和三盆のような甘みの質が際立つ、飲むほどに心に響く最高の日常酒「さつま寿」【プロの自腹酒 vol.23】

  • 文:山内聖子
  • 写真:榊 水麗
  • イラスト:阿部伸二
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尾込商店/さつま寿

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「名水百選」に選ばれた、鹿児島県南九州市の川辺町の名水で仕込んだ地元で愛される芋焼酎。1939(昭和14)年に創業した尾込商店の3代目が、黄金千貫(こがねせんがん)を原料に白麹を使った昔ながらの製造方法で手掛ける。豊かな芋の香りと甘みが上質で、どこか素朴な印象も。懐に優しい値段も魅力で、毎日の晩酌に常備したい一本だ。腰を据えてじっくり飲みたい。1800mL ¥2,200(実勢価格)/尾込商店 TEL:0993-56-0075 ※実勢価格は編集部調べ

「赤坂まるしげ」で提供している酒はざっと150種類以上。店主の小久保茂紀さんが厳選した焼酎や日本酒、ワインのほか、ビールやサワーなども揃えており、酒メニューの多さには圧倒されるばかりだ。そんな酒を知り尽くした小久保さんが、あえていま推薦したいと教えてくれたのが鹿児島の芋焼酎「さつま寿」である。

「上質な甘みが魅力です。口に含んだ瞬間に、甘みがスーッと舌に吸い込まれていくほどきめ細かい。先日久々に芋焼酎を飲み比べてみましたが、改めてそれを実感しました。この酒は他と比べても甘みの質が際立っています」

飲み方は、常温以上がおいしいと言う。

「お薦めしたいのが常温の水割り。酒も水も同じ温度なので互いに一体感があり、優しい味になるので落ち着いて飲むのにはぴったりです。もちろんお湯割りもいいですね。飲み飽きしないので日常酒として最高ですよ」

気になるおともは、なんと甘味を挙げてくれた。「赤坂まるしげ」からほど近い和菓子の老舗、塩野の「常盤松最中」である。

「さつま寿は和三盆のような甘みもあるので、塩野さんのなめらかなあんと抜群に合うんですよ。なかでも常盤松最中は小さいので酒のアテとしてちょっとつまむのにちょうどいい。特に疲れている時はたまらない組み合わせです」

聞けば、小久保さんがさつま寿を最初に飲んだのは、店を開いた約24年前。この酒とはそれ以来の付き合いだが、和三盆のような甘みをベースにした酒質は流行り廃りに左右されず一貫しているという。

「正直、地味な酒です。香りや味が派手なわかりやすい酒質ではないので、魅力が伝わりにくいかもしれません。でも、酒の本質がわかる人には必ず響く酒です。まずはなにも考えずに飲んでみてほしいですね」

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緻密でなめらかなあんが、芋焼酎の甘みと重なる

職人が手作業でひとつずつ手詰めする、赤坂の和菓子屋「塩野」の定番の最中。松葉模様をあしらった小判がかわいらしい。甘いもの好きという小久保さんならではのおともだ。

小久保茂紀

1972年、埼玉県生まれ。2000年にオープンした、酒や料理のプロから一目置かれる名店「赤坂まるしげ」の店主。特に焼酎や日本酒に造詣が深く、蔵元も多く集う。

赤坂まるしげ

住所:東京都港区赤坂2-14-8山口ビル2F
TEL:03-3224-1810

※この記事はPen 2024年10月号より再編集した記事です。