「大人の名品図鑑」アメリカ大統領編編 #2
11月5日の決戦の日が迫っている。4年に一度行われるアメリカ大統領選挙の投票日だ。ドナルド・トランプ前大統領が再びその地位に返り咲くか、あるいはカマラ・ハリス副大統領が「ガラスの天井」を破り、女性初の大統領に選ばれるのだろうか。今回の名品図鑑は、歴代アメリカ大統領が愛用した名品を集めてみた。
初代アメリカ大統領ジョージ・ワシントンはその著作『Rules of Civility & Decent Behaviour』のなかで、「靴はちゃんと合っているか、靴下はきちんとしているか、服はきれいか、自分がいかに華麗に飾り立てているか気にして、孔雀のようにあちこちきょろきょろ見回すなかれ」と書いている。この本は彼が生きた18世紀の一般的な礼節やマナーをまとめたものだが、カジュアルな時代になったといっても、社会で成功を目指す紳士は身嗜みにも十分配慮する必要があろう。もちろん着こなしの仕上げである靴選びも重要。アメリカ大統領ならばなおさらだろう。
日本での知名度はそれほど高くはないが、アメリカのエスタブリッシュメントに高い人気を誇り、アメリカ大統領の多くに履かれた革靴がアレン・エドモンズだ。「世界で最も豪華で履き心地の良い手づくりの靴をつくりたい」と、エルバート・W・アレンがアメリカ中西部のウィスコンシン州のベルギーでアレン・エドモンズを創業したのは1922年。多くの革靴のアメリカブランドがその生産を海外に移す中、アレン・エドモンズがこの町に現在も本社と工場を構え、クラフツマンシップ溢れる革靴を生産している。現在、アメリカで本格的なドレスシューズを生産しているのは、アレン・エドモンズと本連載でも紹介したことがあるオールデンの2社のみ。生産量ではアレン・エドモンズの方が多く、それだけ本国では評判が知られるシューズブランドだと断言できる。
ジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガン、ジョージ・H・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントン、バラク・オバマなどの歴代大統領がアレン・エドモンズのドレスシューズを愛用していたと言われている。大統領就任演説やホワイトハウスへ初登庁するときに、アレン・エドモンズを履いて行くのがある種の伝統になっているという説まである。前述のバラク・オバマは大統領就任式にアレン・エドモンズの革靴を履かないで出席してしまい、アメリカ国内でニュースになったと聞く。実はそれを発見したのはアレン・エドモンズの役員だった人だそうで、さすが靴のプロである。その役員はホワイトハウスに手紙を送り、その後オバマ元大統領はアレン・エドモンズの靴が気に入り、長く愛用するようになったという話だ。
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足慣らしが要らない、快適な履き心地
アレン・エドモンズの革靴の特徴はそのつくりにある。高級革靴の製造に用いられるグッドイヤーウェルト製法が採用されているが、アレン・エドモンズの場合は、踵まで底を全周縫う360度グッドイヤーウエルト製法で縫われている。多くのグッドイヤーウエルト製法の靴は土踏まずを支えるのに鉄の「シャンク」が使われるが、アレン・エドモンズの製法ではシャンクの代わりに靴底の全面にコルクを敷き詰めている。コルクが生む自然の反発を持ったこの靴は歩きやすく、底がフレキシブルに曲がり、とても快適だ。アレン・エドモンズが「足慣らしのいらない革靴」と言われるゆえんがここにある。
今回紹介するのは、同ブランドを代表するモデルの「パークアベニュー」。誕生以来、40年以上も経つロングセラーモデルで日本でも人気が高い。デザインはいわゆるストレートチップで、つま先はオーソドックスなラウンドトゥでボリュームがある。シューレースは6アイレットと独特(普通は5アイレットが多い)。靴本体のウエスト部分が絞られ、低めの甲を持つエレガントなデザインながら、試着するとフィット感の良さに誰もが驚く。ヒールも大きめで接地面は全面ゴムの仕様、安定感もよく、滑りにくく、歩きやすい。機能性重視で質実剛健。もちろんビジネスシーンから冠婚葬祭までさまざまなシーンで履ける。多くの大統領もこの抜群の履き心地を忘れられなかったのもかもしれない。
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