得ることなく、次の選挙で現職でありながらロナルド・レーガンに大敗する。ピッツの予言は当たったのだが、政治家は髪型という意外なところからも見抜かれてしまうものだ。
ではいまや身だしなみのひとつ、人間の五感の一つである嗅覚を直接的に刺激する香り=フレグランスの場合はどうだろうか。毎日、多くの人に会う大統領ならば、その選択はとても重要だ。
第44代大統領バラク・オバマが愛用していたのが、2000年にフランスで誕生した「フレデリック マル」。名前は天才調香師のフレデリック・マルに由来し、彼の父親はパルファン・クリスチャン・ディオールの創設者。オバマ元大統領とともに選挙戦を戦い、最近は政治に対しての発言も多い、俳優のジョージ・クルーニーもこの香りを愛用していたと聞く。
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歴代大統領が愛した「キャッスル・マッセイ」
初代大統領ジョージ・ワシントンと第35代大統領ジョン・F・ケネディに愛用されていたフレグランスがある。1752年創業のキャッスル・マッセイだ。アメリカ建国が1776年だからそれよりもキャッスル・マッセイの歴史は古い。スコットランド生まれの薬剤師ウィリアム・ハンターがロードアイランド州ニューポートで設立した薬局から始まったフレグランスブランドで、アメリカでいちばん古い。10世代にわたって培われた専門知識によるフレグランスと、天然由来成分で緻密に配合されたバスソープやスキンケア製品まで展開する老舗ブランドだ。
初代大統領ワシントンが愛用したのは「ナンバー シックス」というフレグランス。これはウィリアム・ハンターが1772年に開発した、アメリカで最も古く、世界で3番目に古い歴史的なフレグランスで、現在でも販売されている。1780年にワシントン大統領がニューポートの薬局でフレグランスを発見し、その後リピーターになった。フランスの貴族でワシントンとともに独立戦争を戦ったライファイエット侯爵らにも贈ったという伝説の製品だ。
第35代大統領ジョン・F・ケネディが愛用したのが「ジョッキークラブ」。アメリカにおける初めてのスポーツコロンとして1840年に誕生したフレグランスで、ポロやゴルフ、ヨットセーリングなどのスポーツをする時に纏うのに最適な香りと言われている。シトラスとライムの香りをベースにし、少量のドライハニーとローズを含ませたもので、爽やかでカジュアルな軽い装いに適した香り。また同ブランドの「センチュリーズ」コレクションは、ケネディの前の第34代大統領ドワイト・D・アイゼンハワーが愛用していて、常にホワイトハウスにストックがあったと言われている。まさにアメリカ大統領に愛されたフレグランスブランドだ。
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