生命の源を湛え、感覚を呼び覚ます──。ISSEY MIYAKE PARFUMSの新フレグランス、「ル セルドゥ イッセイ」が誕生

  • 編集&文:川上典李子
  • 写真:斎藤誠一
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ル セルドゥ イッセイ オードトワレ¥10,780(50mL)、¥14,850(100mL)、¥16,940(レフィル150mL)

ISSEY MIYAKE PARFUMSの「ル セルドゥ イッセイ」。香りのイメージは、生命をつかさどる上で必要不可欠な「塩」。人々の活力を刺激する、注目すべき新フレグランスが誕生した。

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吉岡徳仁●デザイナー/アーティスト
1967年生まれ。倉俣史朗、三宅一生のもとでデザインを学び、2000年に吉岡徳仁デザイン事務所を設立。 デザイン、建築、現代美術の領域において活動。代表作に東京2020オリンピックの聖火リレートーチをはじめ、パリのオルセー美術館に常設展示されているガラスのベンチ『Water Block』など。作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)など、世界の主要美術館に永久所蔵。国際的なアワードを多数受賞。

純粋で力強さを備えた香りを、デザインで表現

“水”の香りを表現した「ロードゥ イッセイ プールオム」の発表から30年を迎える本年、新たなフレグランスが誕生した。「ル セルドゥ イッセイ」。三宅一生が思い描いたイメージは、フランス語で塩を意味する「セル(sel)」。込められた想いや香りのイメージを具体的に表現する重要なひとつが、ボトルの存在である。デザインを託されたのは、イッセイ ミヤケの店舗の空間デザインなど、三宅のプロジェクトに30年以上関わる吉岡徳仁。

「一生さんは生前、新たなフレグランスはとても大切なプロジェクトだとおっしゃっていました。強い想いをお持ちでした。イメージが“塩”と伝えられた時、インスピレーションとなっているのは塩の根源的な面であると理解しました。純粋で力強さを備えたフレグランスの魅力を表現することに集中しました」

ボトル本体は円柱形と楕円の形状が融合した曲線を描き、確かな触感や心地よい量感で手に納まる。ガラスの厚みを含め、試作を重ねた結果となるフォルムだ。ボトルデザインにはさらに吉岡ならではの解釈が込められている。自然と人との関係性、とりわけ「光」の観点からの考察だ。

「塩に関して光のイメージが湧き上がりました。岩塩など鉱物の存在であり、尽きることなく光を放つ状態です」

メタリック素材の蓋やガラスを素材とする本体では光が反射し、光が屈折するさまも重要な要素となっている。ベース部に光がとどまっているような姿も美しい。デザインとアートの領域で自然のエネルギーそのものの表現を果敢に探り続ける吉岡らしい造形だ。

「人の感覚そのものに関心があり、かたちを超越する『見えない』デザインも実現したいと常に考えています。知覚に作用して新たな感覚を呼び覚まし、また、時の経過によって異なる印象がもたらされるのが香りや光。今回のプロジェクトでは人のすべての感覚に響くものにできればと考えました」

生命の源となる力を湛える香りの世界観が、研ぎ澄まされたボトルの姿に凝縮された。

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吉岡のデッサン。円柱形から楕円の形状へとゆるやかな曲線を描き、透明な美しい造形から放たれる光を意識した。
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「光」を表現するため、透明なガラスとメタリック素材を融合させたかたちを生み出した。心地よい量感で手に納まる。

ル セルドゥ イッセイの詳細はこちら

 

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海と大地のエレメントを秘めた、ピュアでパワフルな香り

「水」と同様、本質的な自然のエレメントのひとつである「塩」。水に溶け、生命を維持する上で不可欠な存在だ。不朽の名作「ロードゥ イッセイ プールオム」に続くメンズフレグランスの開発にあたり、三宅一生のインスピレーションを受けとめ、実現したのが調香師のカンタン・ビシュである。

「ロードゥ イッセイ」の愛用者だという彼は、その香りを「パラドックスを内包している」と表現する。

「どこまでも力強く、圧倒的にフレッシュ。はっきりとした存在感があり、シンプルさを体現しつつも複雑な奥行きを見せてくれる」

新たなフレグランスについて、ビシュは次のように語っている。

「ロードゥ イッセイの香りに寄せることなく、しかしまったく無視することなくメンズフレグランスをつくるとしたらどのようなものになるのか。そして精神的なつながりも持たせたかった」

目指したのは、波が引く瞬間の、大地と海との邂逅となる香りだ。

「塩というエレメント、自然のリズムや動きに向き合いたいと考えました」

地球が誕生し、海が現れ、最初の生物が海中で誕生した。塩という成分を抜きにして生命の存在は難しい。かくも深く人間と密接な存在であるが、塩そのものには香りを備えてはいない。

イメージされたのはミネラルの爽やかさを含むウッドだった。海とのアコード(調和)としては、かつて藻類だったオークモスと、シーウィード。大地のアコードの中心を成すものとしてはインド産のベチバーを選択。さらにアップサイクルされたシダーウッドが、生命の循環をたたえるかのごとく、鮮やかさに包まれた香りをもたらす。相反する多様な要素がコントラストを描き、そして響き合い、調和しながら「ル セルドゥ イッセイ オードトワレ」は香り立つ。

こうした躍動感は、マーカス・トムリンソンが手掛けたビジュアルイメージでも余すところなく表現されている。音響の振動を視覚化するサイマティクスやCGが駆使された映像で描かれているのは、鉱物や塩の実に豊かな表情だ。

ピュアであると同時にダイナミックで、エネルギーに満ちた香りの存在。強さとは、溢れ出る活力であり、その循環から浮かび上がる美でもある。感覚を呼び覚まし、活力を刺激する新たなフレグランスの誕生だ。

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海を表現するのは天然由来のシーウィード、オークモスと爽やかなソルトアコード。
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大地を表現するのはジンジャー、ベチパー(イネ科の植物)、シダーウッド(針葉樹)など。

音の振動を視覚化する「サイマティクス」

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ビジュアルイメージを手掛けた映像監督/写真家のマーカス・トムリンソン。彼が用いたのは「サイマティクス」という技術。音波が模様をかたち造る不思議な現象を撮影し、音の振動が物質に影響を与え神秘的なパターンを描く。技術的、芸術的な粋が注ぎ込まれた映像が捉えるのは塩の本質、生命をみなぎらせる塩の力だ。

ル セルドゥ イッセイの詳細はこちら

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吉岡徳仁による香りのインスタレーション

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ギャラリー3の入口付近では、新フレグランス「ル セル ドゥイッセイ」の香りを含んだミストが噴出される。

新ボトルのデザインを手掛けた吉岡徳仁による、香りのインスタレーションが開催されている。

「根源的で普遍的なテーマに基づく、純粋で力強い香水の魅力を表現したい」と語る吉岡。自然や光をテーマとする革新的な作品でも注目を集める彼が今回試みるのは、ボトルデザインに込めた発想をさらに発展させた、感覚を呼びさますダイナミックな体験だ。

館内では彫刻的なフォルムのボトルデザインのプロセス紹介や、フレグランスを手掛けた調香師カンタン・ビシュのインタビューを含む、本展のみのスペシャル映像も展示されている。

『ISSEY MIYAKE LE SEL D’ISSEY: Imagination of Salt』展

開催期間:2024年8月28日(水)~9月8日(日) 
開催場所:21_21 DESIGN SIGHT Gallery 3
東京都港区赤坂9-7-6
www.isseymiyake.com/blogs/news

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