MERAKI Việt Nam/メラキ ベトナム
都営大江戸線牛込神楽坂駅から一駅のところにある牛込柳町駅周辺は、昔と今が同居する神楽坂の雰囲気が流れてくる町。
そんな町の一角に、ベトナム食器と料理にフォーカスした「MERAKI Việt Nam/メラキ ベトナム」が2024年の9月にオープンした。
小さな店内に、ベトナムの陶磁器「バッチャン焼」が並ぶさまは、まさにベトナムそのもの。神楽坂の端っこに生まれた、ベトナムを覗いてみよう。
ベトナムの伝統民藝品「バッチャン焼」とは
バッチャン焼は、ベトナムの首都ハノイ近郊にあるバッチャン村の伝統工芸品だ。15世紀に世界中で取引されたベトナム陶磁器の中で、現在まで生産を維持してきた数少ない村であるバッチャン村。その伝統的な手法が残る村の工藝品に注目をしたのが、オーナーの佐藤さんだ。
「元々日本全国の職人がつくった陶器を紹介するセレクトショップをやっていたのですが、20年くらい前にホーチミンに行って、その時にベトナムの焼き物に興味を持ちました。そこでバッチャン焼きに出合ったのです」
バッチャン焼きの魅力は、その手軽さにあるという。
「20~40年前のものをオールドバッチャンと呼ぶのですが、古いものでも手軽な値段や手書きの雰囲気に惹かれまして、バッチャン焼きを取り扱うお店を開きたいと思い、ここに『メラキ ベトナム』を開きました。実は、現地でもまだその魅力に気づいていない人が多いのが現状です。こうした、値打ちのあるものが今後、大きな価値が出てくるかもしれないですね」
ヴィンテージ家具が揃い、コロニアルな雰囲気の店内
店内の雰囲気は、ベトナムのようなフレンチコロニアル様式を意識している。フレンチコロニアルとは、フランスが植民地に建てた建築様式を指す。ベトナムは、フランスの植民地時代の影響で、東南アジアでありながら、フランスのような建物や内装が残っている。東と西の美術が融合したものがベトナムの文化だと言えよう。このベトナムらしさを表現するため、フランス製のヴィンテージ家具を集めて、店内に植物をいたるところに並べる。小さい店内は、まさにベトナムの古民家を訪れたような雰囲気を醸し出している。
また店内には、いたるところにバッチャン焼きが展示されている。前述のオールドバッチャンだけでなく、佐藤さんが依頼して製作された、オリジナルのバッチャン焼きもある。様々な柄の食器が揃っており、花のように開いた椀はベトナムの国花である蓮の花のように見える。
ベトナム食器が鮮やかにするベトナムの味
ここでは、店の皿を使って、ベトナム料理を堪能することもできる。おすすめは、もちろんベトナムの名物料理であるフォー。ベトナムで食べ歩いて覚えたフォーのスープの味は、鳥ガラを使ったやさしい味であり、レモン塩麴に漬けた鶏ハムが繊細な味付けが求められる現地のフォーと見事にマッチしている。
そして、他の店にはない特徴は、小鉢を2~3品を用意してくれていることだ。バッチャン焼きの小鉢にこぢんまりと供えたおかずたちは、ヌクマム(ベトナムのナンプラー)に漬けたものなど、ベトナムらしいチョイス。しかし、日本人の口に合うように味付けがされているので、初めての人でも抵抗なく食べることはできるはずだ。
今後は、カフェも並列してやっていきたいという佐藤さん。料理やカフェもやりたいという考えには、バッチャン焼きを広めたいという意図がある。
「日本では知名度の低いバッチャン焼きやベトナムのものを広めたい考えがありまして、その入り口として、料理屋を始めました。しかし、もっといろんな人にきっかけを生むためにも、ベトナムコーヒーを出すカフェなども考えております」
牛込柳町。そこには、小さなベトナムが存在している。あなたも、一度フォーと小鉢を堪能し、それらを彩るバッチャン焼きの魅力をその目で確かめてほしい。
MERAKI Việt Nam
東京都新宿区原町2-2-2
営業時間:11時30分~15時 ※金のみ11時30分~15時 18時~20時 土日祝は11時30分~17時
定休日:火(不定休日あり、SNS参照)
www.instagram.com/meraki_vietnam