英バンド、オアシスの軌跡を辿る『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』展が開催 

  • 文:松永尚久
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展示品のひとつ。当時の歴代ポスター。

1994年にアルバム『オアシス:Definitely Maybe』でデビュー、以降リリースしたオリジナル・アルバムは全作品が全英チャート1位に輝き、日本においても2作のチャート首位を獲得。また、1996年8月10日と11日には、イギリス史上最大規模の野外ライブをネブワース・パークで開催し 25万人を超える観客を集め(その初日の模様をとらえた映像作品『オアシス:ライヴ・アット・ネブワース 1996.8.10』が10月18日より全国公開)、日本においてもフジロックフェスティバルやサマーソニックのヘッドライナーを飾るなど、圧倒的な人気を誇る、ノエルとリアムのギャラガー兄弟を中心に結成されたバンド、オアシス。

2009年に解散を発表して以降、何度も復活を望む熱い声が響いていた中、ついに15年の時を経て24年8月27日の(日本時間)16時に再結成を発表し、25年の7月より地元である英マンチェスターやロンドンでの公演を発表。チケットは瞬く間にソールドアウトするなど、改めて時代や世代を超えて愛され続けているバンドであることを示したのだった。

そんな空前の盛り上がりを見せる中、デビュー盤の発表から30周年を記念して、11月1日から彼らの軌跡を辿る展覧会『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』が開催される。ノエルがこれまでの活動を振り返る貴重なインタビューをもとに、この場所で彼らのどんな部分、魅力が感じられるのだろうか。

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普遍的な真実を、不変的なメロディやギターで伝える

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デビュー・アルバムに収録されシングル曲にもなった楽曲「リヴ・フォーエヴァー」。この楽曲は、ノエルにとってとても強い思い入れのあるもののようだ。

ノエル・ギャラガー「この楽曲は俺が書いた最高傑作だと思ってて、自分にとって最も大事な曲でもある。世間的には『ワンダーウォール』や『ドント・ルック・バック・イン・アンガー』のほうが有名かもしれないけれど、俺にとっては断然いい曲なんじゃないかって思う。なぜかって言うと、俺が最初に書いた真に傑作だと言える曲だからだ。この曲の前に書いた曲もまあまあ良かったけど、『リヴ・フォーエヴァー』以降の曲はどれも傑作だ。俺にとってあの曲は最初に書いた、不朽の名曲だったんだ」

リリースして30年が経過、バンド解散時期でもノエルは、自身の別プロジェクトでこの楽曲を披露する姿が数多く見受けられた。何度も演奏していくことによって、この楽曲に対する思いに変化が生まれてきたそうだ。

ノエル 「本来の歌詞は、輝かしい未来が待ち受ける若さならではの無敵さを歌っているけど、今歌うと違うものを感じる。自分のこれまでの人生を振り返って、様々な思い出を噛み締める。本当に素晴らしい曲だと思う」

永遠に名前が刻まれるような存在になってやるという強い思いのもとつくられたのであろう「リヴ・フォーエヴァー」。しかし時が経つことで、たくさんのリスナーの手に渡り、それぞれが楽曲にドラマを加えたことによって「永遠に語り継がれる楽曲」として、認知されるようになった。展覧会においては、この曲を含め、彼らの作った音楽がなぜ時代や概念を超えて愛されるものへと進化していったのか。その理由を、彼らの軌跡をまとめた年表、日本を含むメディアの批評、さらに海外の事務所から送られてきた数々の音楽賞のトロフィーなどを通じて、多角的に紹介していく。

ノエル 「俺の曲は、みんなの歌でもあるから。つまり『俺』の歌じゃなくて、『俺たち』の歌だからだ。また、俺たちの歌は、愛、喪失、悲しみ、天気、孤独、幸福、友情といった世の中の誰もが共感できる生きる上での普遍的な真実についてであること。そして、いいメロディーがあって、簡単にギターで弾けて、歌っていて気持ちいいんだ」

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『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』ポスタービジュアル。

現在も語り継がれる名曲の多くは、なぜか春に生まれるものが多かったという。

ノエル 「俺の作った曲は希望を感じるものが多いからね。春も希望を感じる季節だ。冬が終わって、日照時間も長くなってきて、暖かくなる。俺の曲にも希望に満ちている。面白いと思った。狙ってそうなったわけじゃない。ある時ふと気づいたんだ。『5月の自分の誕生日の前後にいつも曲を書いているな』って。いつもだ」

だが、ノエル自身はあまり過去を振り返るのは、あまり好きじゃないと語る。

ノエル 「終わったことを見返すのは好きじゃない。でもネブワースのライヴ・ドキュメンタリーをまとめた時は最高だった。初めて目にした映像だったから。30年近く経って初めて観て、『音、最高じゃん』って思った。90年代における、俺たちのマイルストーン的な出来事だった。でも、基本的には終わったものを見返すことはない。特に理由はないんだけど、目の前のことを大切にしたいと思っているからだ」

また、ネブワースの映像を改めて見直してみて、ファン(リスナー)の変化に驚いていた様子。

ノエル 「当時のほうが女性ファンが多かった。オアシスは次第に『若い野郎どものバンド』として知られるようになったわけで。不作法で、暴れてビールを掛け合うような。ヴォーカル(リアム)の出来損ないのような連中だ。でも駆け出しの頃は、ライヴには女性ファンもけっこう来ていた。その対比には驚いたよ。あのドキュメンタリーを見て面白いと思ったのがそこだった」

また、日本での公演も、思い出に深く刻み込まれている。

ノエル 「94年に渋谷のクラブ・クアトロでやった初来日公演はよく覚えているよ。初めて自分たちがロック・スターになったと思ったのが、あそこだったからね。当時、イギリスではただのインディ・バンドにすぎなかったんだ。それが日本に来るなり、ファンの熱狂ぶりが凄くて、まるでビートルズ・マニアみたいだった。『なんだこれ?』って面食らったけど、『最高じゃん』って思った。ホテルから出られなくて、街ではファンに追いかけられて……。いい時代だったよ」

 

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展示予定の手書きの歌詞。

来日中には、楽曲のアイデアが思い浮かぶことも。

ノエル 「『ザ・マスタープラン(95年発表シングル「ワンダーウォール」のカップリングに収録)』は、日本で書いた。元々の歌詞をホテルの便箋に書いたんだ。それを、持ってたら良かったんだけど。歌詞がやがて価値のあるものになるなんて思っていなかったから、書いた後ゴミ箱に捨ててたと思う。しょうがない」

残念ながら「ザ・マスタープラン」の歌詞は探せなかったものの、展覧会では貴重な手書きの歌詞も展示される。

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「生涯を通して誇れるのは、オアシスをやれたこと」

また、オアシスの30周年、そして今回の展覧会を機に、バンドの新しいロゴが登場。これは、人気グラフィック・アーティストである河村康輔が手がけたもの。彼らにとって、初の日本人クリエイター起用となる。そのデザインについて、彼らの所属レーベルであるBig Brother Recordingsの代表は「クラシックなデザインをクールかつ現代的にアレンジした素晴らしいもの」と評価。展覧会では、最新はもちろん歴代のロゴが並べられているほか、メンバーの表情をあまり打ち出さない彼らのヴィジュアル・センスを培った、地元マンチェスター発のアート・シーンへの変遷も紹介。音楽と密接につながる、イギリスのアート・カルチャーも感じることができるはず。

ノエル 「ヴィジュアルに関しては、基本的に自分が決めている。オアシスの時は、なんとなくふんわりとしたアイデアがあって、それを誰かと一緒に形にしていったかな。リアムは決まってジャケットにバンドのヴィジュアルを使いたがっていたけど、俺はそんなのフxxキンくだらないと思った。俺たちがどんなルックスかなんてもうみんな知ってるんだから。まぁ、いいアートワークもあったけど、酷いのもあったね」

さらに、24年7月にノエルがフジロック・フェスティバルに「ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ」でヘッドライナーとして出演した際のラストに披露、瞬く間に大合唱が起こった名曲「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」に焦点を当てたコーナーや、人間味にあふれたキャラクターにも触れられる内容になっている。

ノエル 「今、俺は50代半ばを迎えたミュージシャン生涯を通じて誇れることは、オアシスというバンドをやれたこと。グラミー賞は持ってないかもしれないけど、あんなものクソ喰らえだ。また、俺にはどんな有名な音楽賞を獲得したヤツでも、それを手放してでも欲しがる『毛量』がある。この髪の毛には価値があるぜ」

25年からは再結成ツアーを敢行する彼ら。そのパフォーマンスへの期待が膨らむ内容でもある。

ノエル 「ちゃんとファンの人がチケットを買ってくれた以上、そこに契約が成立するわけだから、俺たちは時間通りに姿を見せ、最善の状態で、最高のライヴを届ける責任がある。オアシスでは、それを果たせなかったことが何度かあった。でも今は、観に来た人たちに最高の演奏を届けることを何より大切にしている。また、それを自分もできる限り楽しむことだ」

展覧会には、ほかにもアルバムのアートワークを再現したフォト・ブースや、ここでしか手に入らないグッズなどが並ぶショップも展開(ちなみに一定額を購入すると、25年開催の復活ライヴのチケットが当たるチャンスも)。デビュー当時から彼らを追いかけているファンはもちろん、リアルタイムを知らないリスナーにも、オアシスというバンドがなぜ多くの人々を結びつける力を持った存在であるのかがわかる内容になっている。実現するはずの、来日公演が楽しみになる内容だ。

『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30 周年特別展』

開催期間:2024年11月1日(金)~2024年11月23日(土)  
開催場所:六本木ミュージアム
東京都港区六本木5-6-20
開場時間:10時~18時 ※11/1(金)、11/2(土)、11/3(日)のみ10時~20時 
※最終入場は閉館時間の30分前まで
入場料:一般¥2,500(前売り券)
https://oasis-liveforever.jp