「大人の名品図鑑」アメリカ大統領編 #1
11月5日の決戦の日が迫っている。4年に一度行われるアメリカ大統領選挙の投票日だ。ドナルド・トランプ前大統領が再びその地位に返り咲くか、あるいはカマラ・ハリス副大統領が「ガラスの天井」を破り、女性初の大統領に選ばれるのだろうか。今回の名品図鑑は、歴代アメリカ大統領が愛用した名品を集めてみた。
アメリカ合衆国大統領とはアメリカ合衆国の元首であり行政府の長。つまりアメリカのリーダーだが、それだけでなく世界の外交や安全保障、あるいは世界経済に多大な影響を与えるポストである。その一挙手一投足を世界から注目されている。
大統領が着用するファッションで言えば、身に着けるスーツやコートといったドレスクロージング、あるいはプライベート的な場面で見せるカジュアルウェアまでその姿が映像に撮られ、どんなブランドのなにを着ているかがつねにメディアを賑わすことになる。
多くのアメリカ大統領がユニフォーム=制服のように着用したスーツが、アメリカを代表する老舗、ブルックス ブラザーズの製品だ。21年、ジョー・バイデンが大統領に就任した時期、Pen Onlineの記事執筆のために同ブランドのアンバサダーを務める大平洋一さんに、これまで着用していた大統領のことを尋ねたことがある。なんと「トランプ前大統領まで、45人の大統領経験者のうち、40人がブルックス ブラザーズを着ています」との答えだった。
今回、「現大統領のジョー・バイデンはブルックス ブラザーズを着ていましたか?」と尋ねると「バイデン大統領もブルックス ブラザーズを着用されていることは聞いておりますが、本国から公式に何を着ていると言う発表はありませんでした。でもゴールデン フリースロゴ(羊をデザインした同ブランドの象徴的なマーク)が付いたポロシャツを着ているのを拝見したことはあります」と大平さんは答えた。つまり46人中、41人が着用するブランドというわけだ。驚くべき数字である。
ついでながら、同ブランドを着用しなかったのは、ブルックス ブラザーズ創業前の大統領、初代ジョージ・ワシントン、第2代ジョン・アダムス、第3代のトーマス・ジェファーソン。最近の大統領で着用しなかったのは、ジミー・カーター(第39代)とロナルド・レーガン(第40代)の2人。カーターは倹約家でブルックス ブラザーズの服は選ばず、元ハリウッド俳優だったレーガンはお抱えのテーラーがいたらしい。
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ブルックスの定番、クラシックモデル
アメリカ大統領が着用したブルックス ブラザーズのドレスクロージングの中でいちばん有名なのが、エイブラハム・リンカーンが着ていたフロックコートに違いない。「奴隷解放の父」とも呼ばれたリンカーンは1861年に第16代のアメリカ大統領に就任するが、65年4月15日にワシントンD.C.のフォード劇場で暗殺される。そのときにもブルックス ブラザーズのフロックコートを着用していたのだ。2018年に東京・新宿の文化学園服飾博物館で行われた同ブランドの200周年を祝う展覧会でもリンカーンが着たフロックコート(レプリカ)が展示されたが、内側には美しい刺しゅうが施され、当時の職人技が再現された見事なコートであった。
今回紹介する正統派デザインのスーツは、同ブランドを代表する「クラシック」モデルで、高いゴージラインと幅の狭いラペルが着る人にスタイリッシュな印象を与えてくれる。仕立ては背抜き仕様で、軽やかな着心地。胸や腰回りを包み込むように美しいカーブを描くシルエットも特徴だ。素材に選ばれたのは、イタリアで1903年に創業されたタリア・ディ・デルフィノ。イタリア製らしい繊細な味わいを持つチャコールのストライプ素材が、着る人に洗練された雰囲気をもたらす。ビジネスシーンからフォーマルなスタイルまでオールマイティに活用できる伝統的なモデルで、大統領などの政治家にも最適ではないだろうか。
まさに200年以上の歴史を持つ威厳と凜とした佇まいを持つスーツ。歴代の多くのアメリカ大統領が魅せられてきた理由もここにあるのだろう。
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ブルックス ブラザーズ ジャパン
TEL:0120-02-1818
www.brooksbrothers.co.jp
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