鬼才たちとのコラボまで衝撃、アニメ音楽史を更新する名劇伴

  • 文:小室敬幸(音楽ライター)
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【Penが選んだ、今月の音楽】
「怪獣8号」オリジナル・サウンドトラック』

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幅広い創作活動を行う作曲家・音楽家。作品はオーケストラ、室内楽から、立体音響を駆使したサウンドインスタレーション、シアター・パフォーマンスなど多岐にわたる。おもなアニメの参加作に『竜とそばかすの姫』がある。 © Takeshi Shinto

『 少年ジャンプ+』で連載されている人気漫画を原作としたアニメ『怪獣8号』は、今年4~6月にテレビ放映されSNS上でも話題を呼んだ。その大きな要因となったのが、作曲家坂東祐大による音楽だ。3年前のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』等で音楽ファン以外からも注目され、マスメディアで取り上げられる機会が増えた坂東は、東京藝術大学作曲科で学んだクラシック音楽と現代音楽をバックグラウンドにしている。

これまでも映像に合わせる音楽、いわゆる劇伴でジャンルにとらわれないサウンドを生み出してきた坂東だが、『怪獣8号』ではロックバンドが主となってドラマを牽引。この物語の主人公は、人類を救うヒーローに憧れて努力はしてきたが才能に恵まれず、うだつが上がらないまま中年の肉体労働者になってしまった日比野カフカ。彼の境遇・心情を表現しているかのような時に泥臭くて力強い音楽を佐々木“コジロー”貴之のギター、新井和輝(King Gnu)のベース、石若駿のドラムスという豪華すぎるメンバーがドラマティックに聴かせる。複雑さとキャッチーさを両立させた坂東独自の音楽は、サントラ冒頭の2分ほど(トラック1~3)を耳にするだけで、一気にその世界観へと引き込む力がある。

登場キャラクターや場面を多彩に描くため、坂東は楽曲ごとにジャンルも世代も超えたミュージシャンをゲスト起用。いままさに若い世代の最先端にいるMON/KUや(sic)boyから、音楽以外にもマルチに活躍しお茶の間でもお馴染みの岡崎体育、世界的に知られる米国のバンド、ジ・インターネットのパトリック・ペイジ2世まで……。鬼才たちとのコラボで坂東の音楽はとめどなく拡張され、アニメ音楽の歴史はいま更新されたのだ。最先端の音楽がここにある。 

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坂東祐大 日本コロムビア COCP-42282-3 ¥3,960

※この記事はPen 2024年10月号より再編集した記事です。