この7月に行われたフジロックフェスティバル '24。ケチのつきはじめは初日に予定されていたヘッドライナーのSZA(シザ)のキャンセルだった。そこにきて、ここ数年フジロックの足にしていた友人の「レンジローバー スポーツV8」(先代)が、立体駐車場の重量オーバー(制限重量2.5トンに対して2.52トン)だということが判明。
つまり、いつものレンスポV8でフジロックに行けない。このアクシデントにはさすがに動揺した。なぜなら先代の5LV8自然吸気エンジンはワイルドかつ大人の包容力が魅力のエンジンで、アウトドアイベントである(俺たちの)フジロックにぴったりだったから。
だったらいっそゴリゴリの新型で、と登板してもらったのがこの「レンジローバースポーツPHEV」。新型の劇的進化はエンジンモデルで体験済みとはいうものの、値段を下げてまで推しているPHEVモデルは前から気になっていた。---fadeinPager---
乗ってみると、エンジンモデルを軽く凌駕する静粛性に上乗せされた重量感でほとんど格上のレンジローバーみたいになってるじゃないか……。重量増に応じたエアサスのしつけがレンジローバーのように優雅なんだけど、ステアリングはよりタイトでボディの堅牢性も高い。個人的にいいところ取りで、この値段ははっきり言って安い。円安のご時世に高級輸入車を安いと感じたのは今年初だと思う。
さらに舌を巻いたのは、このPHEVの戦略的なキャラクターがよく出ているからだった。このクルマは、EVには興味があるもののいまひとつ手を出せないでいる“イマドキ購買層”を狙い打ちしている。乗り始めはEVで、距離が100キロあたりを超えると充電していた分のバッテリーを使い切り、ハイブリッド走行に変わる。
移行は静か、かつシームレスで、運転しているドライバー以外はその差を感じることはほとんどない。つまりEV体験ができてエンジンも付いてるから、航続距離の不安もない。それもかつてのPHEVにありがちだった、バッテリー電源を使い切ると非力なエンジンが重い車体をとりあえず移動させているような、高級車なのに早々と限界を露呈する残念感とも無縁。ここがSUVでもスポーツカーでも、PHEVなら必ず気にしなきゃいけないところなのね。---fadeinPager---
このクルマのPHEVは、ライブのセットリストでいえば誰もが知っている大ネタと大ネタの間のつなぎの曲に似ている。あるいはフェスでいえばヘッドライナー前のアーティストよね。「場を温めつつもなんなら食ってしまおうか」ぐらいの気概が求められる(笑)。その点からいくと毎日自宅で充電する通勤用EVとして使えて、遠出はハイブリッド走行というこの仕様は、完全なEVがガレージに来るトリ前として最高の仕様ですよ。
そして大事なことは、その演奏もといドライバビリティはとことんメロウだったってことなんだ。今回目当てにしていたSZAがキャンセルになったこともあって、アコースティックやジャズ系が中心のステージ、フィールド・オブ・ヘブン(以下FOH)に滞留してたんだけど、この選択は明らかに乗ってきたクルマの影響を受けたね(笑) ---fadeinPager---
FOHには特にこのクルマにぴったりのアーティストが出演していて、ザ・ユゼフ・デイズ・エクスペリエンスというUKジャズシーンのバンドがそうだった。2日目のトリで、ドラマーでリーダーであるユゼフ・デイズの織り成すリズムアンサンブルが恐ろしく洗練されていて、ソロパートのスムースな受け渡しは、つなぎ目を感じさせないこのクルマのハイブリッド走行のようだった。うん。苗場のハードな山岳環境を極上のラウンジに変えてたね。まさに天国の領域(FOH)ですよ(笑)
そもそもコアになる3Lの直列6気筒エンジンが、ユゼフのドラミングみたいに滑らかで力強いんですよ。やっぱりエンジンの地力は大事だし、今年のフジロックは「このクルマあってこのフェスあり」ぐらいまで内容がシンクロしてた。断言しよう。野外フェスは、行くクルマで充実度が半分決まるといって過言ではないんだ。
レンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550e
全長×全幅×全高:4,960×2,005×1,820mm
排気量:2,993cc
エンジン:直列6気筒+ハイブリッド
最高出力:550PS/5,500-6,500rpm
最大トルク:800Nm/2,000rpm-5,000rpm
駆動方式:4WD(フロントエンジン四輪駆動)
EV航続距離:116㎞(WLTCモード)
車両価格:¥16,850,000~
問い合わせ先/ランドローバーコール
TEL:0120-18-5568
www.landrover.co.jp/range-rover