コンパクトでも楽しさは倍! フォルクスワーゲンの新しいT-CROSSに感嘆

  • 文:小川フミオ
  • 写真:フォルクスワーゲン グループジャパン
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T-Cross-Style-scaled.jpgハッチバックとSUVのいいとこどりをしたようなクロスオーバースタイルが「T-CROSS」の持ち味。

日本における輸入SUVのセールストップの座を3年間守り通したのが、フォルクスワーゲンが手掛ける「T-CROSS(ティークロス)」。2019年発表のこのクルマが、24年7月に大きな改良を受けた。

ブランドの日本法人が発表している改良点は下記のとおりとなる。
・先進運転支援システムの強化
・エクステリアデザインの刷新
・インテリアの大幅な改良により質感を向上
・新色 3 色を含む、カラフルな全 8 色のラインナップ

4.1mの全長に1.7mそこそこの全幅のボディサイズは、日本でも扱いやすい。かつ、全高は1.57mに抑えられているので、タワー式パーキングでも入庫可能なところが多い。

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ベースの「TSIスタイル」は17インチ径ロードホイールが標準だが写真の車両は「デザインパッケージ」装着で18インチ。

2.55mのホイールベースは決して長くはないものの、パッケージングが上手で、175cmを超える人間が4人乗っていられる。かつ、荷室容量が後席使用時でも455Lあり、車体サイズに対して積載量が大きい。この実用性も、市場での高い評価の理由になっている。

見た目の印象は、クロスカントリー型のSUVとは正反対。いってみれば、「フォルクスワーゲン ポロ」の車高を上げたような控え目なスタイルで、エレガントとさえいえる。着座位置が高めになるので運転が楽に感じられるのはメリットだけれど、おおげさなスタイルはちょっと、というユーザーからの支持も多いようだ。---fadeinPager---

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TSIスタイルと同RラインにはカメラによってLEDライトを最適制御する「IQ.ライト」が装備される。

今回の改良で、特にフロントとリアがアップデートされた。フロントグリルとエアダムの形状が変更されるとともに、LEDによるシグネチャーランプが加えられ、遠くからでも一目で新しい「T-CROSS」とわかる。

リアも、コンビネーションランプのデザインが刷新され、X字のパターンが新鮮。欧州だとコミュニケーションライトといって、ライトのなかにいくつものパターンが表示され、車両の状況を周囲の交通に知らせる機能も盛り込まれるのだろうか。加えて、やはり一文字タイプのLEDシグネチャーランプが備わる。

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リアコンビネーションランプには光が流れるように点滅するダイナミックターンインジケーターが採用された。

私にとって、フォルクスワーゲン車の魅力は、デザインだ。特に内装はドイツ車の常として理知的で機能的あり、フォルクスワーゲンではそれを独自に解釈。かつ、素材や色づかいなどで、他にはない雰囲気をつくりだすのに長けている。

今回の「T-CROSS」も同様だ。デニムのような色合いのコスミックブルーとグレーのコンビネーションを使ったシートファブリックが、魅力的。加えて「デザインパッケージ」というオプションを選ぶと、18 インチ径軽合金ロードホイールや「ビーツ」の300W8チャネル6スピーカーのオーディオとともに、グレーの濃淡が組み合わされたシートファブリックが含まれる。---fadeinPager---

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ダッシュボードにはソフトな素材が使用されたのもあたらしい点。

日本のユーザーの大半は、黒色で統一された内装を選択するそうだ。かつて1970年代にドイツ車は、黒色が質感を表現するのに最適だとしていたのを、私は思い出した。異なる素材の合成樹脂を組み合わせるとき、まったく同じ色調の黒色に統一するのは至難のわざといわれた時代だ。それがドイツメーカーの誇りだった。

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「デザインパッケージ」に含まれる「ミストラル」なるシートファブリックはとても雰囲気がよい。

いまはちょっとトレンドが変わっている。せっかく軽快な印象のSUVである「T-CROSS」を選ぶのだから、内装も冒険的に明るい色調にしてはどうでしょうか、とフォルクスワーゲンの日本法人では勧めている。汚れるから、と敬遠する向きもあるかもしれないが、せっかくなら毎日を楽しい気分で過ごせたほうがよいのでは。

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フロントシート下への足入れもよく後席は十分なスペースが確保されている。

2025年に日本導入が予定されているピュアEVのミニバン「ID.BUZZ」は、明るい内装の仕様に、日本でも興味をもつユーザーが多いそうだ。このクルマの内装もすてきなので、その気持ちは私にもよくわかる。せっかくフォルクスワーゲンを選ぶなら、最もよいところを味わったほうが得ではないだろうか。

新しい「T-CROSS」の美点は、内外装のデザインにとどまらない。クルマにとってもっとも重要な走行性能が、ぐんと向上。ドライブしていて、かなり楽しい気分になれるクルマになった。---fadeinPager---

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「グレープイエロー」なる車体色は3つの仕様すべてで選択可能。

仕様は3つ用意されるが、ドライブトレインは共通。999ccの3気筒エンジンに、7段のツインクラッチ変速機を組み合わせている。85kW(116ps)の最高出力に200Nmの最大トルクを発生するこのエンジンは、今回新たに採用されたもの。力強い。

発進から加速まで、途切れなくパワーを出してくれる設定で、アクセルペダルを踏み込んでいくときに、自分が望むような加速感が得られるのが、私にとって最大の魅力だ。1Lの3気筒で、お見事、と拍手を送りたくなる。

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Rラインのリアシートも専用デザインのファブリックが使われている。

「T-CROSS」は、大きな市場を対象にしたモデルだ。そもそも“技術の民主化”をうたい、高い性能のクルマでも競合より低めの価格で提供していくことをめざすというフォルクスワーゲンだけに、いわゆる大衆車ではないまでも、数を売ることで利潤を得ていくクルマだ。

それでいて、上記のとおり、すばらしくフレキシブルなエンジンと、正確なステアリングと、しっかりしたサスペンションシステムを備え、かつ剛性感の高い車体と、質感たっぷりの内装を実現。自信作です、と日本仕様を設定した日本法人の担当者が胸を張るのもよくわかる。

このところ日本車もがんばっているけれど、エンジンをはじめ、全方位的にクルマとしての完成度の高さではこのクルマは突き抜けているように思える。

フォルクスワーゲンでは、「ID.シリーズ」というバッテリー駆動のEVのシリーズ拡充にも力を入れているが、一方で、エンジン車の開発にも手を抜いていない。ピュアEV、ハイブリッド、エンジン車と、日本においても3本柱でモデル展開をはかっていくという。---fadeinPager---

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カラーは豊富でおきまりの白を選ぶともったいない気がするほど。

ベーシックグレード「TSIアクティブ」(¥3,299,000)で安全装備は上級グレードと同じでありつつ快適装備の一部を省略している。

その上にLEDマトリックスヘッドライト「IQ.LIGHT」や運転席および助手席用シートヒーター標準装備で、ロードホイールの外径が1インチ上がって17インチとなる「TSIスタイル」(¥3,599,000)。

専用のスポーティな形状のシートや 18インチ・ホイール装備の「TSI Rライン」(¥3,895,000)の設定もあり、ハンドリングを楽しむモデルといえる。

このクルマの新鮮さを、ぜひ味わってみてほしい。

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後席のバックレストは6対4の分割可倒式で、シートを起こしていても荷室容量は455リッターが確保されている。

フォルクスワーゲン T-Cross Style

全長×全幅×全長=4,140×1,760×1,580mm
ホイールベース:2,550mm
999cc3気筒 前輪駆動
最高出力:85kW/5500rpm
最大トルク:200Nm/2000〜3500rpm
7段デュアルクラッチ変速機
燃費:17.0km(WLTC)
価格:¥3,599,000〜
www.volkswagen.co.jp/