ジュネーブから電車を乗り継いで約4時間。初めて訪れたシャフハウゼンは、小さくて美しい街だった。
街のシンボルである「ムノート要塞」にのぼると、気持ちのよい風が吹いている。旅好きなら名瀑ラインフェルの観光拠点としてシャフハウゼンの名を聞いたことがあるかもしれないが、時計好きにとってはIWCが生まれた街として有名。IWC本社は旧市街に隣接するように建てられており、この街と歩んできたことがわかる。
しかしこの小さな街で人気パティシエの鎧塚俊彦さんが修行をしていたと聞いて驚いた。鎧塚さんが修行していたお店「ツッカーベッカライ エルマティンガー」は、IWC本社からも徒歩圏内の旧市街フロンバーグ広場にある。オーナーは修業時代とは違うそうだが、外見などは変わらず、 “気どらない街のお菓子屋さん”といった雰囲気。お土産としてお菓子を何点か購入したが、とても美味しかった。
日本に帰国してから、鎧塚さんへインタビューをする機会があったが、お話を聞いていると、不思議とあの時に感じたシャフハウゼンの風景が頭に広がっていく。取材の中心がシャフハウゼンの空からインスピレーションを受けた新作「ポルトギーゼ」だったからということもあるだろうが、職人気質を持ちつつも、美的感覚に優れ、妥協しない姿勢で理想を貫くという点で、IWCと鎧塚さんがオーバーラップしてくる。愚直に仕事に向き合いたいという鎧塚さんにとって、IWCはひとつの理想形だという。シャフハウゼンでのIWCとの出会いは、鎧塚さんのパティシエ人生に大きな影響を与えたのだ。
取材後に雑談をしていると、話題は時計の話に。鎧塚さんは還暦の節目を前に、新しい時計を探しているという。すでに多くのIWCの時計を所有しているが、スポーツ系は未経験とことなので、私が愛用する「インヂュニア・オートマティック」を試着してもらう。これまでとは違った存在感に「これいいよね!」とかなりお気に召した様子。ひょっとすると「インヂュニア・オートマティック」が、鎧塚さんのコレクションに加わる可能性もありそうだ。
鎧塚さんがIWCへの愛を語る動画はこちら