セリーヌ オムが2025年サマーコレクションを発表。エディ・スリマンが追求したアングロマニアの集大成

  • 文:門倉奈津子
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去る9月5日、セリーヌ オムは2025年サマーコレクション「THE BRIGHT YOUNG(ザ ブライト ヤング)」を発表。イギリスのノーフォークでエディ・スリマンが撮影したコレクションフィルムが公開された。

本コレクションは、1920年代のロンドンの若者を中心とした社交界グループ “THE BRIGHT YOUNG THINGS”から名付けられたもの。ここで発表されたテーラリングは、1920年代のサマーカシミアとウールをセリーヌのために織り直したイギリス生地を使用しているのが大きな特徴だ。

『炎のランナー』や『モーリス』といった映画に見られた、上流階級の子弟が通う伝統校のユニフォームや彼らの私服を彷彿とさせるクラシックなジャケット、スーツスタイル、クリケットセーター、ボートブレザーといったアイテムにはサマーカシミアのフランネルが使用されているが、シルエットはエディ・スリマンのフィルターを通したモダンさと洗練が漂う。

サウンドトラックは、ジャン=フィリップ・ラモーが作曲し、1735年にパリのパレ=ロワイヤルで初演されたオペラ=バレ「優雅なインドの国々」。この曲は150年以上見過ごされてきたが、1957年にフランスを公式訪問したエリザベス2世女王の臨席のもと、ヴェルサイユ宮殿の王立歌劇場で再び上演された経緯をもつ。また、フィルム内に登場する自転車は、エディ・スリマンがセリーヌのためにデザインしたもの。
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クリケットセーターやボートブレザーなどの王道の英国トラッドアイテムをさらに洗練させたコレクション。また、2002年にイギリスで流行が復活したリシュリュー、モンク、テーパードダービーなどのシューズもまた、1920年代のイングリッシュスピリットを繋ぐ役割を果たしている。

 

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テールコートの下には、スパンコールやクリスタル、光沢のあるパールで「イングリッシュ・ゴシック」のフローラルモチーフがアトリエによって手刺繍されたシルクファイユのベストを着用。ホワイトのサマーカシミアフランネルは、1922年にF・S・フィッツジェラルドが南仏のホテル・エデン・ロックで着用したものからインスピレーションを受けていると同時に、「クリケット・ホワイト」と呼ばれるクリケットの白いユニフォームにもインスパイアされている。

80年代後半、エコール・デュ・ルーヴルの学生だったエディ・スリマンは、アングロマニア(「イギリス熱」などと呼ばれ、18世紀のフランスの知識人の間で流行した風潮)についてのエッセイを書き始めた。彼はまた、元祖パーティーアニマルとして知られていたスティーブン・ジェームズ・ナピアテナントや、その側近のセシル・ビートンについても研究。今回のコレクションで、彼自身が探求してきた30年来のプロジェクトを復活させたのだ。

伝統美と洗練、一瞬で過ぎ去るような青春とその儚いからこその美しさ。さまざまな感情を呼び覚ますコレクションを、ぜひチェックしてほしい。

セリーヌ ジャパン

TEL : 03-5414-1401