世界で7割の人が「障がいのあるアスリートを平等に報じてほしい」と回答、一方で日本では5割にとどまる

  • 文:遠藤由理
Share:
1303838788,Trevor William,GettyImages.jpg
1303838788,Trevor William,GettyImages

感動と興奮の中で幕を閉じたパリパラリンピック夏季競技大会。ゲッティイメージズは国際パラリンピック委員会(IPC)公式フォトエージェンシーとして、12日間にわたりパラリンピアンの姿をカメラに収めてきました。

障がい者スポーツに注目が集まる中、ゲッティイメージズが公表した「今、求められているビジュアルコンテンツ」を具体的な数字とともに明らかにするための消費者意識調査「VisualGPS」によると、世界で8割以上が「パラリンピックがスポーツ界にとって重要である」と考えており、日本でも7割にのぼることがわかりました。人々がその重要性について認識している中で、障がいのあるアスリートに対するメディアにおける報道の特性や、見る側である消費者がどういう意識を持っているか「VisualGPS」の調査結果をもとに紐解くことで、いま、人々に求められている障がいのあるアスリートとスポーツのビジュアル表現についてについて考察します。

---fadeinPager---

世界の7割が「平等に報じてほしい」と望む

「VisualGPS」の調査結果によると、世界の68%の消費者が「メディアや広告でさまざまな能力や個々の特徴を持つ人々を見ることは、お互いを理解する上でよい影響を与える」と考えています。また7割の消費者が「障がいのあるアスリートが健常者アスリートと平等に報道されるべきだ」と、障がいのあるアスリートをメディアでもっと取り上げてほしいという要望は世界的に強い傾向にあります。

しかし日本では、同じように考える消費者が5割程度にとどまっていることがわかりました。また、世界では7割に達していた「障がいのあるスリートの功績を称えることが社会の認識を変えることに役立つ」という意見が、国内では6割ほどでした。つまり、パラリンピックとそこで活躍するアスリートに対する認知度の向上について、日本ではまだその余地があることが考えられます。認知度を上げていくことで、スポーツだけでなく生活のあらゆる側面で障がいに対するポジティブなイメージが強調され、社会の認識を変える可能性があることを示しています。

平等なビジュアル表現にも貢献する「ユニバーサルスポーツ」

1183142215,Trevor Williams,GettyImages.jpg のコピー.jpg
1183142215,Trevor Williams,GettyImages

障がいのあるアスリートと健常者アスリートが平等にビジュアルで表現されていくためには、「ユニバーサルスポーツ」の取り組みが広がることも大切かもしれません。「ユニバーサルスポーツ」は、年齢や国籍、障がいの有無に関わらず、みなが一緒に楽しむことができるスポーツです。

「VisualGPS」の調査結果によると、ユニバーサルスポーツのように、障がいのある選手とそうでない選手が一緒に競技をすることを支持する消費者は、世界全体では46%であるのに対し、日本では27%にとどまりました。日本ではスポーツに対する伝統的なアプローチが強く、能力によって競技を分けることがより受け入れられていることを示しているかもしれません。また日本ではパラリンピックのようなイベントにおいて、これらのアスリートの功績に焦点を当て、彼らの成功や社会的貢献を強調することで、より共感しているのかもしれません。

世界的にはこういった競技に取り組むアスリートを含む多様なビジュアル表現が増えつつあります。日本のメディアは他国の成功事例を紹介し、競技の内容やコンセプトをわかりやすく紹介することが大切です。

障がいのあるアスリートのビジュアルが社会に変化をもたらす

1194950727,sot,GettyImages.jpg のコピー.jpg
1194950727,sot,GettyImages

人々が障がいのあるアスリートと健常者アスリートが平等に報じられることを望む中で、マスメディアやビジュアルを発信する側はどのような点を考慮することが必要でしょうか。6つのポイントをまとめてみましたので、参考にされるとよいかもしれません。

1.マスメディアで障がいのあるアスリートを取り上げ、認知度を高めることで社会に変化を起こしましょう。

2.日本のスポーツ文化の形成におけるパラリンピックの重要性と、その社会への影響を強調しましょう。

3.障がいのあるアスリートのサクセスストーリーを特集し、一般の人々の認識にポジティブな影響を与えましょう。

4.スポーツのイメージを拡大し、さまざまな文脈における障がいのあるアスリートにスポットを当て、幅広い競技活動を描きましょう。これには、スポーツへの参加だけでなく、試合の準備、練習への参加、休憩、チームメイトとの関わりといった日常の瞬間も含まれます。

5.他国の成功例を参考にしながら、徐々に「ユニバーサルスポーツ」を導入し、日本での受け入れを促しましょう。

6.「感動的」な描写を避け、現実的で日常的な描写に重点を置くことで、真のインクルーシブな表現を強調しましょう。

遠藤由理

Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー

ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。

遠藤由理

Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー

ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。