フィルムカメラで行うマニュアル撮影の魅力。そのひとつが現像するまでどのような雰囲気の写真が撮れているのか、正確にはわからないということだろう。
光の状況などを踏まえ、露出やシャッタースピードを調整しながら構図を決め、ここぞというタイミングでシャッターを押す。デジタルカメラとは異なり、写真の出来に納得いかなかったらその場で消去すればよいというものではない。だからこそ、失敗しないように一枚一枚集中して撮影にのぞむことになる。そして、現像した結果、思い通りの写真が撮れていた時の喜びは、デジタルカメラでは得られないものとなる。
とはいえ、デジタルカメラに慣れてしまうと、その便利さゆえに、多くの人にとってフィルムカメラを使う機会はほぼないのではないか。そんな人でもデジタルカメラの利便性を享受しながら、フィルムカメラのアナログ操作の楽しさや不確実性を楽しめる一台が登場した。それが「ライカM11-D」だ。
---fadeinPager---
このカメラは本来液晶モニターがある場所にそれがなく、その代わり、そこには大型のISO感度ダイヤルがついている。パッと見、フィルム式のライカM型カメラのようだが、もちろんそうではなく、ライカが誇る最新のデジタルカメラである。
「ライカM11-D」のコンセプトは、構図、絞り値、シャッタースピード、ISO感度という写真撮影における基本的な要素を重視するというもの。「ライカM11-D」だけでは、撮影した写真をすぐに確認することができないゆえに、デジタルカメラでありながら、フィルムカメラのような撮影体験ができるカメラ、写真の原点に立ち返ることができるカメラだと言えよう。
機能性は「ライカM11」と同等で、記録画素数は6000万画素、3600万画素、1800万画素から選択可能。3GBのバッファメモリーによって、6000万画素では最大5コマ/秒の連続撮影も可能になっている。内蔵メモリーは256GBと大容量で、SDカードの容量がいっぱいになってしまった場合でも撮影の決定的瞬間を逃さない。重量はバッテリーを含めておよそ540g。前機種「ライカM10-D」よりも100g以上の軽量化に成功している。
---fadeinPager---
またM型カメラだからこそ、1954年以降に製造された、ほぼすべてのMレンズを使用可能。銘玉ぞろいのMレンズをひとつひとつコレクションしていく楽しみもある。
映像素子には「ライカM11」シリーズ用に開発されたトリプルレゾリューション技術を取り入れた35mmフルサイズセンサーを搭載。ISO感度はベース感度がISO64で、最大ISO50000まで設定が可能となっている。この両者の組み合わせによって、光量の少ない場面でもノイズを低減しながら美しい描写を実現している。
また「ライカM11-P」でライカ コンテンツクレデンシャル機能としてカメラ市場に初めて導入した、カメラ内のハードウェアを通じて画像の真正性を証明する技術を採用。テクノロジーの進歩により、フェイク画像がたやすく生成できる昨今にあって「ライカM11-D」で撮影した写真には、それが目の前の光景をしっかりと映し出したものであることが保証される。
---fadeinPager---
アナログの撮影スタイルをデジタルの世界に取り入れたのが「ライカM11-D」だが、決してアナログの要素がメインではない。クリエイティブプロセスのどの段階で、デジタルワークフローを組み込むのかは、このカメラを使う人に委ねられている。
Bluetooth機能やケーブル接続によってシームレスな接続性を実現しているほか、Apple社の認定を受けることで、iPhoneやiPadとの接続もきわめて快適でスピーディーに行うことができる。つまりは通常のデジタルカメラ同様に、撮影した写真をiOS機器を通して、即座に確認することもできるのだ。
さらにライカ専用アプリの「Leica FOTOS」を使うことで、スマートフォンと連携させての使用も可能。画像をスマートフォンに転送したり、スマートフォンからのリモート操作や画像への位置情報の追加も行えるなど、液晶モニターがなくてもさほど困ることはないだろう。
フィルムカメラ同様に、撮影した写真の出来栄えはあとからのお楽しみとして取っておくこともできれば、その場で写真を確認しながら撮影を行うこともできる。
かつてフィルムカメラで撮影していた人にとっては、なんだか懐かしく、Z世代にとっては新鮮な撮影体験をもたらしてくれるのが「ライカM11-D」なのである。