常に注目を集める人気ブランドに、颯爽と風を吹き込む新クリエイティブ・ディレクターたち。モード界の重要ブランド、グッチのクリエイションを一手に担うサバト・デ・サルノ、英国の老舗ダンヒルを鮮やかにアップデートするサイモン・ホロウェイ、前任者を継いでマックイーンを進化させるショーン・マクギアー。それぞれのデビューコレクションと彼らが生み出す「新たな名品」にフォーカスした。
Pen最新号は『2024年の名品を探せ!』。人気ブランドによる秋冬の新作から、国内外のデザイナーが提案するアイテムまで広範にリサーチし、“名品”と呼ぶにふさわしい服・小物を探し出して紹介する。さらに、上質な素材を世界に供する国内メーカーを訪ね、あらゆる名品を知る目利きたちにも話を聞いた。心動かされる服や小物が、ここからきっと見つかるはずだ。
秋冬ファッション特集『2024年の名品を探せ!』
Pen 2024年11月号 ¥990(税込)
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モダンなアプローチで、“グッチらしさ”を再定義する

大胆で力強く、誰もが憧れるクールでシックなイタリアンブランド。サバト・デ・サルノの手によって、グッチらしさがモダンに再定義された。「もう一度、もっとファッションに恋をしよう」という想いが込められた「ANCORA」をスローガンに掲げたデビューコレクションでは、脈々と受け継がれてきたブランドのDNAとヘリテージに焦点を当て、未来に向けてさらに強化していこうとする姿勢を見せた。
ファーストルックに登場したのは、しっかりとつくり込まれたテーラードコート。足元には、厚底のクリーパーソールでパンキッシュに再解釈されたホースビット ローファー。そして肩には、鮮烈なボルドーカラーのジャッキーバッグ。クラシックなメンズスタイルの王道を踏襲しながら、そこに現代的なエッジを組み込むそのバランス感覚は、新しいグッチ像を見事に体現しているように見えた。
コレクションの端々に、構築的なテーラードやクリーパーソールといった英国カルチャーの片鱗を覗かせるあたりは、かつてロンドンのザ・サヴォイ・ホテルで働いていた創設者、グッチオ・グッチへのオマージュだろうか。歴史あるビッグ・ブランドの進化は、ますます加速していく。


クラシックなダブルブレステッドのコートは、くるぶし丈の優雅なロングシルエットが魅力。バックベントに施されたグリーン・レッド・グリーンの「ウェブ ストライプ」が、歩くたびにアイコニックな存在感を主張する。内側には“ANCORA”の隠しエンブロイダリーも。¥657,800/グッチ(グッチ クライアントサービス TEL
0120-99-2177)

やわらかく上質なグレインレザーを贅沢に使った大ぶりのデザインに、細めのベルトクロージャーとハンドルが上品な印象を与えるトートバッグ。ディタッチャブルのショルダーストラップには、グリーン・レッド・グリーンの「ウェブ ストライプ」を採用。バッグのインテリアには、ジップポケットの他にカードスロットも付属。¥1,045,000/グッチ

グッチを代表する不朽のマスターピース、ホースビット ローファーの最新作。かつてロンドンのパンクスが愛用した厚みのあるクリーパーソールを搭載し、フロント部分にはブランドロゴを刻印したメタルプレートを搭載。新たなシグネチャーカラー「グッチ ロッソ アンコーラ」の鮮烈なカラーリングが、旧来のイメージを刷新。¥194,700/グッチ
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伝統を引き継いで、現代の“ブリティッシュネス”を体現する

創業130年の歴史を持ち、英国スタイルの代名詞として知られるダンヒルの伝統を引き継いだサイモン・ホロウェイは、彼自身がブランドのワードローブを優雅に着こなし、現代のブリティッシュネスを完璧に体現する人物だ。
デビューコレクションでは、ダンヒルのアーカイブやテーラリングの専門知識を紐解きつつ、そこにトルーマン・カポーティやフランク・シナトラといったハリウッド黄金期のエッセンスを織り交ぜることで、リッチでマスキュリンなコレクションを表現した。
デザインのベースは英国メンズウエアの普遍的なスタイルを踏襲しつつ、軽くやわらかい素材感や、コンパクトかつストレスフリーなシルエットで、エフォートレスでモダンなエレガンスへとアップデートした。特に同系色のアイテムを重ねていくトーン・オン・トーンのアンサンブルには、クワイエット・ラグジュアリーにも通じる最先端の美意識が漂う。ブランドのシグネチャーアイテムであるレザーのカーコートも再解釈され、タフィー、チョコレートブラウン、クリームといった、高貴なカラーリングでまとめられた。ホロウェイが描くモダン・ダンディズムが、いま新たな歴史を切り拓こうとしている。

とろけるような手触りのラムスキンで仕立てたドライビングジャケットは、ベビーキャメルニットのフルライニング付きで極上の着心地を実現。スタンドカラーのミニマルなネックラインとホーンボタンが、ユニフォームのような普遍的なスタイルを演出する。ジャケット¥920,700、カーディガン¥171,600、ニット¥148,500/すべてダンヒル


上品なグレーのワントーンでまとめた、ダブルブレステッドの3ピースとタートルネックニットのアンサンブル。ジャケットはホロウェイが新たに考案した「ボードン」シルエットのデザイン。ジャケット¥359,700、ジレ¥135,300、ニット¥151,800、パンツ¥121,000、シューズ¥146,300/すべてダンヒル(ダンヒルジャパン TEL 0800-000-0835)
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創業者の世界観に、大胆かつ自由な発想を持ち込む

かつて〝モードの反逆児〟と呼ばれた創業者の遺志を継ぎ、13年間ブランドを率いたサラ・バートンの後継者に抜擢されたのは、アイルランド・ダブリン生まれのショーン・マクギアー。アレキサンダー・マックイーンやサラ・バートンとはセントラル・セント・マーチンズ卒業生という共通点を持つマクギアーだが、マックイーンが外部からクリエイティブ・ディレクターを起用するのは、今回が初めてのこととなる。
「内なる動物性」を表現したというデビューコレクションでは、誇張されたショルダーラインや、フェティッシュな光沢感を放つレザーウエア、サディスティックに身体を締め付けるベルトといった、アレキサンダー・マックイーン譲りの大胆で攻撃的なディテールが見られた一方で、自動車のボディを想起させる「カードレス」や、スマートフォンの割れたスクリーンのようなミラーで覆われたTシャツなど、これまでにないコンセプチュアルかつシュールな表現も数多く見られた。
創業者の世界観を踏襲しながら、そこに自由な発想を持ち込んだ決意の裏には、大きな覚悟とゆるぎない意思があったはずだ。若きデザイナーによる、大胆な革新に今後も期待したい。

デビューコレクションの象徴的なアイテムとなったのが、ショルダーパッドでシルエットが誇張されたテーラードジャケット。アレキサンダー・マックイーンのDNAを感じさせるテーラリングアイテムも、マクギアーの感性によって再解釈された。¥485,210/マックイーン(アレキサンダー・マックイーン クライアントサービス TEL:0120-992-297)


マクギアーのデビューコレクションで発表された、新たなアイコンバッグ「スリング バッグ」。一枚のグレイニーカーフレザーをていねいに折りたたんで縫い合わせた、どの角度から見てもアシンメトリーなデザインが特徴。ショルダーストラップに施されたクロスバーバックルが、エッジの利いたアクセント。¥356,950/マックイーン
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