世界一美しい……かはさておき、約100年前に造船されたイタリア軍艦「アメリゴ・ヴェスプッチ号」に乗船するチャンス!

  • 写真・文:一史
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このイタリアの帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ号」でネット検索してみてください。
「世界で一番美しい帆船」「世界一美しい軍艦」「世界一美しい船」と、“世界一の美しさ”推しのタイトル記事がずらずらと出てきますから。

以下、アニメ『鬼滅の刃』の胡蝶しのぶの声をお借りしてお届けします。

もしもーし、マスコミの皆さーん、お元気ですかーー。
リリース配信で受け取った情報ファイルに「世界で一番美しい帆船」と記述されているからといって、そのままご自身の記事のタイトルにコピペしてはダメですよーー。
「世界一っていうけど、その根拠はどこに?」と思わなかったんですかーーー?
本当にそう言い切っていいのか疑問視しないことを、思考停止って言うんですよ〜〜??
もっともあなたがこの船を実際に見たことがあり、「自分は世界一美しいと思う!」と感じているならなんの問題もありませんけどね〜〜〜〜。

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……なんかすみません、胡蝶しのぶ様にすっかり甘えてしまいました。
配信情報を右から左へただ流すだけの記事はいつもたくさんあるんです。
ただ今回の帆船に関する「世界一美しい」の文言はあまりに多く目につき、「さすがにちょっと」と思いグチらせていただきました。
言葉が独り歩きすると、それが社会のスタンダードになっちゃうじゃないですか。
ほかにどれほど美しい帆船が存在しようとも、アメリゴ・ヴェスプッチ号以下ということになってしまいます。
結構大きな問題なんです、こういうのは。

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ということで。
8月25日(日)〜30日(金)まで湾岸の「東京国際クルーズターミナル」に寄港しているこの帆船がどれほど美しいモノなのか確かめるべく、一般公開前に訪れてみました(わたしもマスコミの端っこにいる人間)。

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結論。
の前にひとこと。
この帆船は100年近く前の1931年に造船されたイタリアの軍艦です。
練習船として現役稼働しているもの。
「美しい」の言葉から頭に思い描きがちな、絢爛豪華な客船やテーマパーク的な船とは一線を画します。
ハードに酷使される軍需品なんです。

港で乗船し、内部を見学して感じたわたしの感想は、
「歴史的価値を味わえる軍艦。本物を体感してとても勉強になった。でも本当に『美しい』と心が動いたのは、イタリア軍人たちのユニフォーム姿」
です。

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おそらく、帆を張って大海原を走る姿は荘厳なのではないでしょうか。
この船はファンタジーでなくリアルな軍艦。
設備とスペースは軍人が使う仕様ですし、港に停止している状態では美的見地よりも博物的な歴史の重みを実感しました(船の知識のない素人の意見)。
船に詳しい人だと見どころが違うでしょうから、まったく異なる感想を抱くかもしれません。
「こんなに美しいのになぜわからないのか!」と。

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実は美しさを確かめるのは見に行った理由のひとつにすぎず、もっとも体感したかったのは古い帆船のテクスチャーです。
床材や階段のてすりや調度品などの。
例えば帆船内を想定した撮影企画があったときに、本物を知っていると判断基準になりますから。
こうした知識と感覚を身につけるのがいちばんの目的でした。
(もちろん皆さんに現地の様子をお伝えするためでもあり)

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その観点で想定外に驚いたのは、イタリア海軍人の装いの見事さ!
軍服は着る者たちの一体感と士気を高めるという明確な役割を持つ考え抜かれたユニフォームです。
カッコよくて当たり前なのですが、それにしても見事すぎた……。
超着丈の短いスペンサージャケット+細い白パンツ+白シューズ。
セレモニー用の装いなのでしょう。
白パンツに白シューズで、たたでさえ長い脚がさらに脚長に。
身体を鍛えているから上半身はたくましく。

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ファッション業界では男女の差をなくすジェンダーフリー発想が定着してきましたが、マッチョな(精神性でなく肉体的に)ラテン系のオトコはやはり魅力的ですね。
性的指向がストレートのわたしでも魅了されてしまいました。

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多角的にイタリアの産業を紹介するイベント会場も併設するアメリゴ・ヴェスプッチ号の乗船体験は、申込制で受付されてます。↓
公式サイト

30日(金)までのわずかな期間ですから、気になる方はお早めにどうぞ。

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上官が現れた途端、ピシッと立って敬礼。
その上官は気にも留めてない様子。
二人が歩き去るまで敬礼は長く続きました。
規律がないと人の命を守る集団行動に支障が出るのでしょう。
軍とはそういうところなのだと実感。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。