日常生活から都市、社会まで、デザインの力で変えた偉人のすべて【Penが選んだ今月のデザイン】『テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする』

  • 文:猪飼尚司(デザインジャーナリスト)
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1994年、西新宿に日本初となるザ・コンラショップが誕生。これを機にコンランは日本でもさまざまなプロジェクトに参加。赤坂アークヒルズ内のアークヒルズクラブの内装デザインを皮切りに、二期倶楽部や六本木ヒルズのレジデンス棟なども手掛け、雑誌メディアにも頻繁に登場するようになる。 コンランと彼がデザインした「コーン・チェア」 1952年撮影 Photo © Estate of Raymond Williams / Courtesy of the Conran family

「サー・テレンス・オルビー・コンラン」と聞いただけではピンとこないかもしれないが、ザ・コンランショップの創業者で稀代の目利きと呼ばれた「コンラン卿」と言えば、知る人も多いはず。デザイナー、起業家、レストランオーナーとしてモダンデザインを牽引したコンランとは、一体どんなバックグラウンドを持ち、キャリアを重ねた人物だったのだろう。

1931年、ロンドン南西部に生まれたコンランは、セントラル・セント・マーチンズの前身となる美術学校でテキスタイルデザインを専攻。バウハウスやアーツ・アンド・クラフツ、そしてポップアートの洗礼を受けながら学びを深め、デザイナーとしてのキャリアを歩みはじめた。

第二次世界大戦後の復興を目的に、政府が行った文化施策「フェスティバル・オブ・ブリテン(英国祭)」の影響を受けてデザイン界が盛り上がると、彼が手掛けた食器やテキスタイルも大きな注目を浴びた。普通のデザイナーならば、さらなるヒット商品の開発に躍起になるところだが、コンランが違っていたのは、デザインが日々の暮らしや社会全体に与える影響力の大きさと、その多様性に気づいたこと。それを体現すべく、家具の輸入にはじまり、ホームスタイリングを提案するショップ「ハビタ」、セレクトショップ「ザ・コンランショップ」を設立したかと思えば、伝統にとらわれない新しい食のかたちを追求するレストラン事業に着手。さらに都市の再生やデザインミュージアムの開館など、携わったプロジェクトは数えきれない。

本展では、初期に手掛けたデザインから愛用品、著書、写真や映像、インタビューなどを交えながら、コンランの人物像とともに、イギリスを舞台にいかにモダンデザインが世界をゆり動かしていったかを解説していく。

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コンランのパターン・デザインによるディナープレート「チェッカーズ」1957 年Courtesy of the Conran family

『テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする』

開催期間:10/12~25/1/5
会場:東京ステーションギャラリー
TEL:03-3212-2485
開館時間:10時~18時(金曜は10時~20時) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(10/14、11/4、12/23 は開館)、10/15、11/5、年末年始
料金:一般¥1,500
www.ejrcf.or.jp/gallery

※この記事はPen 2024年11月号より再編集した記事です。