機能性とデザイン性を追求した、高品質なアウトドアアイテムで人気のアークテリクスから生まれたヴェイランスは、厳しい山岳環境の中で磨き上げられた先進技術の数々を活かし、現代の都市生活に最適化した、究極のアーバンウェアを提案するハイエンドなアパレルラインだ。カナダ・バンクーバーにあるデザインセンターで試作したプロトタイプを、普段の生活や厳しい自然環境の中で繰り返し試用するプロセスに重きを置く、アークテリクスの真摯なものづくりに共感を示したのは、プロダクトデザイナーの鈴木啓太。北青山にあるオフィスを訪れ、ヴェイランスのウエアに身を包んだ鈴木の1日に密着した。
---fadeinPager---
「新しくものをつくるからには、すぐに消えてしまうようなものではなくて、きちんと未来に繋がっていくようなものをつくらなきゃいけないと思っています。そういう意味で、ものをつくるということはすごく大変で、とても時間がかかることなんです。また私の場合は、『これでいい』と思えるようになるまでには、本当に何度も何度も試作を繰り返して、いろんな人に使ってもらって、どんどん改良していく作業が不可欠です。そういった気の遠くなるようなブラッシュアップの末に、初めて現代のニーズに対してアップデートされたデザインが生まれてくるのだと思っています」
アークテリクスのデザインセンターでは、一つのアイテムがかたちになるまでに数年の月日を要すると言われているが、鈴木も同じく、身近な日用品から電車の車両まで、どんなプロダクトでも完成までに3〜4年はかかるものだという。
「“洗練”という言葉がありますが、それは見た目を綺麗にするという意味ではなく、無駄なものを削ぎ落とし、デザインも機能も素材も、必要とされるあらゆるものをきちんと融合させていくことだと思います。プロダクトのアイデアを思いつくことはできても、それを洗練してかたちにしていくためには、たくさんの時間と知恵と根気が必要になります。ヴェイランスと私のデザインには、すでに完成された定番をさらに洗練していく部分に共通点がありますが、定番だからこそ余計に、アップデートするのは非常に難しいんです」
そんなデザインプロセスを説明するために、鈴木は自身が包丁をデザインした際の試作品をデスクの上に並べた。
---fadeinPager---
「先ほどものをかたちにするまでに3〜4年かかると言いましたが、そのうちの2年半ぐらいは、ひたすら試作と検証に費やされます。最終的には3Dプリンタも使いますが、基本的には紙や粘土を使ったアナログな作業がほとんどです。こうやって0.05mm単位の調整を繰り返して洗練させていくことで、最後に一つだけ『これだ!』と思えるものが出来上がるんです」
アウトドアで培ったテクノロジーを凝縮しつつ、極限までミニマルなデザインが徹底されたヴェイランスのアーバンウエアは、都市生活のあらゆるシーンに違和感なく溶け込みながら、どのような条件下においても、着る者のパフォーマンスを最大化するための機能を発揮する。
「無駄な消費を繰り返すことに疑問を感じ、みんなが普遍的な価値を持つ確かなものを求めているいま、“究極”の定番品をつくるという考えかたは、時代のニーズそのものだと思います。いま着ているヴェイランスのテーラードスタイルも、見た目は会食にもパーティにも行けるようなスタイリッシュなデザインですが、その着心地や機能性は、まったく従来のものとは別ものです。ジャケットのボタンがスナップボタンだったり、シャツのフロントがファスナーになっていたり、パンツのシルエットが人間工学に基づいた3Dパターンだったりと、普段の何気ない動作をストレスなく行える工夫が、随所にさり気なく盛り込まれています」
さらに、アウターとなるジャケットには高い防風性と耐久撥水性を誇るGORE-TEX® WINDSTOPPER®を採用しつつ、インナーとなるシャツには耐久撥水性に加えてストレッチ性と透湿性を持たせるなど、各アイテムが使用されるレイヤーの属性に合わせて、最適な機能が配備されている。
---fadeinPager---
「ヴェイランスのどのアイテムにも、アウトドアで培った先進技術が詰め込まれているのに、そのこだわりを見せないように、または気づかせないようにするのがとてもうまいですよね。イノベイティブな技術やアイデアが生まれると、最初はどうしてもその存在感を主張したくなるのですが、次のステップに行くと、だんだん隠したくなるというか、普通のものにしたくなるんです。新しいことをどうやって日常にするのかっていうのは、デザインする上でとても難しい部分です」
鈴木のプロダクトデザインは、机の上だけでは成り立たない。彼は試作や検証と同じく、制作現場に直接足を運ぶ時間も大事にしている。
「自分一人で考えるのではなくて、つくり手と直接コミュニケーションをとりながら、プロダクトのデザインをブラッシュアップしていくというのが、私の基本的なスタンスです。だから製造工場に行ったり、クライアントと打ち合わせをしたり、毎日行く場所と仕事の内容に合わせて、その都度着るものを変えていました。当然、出張に行く時はスーツを入れたガーメントケースと、工場に行く時のための服を一式入れたスーツケースを持ち歩くことになるから、服だけでも大荷物になることがほとんどでした。機能性と汎用性の高いヴェイランスのウエアがあれば、一つであらゆるシーンをカバーすることができて、出張時でも余計な労力を使わず、自分のパフォーマンスに集中することができると思います」。
都市生活において必要とされるあらゆる機能を備えつつ、自身のデザイン・フィロソフィーとも強く共鳴する、究極のユニフォームを手に入れた鈴木啓太。彼のものづくりは、今後ますます研ぎ澄まされていきそうだ。
アークテリクス
https://arcteryx.jp/