Pen最新号は『2024年の名品を探せ!』。人気ブランドによる秋冬の新作から、国内外のデザイナーが提案するアイテムまで広範にリサーチし、“名品”と呼ぶにふさわしい服・小物を探し出して紹介する。さらに、上質な素材を世界に供する国内メーカーを訪ね、あらゆる名品を知る目利きたちにも話を聞いた。心動かされる服や小物が、ここからきっと見つかるはずだ。
秋冬ファッション特集『2024年の名品を探せ!』
Pen 2024年11月号 ¥990(税込)
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Leather Long Coat / レザーのロングコート
ロングコートを楽しめる時節、今季らしさを取り入れるならレザーがお薦め。武骨さや軽快さなど、質感で印象を変える。
ジル サンダー / JIL SANDER
「夜」「都会」など、ある種の鋭さを表現したジル サンダーの今季コレクション。薄いカーフレザーにビニール仕上げを施したオールブラックのコートは、そんなイメージを象徴している。独特な光沢を放つさまは、従来のレザーアウターの質感とは一線を画す。袖を捲ったり、座ってみたりと、動きに合わせてときに鋭く光るコートは、官能的かつエレガント。ダークトーンのインナーやパンツに合わせてラフに羽織れば、その着こなしから独自の存在感が漂うはずだ。
FERRAGAMO / フェラガモ
細かいステッチや着脱しやすい斜めのボタンホールなど、ディテールまで美しいつくりはレザーの扱いを熟知した職人たちを自社で抱えるフェラガモならでは。そのレザーの質感に着目してみると、細かなシボや硬質なカーフレザーから重厚な印象も受け取れる。ここには今シーズンの着想源となった1920年代欧米の時代背景が影響している。たとえば、当時アメリカでは禁酒法が施行され、人々は重厚なアウターを着込んで身を隠しながら密かにバーに通い、コミュニティを築いていた。この“身を守る”というイメージがこのコートにも色濃く反映されているのだ。
COACH / コーチ
ダブルブレストやショルダーエポーレットといったディテールを持つ、ヴィンテージライクなレザーコート。ただし、レザーの質感は非常にしなやかで手触りはソフト。オーバーサイズで歩くたびにゆれ、ときに膨らむコンテンポラリーなシルエットだ。ヴィンテージのミリタリーウエアのコードを踏まえながらも、現代流に再解釈された傑作といえる。丈もかなり長めで、白シャツやデニムといったなにげない着こなしにも、フォーマルなスーツスタイルにも、万能に合いそうだ。
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Cashmere Set Up / カシミアのセットアップ
軽くて暖か、触れるとなめらかなカシミア。今季はそんなカシミアのセットアップが豊富だ。クラシックなスーツからシャツジャケットまで、それぞれタイプの異なる3着を紹介。
GIORGIO ARMANI / ジョルジオ・アルマーニ
デザイナーであるジョルジオ・アルマーニ自身が、Tシャツの素材としても愛用しているのがカシミアだ。そんなアルマーニが、上質な日常着としてのカシミアを今季は提案している。ネイビーのセットアップのジャケットはソフトな仕立てでカーディガンのように羽織ることができ、パンツもベルトレスでドローコード仕様。シャツやタイではなく、写真のようにカジュアルなニットやデザートブーツなどと合わせて日常づかいしたい。
サンローラン / SAINT LAURENT
まず目を引くのが、パッドに支えられた自信に満ちたパワーショルダー。まさに1980年代のパワースーツを彷彿とさせる。大きなラペルや流れるようなシルエットのパンツと合わせて、サンローランが生み出してきたテーラード・エレガンスを受け継ぐアイテムだ。また、素材はモンゴルの草原で放牧された、カシミアヤギの毛から採れる繊維を原料としている。構築的なシルエットながら、軽くてやわらか。自然な光沢感が上質さを物語る。
ロロ・ピアーナ / LORO PIANA
素材の品質を常に追求し続けているブランドといえば、ロロ・ピアーナだろう。採用しているカシミアは、中国北部とモンゴルの山岳地帯の過酷な環境下に生息するヤギの毛から得られる、希少な繊維からつくられたもの。こちらのセットアップはジャージー生地で仕立てられているため、適度に伸びのある着用感が快適だ。モスグリーンやブラウンなど複数の色の糸が成す、ニュアンスあるメランジがよりやわらかな印象を引き立てる。ゆったりしたシャツジャケットのセットアップだが、端正で精緻なつくり故、不思議とフォーマルさも醸し出す。
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Luxury Fabric Down Jacket / 高級生地のダウンジャケット
冬の必需品であるダウンジャケット。巷にあふれるファブリックは化繊素材だが、高級感ある自然素材を選べばまた違った趣に。
HERONO / ヘルノ
ヘルノの今季のキーカラーはキャメルカラーだが、こちらのダウンジャケットのファブリックに使われているのは、実際に毛足の長いフタコブラクダの毛からつくられたキャメル素材。ヒツジのように毛を刈り取るのではなく、自然に生え変わる時期に採取される原料なので、圧倒的に流通量が少ない超希少素材だ。それを、コートではなくダウンジャケットに用いているのだから面白い。まさに、いましか目にできない組み合わせだろう。キャメルは吸湿性や保温性に優れ、へたりにくいのが特徴。綺麗な毛流れややわらかな風合いが高級感を抱かせる。
ストーンアイランド / STONE ISLAND
ストーンアイランドの2024-25秋冬コレクションではウール素材が多様に用いられている。最上級のメリノウールを用いたジャケットは、ブランドが継続的に展開するカプセルコレクション「ゴースト」から。削ぎ落とされたディテールや、左袖に配されたお馴染みのロゴバッジ含めブラックに統一されたカラーリングは、ゴーストのコンセプトである“都市における究極のカモフラージュ”を体現している。マットな質感や細めのアームも都会的なデザインで、合わせるパンツを選ばない。冬の必需品として活躍するのは間違いないだろう。
ビズビム / VISVIM
経に極細番手の生糸、緯に細番手の生糸を緻密に織り上げた、透明感のあるシルクタフタ100%という贅沢な素材を使用。生糸ならではの深い光沢と、独特のペーパーライクな風合いがユニークだ。糸のより具合、太さ、織りの密度などを細かく調整することで、化学繊維を上回る耐久性、保温性、通気性を備えながら、天然繊維らしい温かみある表情を併せ持つ生地が実現した。高級天然繊維を扱い続けてきたビズビムだからこそ生み出せた逸品だ。褪せた色みと光り輝く様子が、レトロフューチャーな印象も抱かせる。
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Crafted Denim Pants / クラフトデニム
デニム人気が続いて久しいが、そろそろひとクセある一本も欲しいところ。手の込んだ加工デニムに思わず唸る。
リーバイス / LEVI'S
コレクションを拡充して生まれ変わった「メイド・イン・ジャパン」コレクションは、デニム専業メーカーとして名高い広島の「カイハラデニム」のセルビッチデニムを使い、日本の職人による加工が施された力作が並ぶ。今作では膝から下の一部に、濃淡の異なるデニム地が縫い付けられ、表地を切り取ることで市松模様のように見えるデザインが目を引く。
ディーゼル / DIESEL
こちらはヴィンテージ加工を施したデニムのフロントに、レーザーカットした別のデニム生地を接着してプレスした新鮮な一本。穿き続けるにつれ、接着されたデニム生地が除々に剥がれて経年変化のような味わいを見せる。ヴィンテージデニムとはまた異なる風格を放っている。クリエイティブ・ディレクターのグレン・マーティンスによる斬新なアイデアと、緻密な手仕事が結び付いた新たな名品だ。同様のデザインを取り入れたジャケットと合わせて、セットアップで着こなすこともできる。
ポール・スミス / PAUL SMITH
絶妙な黄みが特徴的なデニムパンツは、多くの工程を経て完成した逸品だ。まず、デニム生地を天然の軽石とともに洗浄することで、ムラ感とやわらかさをプラスしてユーズド感を演出。さらに、一度染料で染めた後にシーズンカラーのイエローで染め直し、より深みのある色合いに。仕上げにアシッドバイオウォッシュを施すことで、より着古したような風合いを実現。ストレートの5ポケットデニムパンツというベーシックなアイテムに、最新の加工技術を取り入れることによって唯一無二の一本が生まれた。
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Lace-up Suede Boots / レースアップ・スエードブーツ
トレンドのレースアップブーツも、手にすべきはクラシックなものを。質実剛健な見た目ながら履き心地は快適だ。
ジェイエムウエストン サカイ / J.M.WESTON SACAI
フランスの老舗シューズブランドのジェイエムウエストンと、斬新なハイブリッドデザインで知られるサカイがコラボレーションを果たした。スエードのアッパーをジェイエムウエストン、ソールをサカイが手掛けており、なるほどソールのヒール部分にはサカイのスニーカーにお馴染みの突起が見える。ラバーのミッドソールは今回のコラボのために、フランス・リモージュのジェイエムウエストンの自社工場で特別に開発されたもの。それをレザーソールで挟んだユニークなつくりだ。意外な二者の協業品は完売必至だろう。
トッズ / TOD'S
写真はドライビングシューズの代名詞である「ゴンミーニ」のブーツシリーズ「トッズ W.G.」。大胆な厚みのあるラバーソールやラバーペブル(ソールに付いた突起)、そしてヴィンテージ感のあるレザー素材が目印だ。こちらはシープスキンのライニングが施された冬仕様のブーツ。真冬の森の凍てつく寒さの中で履くシューズを、現代的なライフスタイルに合わせて再解釈したものだ。イタリアブランドらしさや、実験的研究を繰り返すサルトリアルを意識したつくりは、やはり都会派でエレガント。その一方で、履きやすさや防寒性も備えていて機能的。今冬、手放すことができない一足になりそうだ。
ブルネロ クチネリ / BRUNELLO CUCINELLI
適度なエイジング加工が施されたやわらかなワックススエードのアッパーに、レースアップ部に配された渋みのあるフック。こんな佇まいをひと目見れば、重厚感に圧倒されるはずだ。しかし、レザーとEVAのトレッドソールを組み合わせたアウトソールと、その部位をブレイク製法で手掛けたことで、外観に反して軽量かつ弾力のある履き心地を実現した。上質な素材を用いたクラシックなアイテムを現代的な仕様にアップデートしている。ブルネロ クチネリらしいリラックスしたスーツスタイルからカジュアルな着こなしまで、幅広く取り入れたい。
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