ビターとミルクの“交代食”で、国産アマーロの愉しみが広がる【プロの自腹酒 vol.22】

  • 文:西田嘉孝
  • 写真:榊 水麗
  • イラスト:阿部伸二
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伊勢屋酒造/スカーレット・ラディーチェアマーロ

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2020年に古民家を再生した酒造場を開設し、国産アマーロ「スカーレット」の生産を開始した伊勢屋酒造。昨年リリースされた「スカーレット・ラディーチェアマーロ」は、自社畑で育てた薬草やハーブの根の部分をメインに、フレッシュベルガモットやブラッククミンなど、30種類以上のボタニカルを使用。華やかで複雑な香味とまろやかな苦味が楽しめる、大地を感じさせるアマーロだ。700mL ¥4,950/伊勢屋酒造 TEL:042-682-0625

廃棄予定の酒粕などを原料に使う再生型蒸留所である東京リバーサイド蒸溜所や、昨年8月にオープンした静岡県三島のウォータードラゴン蒸溜所で酒づくりの先頭に立ち、酒好きを唸らせるジンを生み出している山口歩夢さん。

「家でひとりで飲む時は、大抵自分で買い集めた1100本以上のボトルから選んで飲みます。カクテルにして可能性を試したり、酒づくりのヒントを探すように香りや味を確かめたり、仕事の延長のように飲むことが多いですね」

だからこそ心底リラックスしたい日には、なにも考えずに向き合える、ただただ美味い酒を選びたくなる。山口さんにとって、そんな特別な一本が「スカーレット・ラディーチェアマーロ」だ。相模原の伊勢屋酒造が近隣の畑で栽培した薬草などを使い、ハンドメイドでつくる国産アマーロ「スカーレット」。定番のアペリティーボをはじめ、数種がリリースされている。

「ラディーチェ(根)という名前の通り、メインに使われているのは植物の根の部分。少しゴボウを感じさせる土っぽい香りや甘さ、まろやかな苦味が驚くほどうまくまとまっていて、ロックやソーダ割りでシンプルに飲みたくなる。スカーレットはどれも大好きなのですが、最近ではこれがいちばんのお気に入りです」

合わせるおともは、ミルクとビターの2種類のチョコレート。アマーロをひと口飲んでビターを、またひと口飲んでミルクをといった具合に飲み食べを繰り返し、味わいの変化を楽しむのが山口さん流だ。ビターでは酒の苦味や渋味との相乗効果で口の中が引き締まり、ミルクではそうした収斂味がほぐれていく。

「サウナと水風呂に交互に入る“交代浴”のような効果が口の中で楽しめます」。山口さんが薦める、国産アマーロとチョコのユニークなペアリング。ぜひトライしてみてほしい。

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薬草酒とチョコの相性を一歩進めたペアリング

苦味を特徴とする薬草酒のアマーロには、油脂分の多いチョコレートがぴったり合う。ビターとミルクを交互に合わせれば、口の中で変化するより豊かな味わいが発見できる。

山口歩夢

1995年、千葉県生まれ。現在は「東京リバーサイド蒸溜所」や三島の蒸留所「ウォータードラゴン」を拠点に、世界的にも高く評価される数々のジンを生み出している。

東京リバーサイド蒸溜所

住所:東京都台東区蔵前3-9-1
TEL:03-6427-0009

※この記事はPen 2024年9月号より再編集した記事です。