箱根の森に新しく生まれたヴィラと大正ロマンを感じる名建築の料亭で、心から癒やされるリトリートを

  • 文:植田沙羅
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箱根連峰・仙石原の豊かな自然に抱かれた、リゾートホテル&ヴィラ「箱根リトリートföre & villa 1/f」(フォーレ&ヴィラ ワンバイエフ)。季節の移ろいを肌で感じる約15000坪の広大な敷地内に、2024年8月、新たに「いぶきVILLA」エリアが新設された。趣の異なる7つのヴィラで、自然と歴史の薫りに触れるステイを愉しみたい。

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「villa 1/f」という名前は、人間や動物にとって心地よい周波数の「1/fゆらぎ」に由来する。のびのびと茂っていく草木、鳥や虫の声、温泉の湯気など、五感を揺さぶる自然のやすらぎに、存分に浸ることのできるリラクゼーション空間を目指す。写真は温泉スイート「いぶき」16号棟。大きな浴槽と坪庭がついた120㎡の客室は、ファミリーでも十分な広さ。

古くから人々に愛されてきた温泉地・箱根。とりわけ仙石原は雄大な自然の中に美術館や温泉宿が散在し、喧騒から隔絶された大人の高原リゾートとして知られている。

箱根から御殿場へと抜ける国道138号線沿い、箱根ガラスの森美術館近くの小道を抜けると、青々と生い茂る森の中に佇むのが「箱根リトリート före & villa 1/f」だ。東京からはクルマで約1時間半、箱根湯本駅からもバスで20分ほどとアクセスは抜群だが、周辺には湿原が育んだ植物に彩られた箱根湿生花園や、秋には黄金色に輝く仙石原すすき草原などもあり、美しい自然を存分に味わえる。

北欧リゾートを彷彿とさせる全3棟37室からなるモダンホテル「före(フォーレ)」と、山肌に建つ全18棟の独立コテージ「villa 1/f(ヴィラ ワンバイエフ)」というふたつの宿泊施設を有する「箱根リトリート」は、料亭やダイニング、カフェラウンジ、温泉、スパトリートメント施設まで備わり、そこはさながら森の中にひっそりと隠れた楽園。軽やかな鳥のさえずりに耳を傾け、胸いっぱいに緑の匂いを吸い込む……。敷地内をのんびり散策するだけでリフレッシュになり、心が洗われていく。

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すべてのヴィラには時計やテレビがなく、自ずと戸外に広がる自然に目をやったり、デジタルデトックスを試みようと思わせてくれる。室内に揃う手挽きのコーヒーミルやワインセラーは、ともに訪れた大切な人との語らいに華を添えるだろう。こちらは高い天井と森林を臨むリビングスペースが心地よい、温泉スイート「いぶき」15号棟。3ベッドを備え、ファミリーやグループでの宿泊にも適している。

「villa 1/f」に新たに誕生した「いぶきVILLA」エリアには、間取りの異なる7つのヴィラが点在。それぞれ90㎡~180㎡の広さを誇るスイートには、すべての客室にヒノキをあしらった浴槽が備わり、強羅から引いた天然温泉を心ゆくまで楽しめるのが大きな魅力だ。暖炉やキッチンもあるので、パチパチと心地よい音を立てる薪と揺らめく炎を眺めながら、挽きたてのコーヒーをじっくりと味わう、ヒュッゲなステイもよいだろう。

いにしえの温泉旅館を改装した「料亭 俵石」の向かいに佇む4つのヴィラは、歴史情緒漂う料亭の趣と庭の木々に溶け込むような、長く伸びた平屋屋根とシックな色合いの外観が印象的。北欧モダン調のインテリアはスタイリッシュながらも、窓の外に広がる緑とも見事に調和し、寛ぎの空間を演出する。

そよ風に揺らめく木の葉と柔らかな陽射しを、大きな三角窓から目一杯取り込んだヴィラや、坪庭を備えたプライベート感たっぷりのヴィラなどそのデザインは変化に富む。客室によって2~3名で宿泊でき、カップルやファミリーでお気に入りの別荘で暮らしているような、穏やかなひと時を過ごせるはずだ。

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客室上部の全面に設けられた大きな三角窓から光を取り込む、開放感のある空間が魅力の「いぶき」17号棟。客室のさまざまな場所から緑を望め、周囲の森に溶け込んだような一体感を味わえる。
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手つかずの自然を眺めながらの湯あみを、24時間心置きなく堪能。塀に囲われしっかりとプライバシーが守られているのも安心だ。

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「木立温泉スイートいぶき」12号棟。専用のダイニングルームと大きなキッチンを備え、ベッドルームは個室になっている。ゆったりとしたリビングルームは居心地がよく、長期滞在にもぴったりだ。

「木立の中に建つ山小屋のような空間」がコンセプトの3つのヴィラは、天然の木材や漆喰をふんだんに用いた、木肌の温もりを感じるロッジのようなデザイン。山の傾斜に沿って各部屋が段々状に連なる立体的なつくりのヴィラなど、地形を活かしながら自然と共存する姿勢がうかがえる。

なかでも広々としたプライベートガーデンを有するのは、最も大きな180㎡のヴィラ「木立温泉スイートいぶき」12号棟だ。コネクティングテラスを介して隣接する13号棟とも行き来できるので、2棟をつなげてグループでの滞在も叶う。そんな特性を存分に活かしたのが、ふたつのヴィラ限定の「プレミアムBBQプラン」。小田原産の海産物や神奈川・静岡の畜産物など地元ならではの素材を味わい、賑やかに過ごす選択肢もここならでは。

さらにエクスクルーシブなのが、「木立温泉スイートいぶき」12号棟宿泊者限定の「シェフズテーブル」だ。このプランは客室にいながらにして、専属シェフと専属バトラーによるプライベートディナーを味わえるというもの。シェフが腕を振う姿を間近で眺め、そのひと皿ひと皿に込めた思いを知ると、極上の美食はより一層味わい深いものになっていく。

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「シェフズテーブル」はスタンダードと、アップグレードしたプレミアムの2コースがある。プレミアムコースの料理は、「和牛フィレ肉とオマール海老 モリーユ茸のソースと柚子の泡」など工夫を凝らした全6皿。料理は季節による異なる。
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箱根の夏の風物詩・大文字焼きにインスピレーションを得たデザート「明星ヶ岳大文字焼きに見立てたベイクドアラスカ ベリーソース添え」。豪快なフランベによる演出にも心躍る。

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数寄屋づくりの風情ある外観はもちろんのこと、杉板を薄く加工し編み上げた網代天井や、5㎝もの厚さの板を透かし彫りした美しい文様、不規則な歪みが味わい深い大正ガラスの窓など、歴史を感じる室内の意匠も必見。

もちろん「料亭 俵石」でのディナーも格別だ。当代随一と謳われた名建築家・島田藤吉が手掛け、大正3年に創業した温泉旅館「俵石閣」を改装し、料亭として甦らせた。与謝野鉄幹・晶子夫妻や画家の石井柏亭など文化人に愛され、上皇陛下も皇太子時代に宿泊されたという由緒ある旅館の面影が、数寄づくりのそこかしこに息づく。

こちらでいただくのは、京都で懐石の修行を積んだ料理長・濵中明利による、四季折々の旬の食材や厳選された地のものを用いた和食懐石だ。昔ながらの京懐石の包丁技術や、こだわりの器で彩った、素材の旨味を存分に活かした滋味深い味わいは、五感を幸せで包み込むよう。朝食もこちらで楽しめるので、ぐっすり眠ったあともまだまだ夢心地が続くだろう。

仙石原の自然が長い歳月をかけて育んできた、温泉や地のものに癒され尽くす極上のステイ。自然に身を委ね「なにもしないことを愉しむ」ヴィラでのひと時は、「いまここにすこやかに生きていること」をたしかに強く感じさせてくれる。

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戸外の日本庭園だけでなく、正統派の日本料理からも、四季の彩とこの土地が歩んできた歴史を感じ取ることができる。旬の素材と、御殿場産のこしひかりなど地元の食材が織りなす料理に箱根の息吹が詰まっている。

箱根リトリート före & villa 1/f

住所: 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1286-116
TEL: 0460-83-9090
www.hakone-retreat.com/villa/