とんだ林蘭とPloomがコラボ、相反する要素によって表現された“ユニークな違和感”

  • 写真:河内 彩
  • 文:高野智宏
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Ploomがデザインを通して「現代におけるたばこの愉しみ」を提案する、JTのプロジェクト「Ploom Design House」。これまでファッションデザイナーの相澤陽介や、ミュージシャンの山口一郎が手掛けたPloomの限定フロントパネルを発表してきた。そして今回、新たにコラボレーションするのは、多くのミュージシャンやファッションブランドのアートディレクションを手掛け、自らもアーティストとして活躍するとんだ林蘭。フロントパネルに表現されたのは、異なる要素を組み合わせることで生まれる“違和感”をテーマとした、実に彼女らしいデザインだった。

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とんだ林蘭を刺激した、Ploomが秘めるデザインの可能性

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9月2日にリリースされた、とんだ林蘭がデザインした限定フロントパネル。左より時計回りに、「Lip」、「Gerbera」、「Pear」、「Ribbon」。このほか、Ploom X CLUB会員だけが入手できるテープ&安全ピンのエクスクルーシブモデル「Tape」の計5モデルをラインアップする。

今回のコラボレーションを振り返り「加熱式たばこに関するデザインは初めてのことで、とてもいい経験になりました」と語るとんだ林は、加熱式たばこやそのデバイスを意識することは、これまでなかったという。

「居酒屋などで友人たちが使用していても興味を抱くことはほとんどありませんでした。それは単に、たばこを吸うための道具という認識で、パッ目に留まるようなかわいらしさを感じたり、ユニークで面白みを感じるデザインに接したりしてこなかったからだと思います」

しかしこのコラボをきっかけに、Ploom Xに触れじっくりと観察したことで、その小さくなめらかなボディに秘められた可能性を感じた。

「女性でも手に収まるコンパクトなサイズ感と、なめらかでコロンとしたかわらしいフォルムが、どこかメイク道具のようにも感じ、とても親近感を覚えました。またフロントパネルを着せ替えることができるとうかがい、Ploomが持つデザイン的な可能性を感じたのです」

さまざまなカラーバリエーションのあるPloom。デザインするフロントパネルのカラーは自由に選ぶことできたそうだが、とんだ林が選んだのはベーシックなシルバー。もちろん、そこには彼女なりの意図と狙いがある。

「さきほどPloomにメイク道具のような印象を持ったと言いましたが、フロントパネルが鏡のように輝くシルバーこそそんな印象を抱いたカラーでしたし、とても素敵でした。また、ミラー仕上げになっていることにデザイン的な余白や高い自由度を感じたことから、シルバーをベースに選んだのです」

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異質な組み合わせが、毒気を孕むシニカルな違和感を生む

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とんだ林蘭(とんだばやし・らん)●1987年、東京都生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業。「とんだ林蘭」はアーティストネームで、ミュージシャンのレキシこと池田貴史により命名された。東京スカパラダイスオーケストラ、木村カエラ、あいみょんなどのアートディレクションのほか、メゾン ミハラヤスヒロ、カラー、アナザーエディション、アニエスベーなどのファッションブランドとのコラボレーションなど、いま最もその動向が注目されるクリエイターのひとり。

鏡面のようなフロントパネルにとんだ林が描いたのは、彼女の代名詞的なデザイン手法であるコラージュを用いた印象的なイラスト。いわく「このサイズ感なら、抽象的なグラフィックよりも、見た目にインパクトのあるほうが映えるし、かわいくなるだろうと、コラージュで描くことにしました」

用いられたモチーフは、リボンと安全ピン、花やフルーツとボルト、そして口紅と青空といった、とんだ林の感性が光る独特な組み合わせだ。

「モチーフ単体としては、リボンに安全ピン、花とボルトも日常的なもの。でも、それらは通常混じり合わない組み合わせですよね。そんな異なる要素を組み合わせることで、いつもとは違う面白い見え方になる現象がとても好きで、作品づくりでは常にそうした『違和感を生みたい』という気持ちが自分の中に大きなテーマとして存在しています。結果として、いずれのモデルもPloomの柔らかいフォルムとシルバーの硬質な質感に映える、自分らしいデザインに仕上げることができました」

有機物と無機物、軟質と硬質など、相反する要素を組み合わせ、かわいらしくもどこかシニカルな毒気を感じさせるとんだ林デザインの限定フロントパネル。まさに、今回のコラボレーションのテーマである「媚びない強さが生み出す、新時代のクリエイティブ」を感じさせる作品となった。

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上:東京・銀座のPloom Shop。正面ドアはフロントパネルに用いられたコラージュのデザインで演出。限定のフロントパネル各種がとんだ林の演出した什器の上に陳列されている。 下:スタイリッシュな店内に、とんだ林のコラージュがそのユニークな存在を主張する。「いい感じのバランスに配置されてよかったです」

今回のコラボを、「とても自由度を感じられたプロジェクトで、感覚に従って即興でデザインすることができました」と語るとんだ林だが、唯一、頭を悩ませたのが、Ploomのフロントパネル中心にあるLEDライトの存在だった。

「中央上部にありますから、当初、このLEDを邪魔せずにデザインするのは難しいなと悩みました。いま思えばそうしたデザイン的な制約があったからこそモチーフに動きを表現できるなど、よい作用を与えてくれたかなと感じます」

その制約は、LED自体をデザインの一部にするというアイデアをもたらした。

「(口紅がデザインされた)『Lip』には縦の光を走らせているのですが、その一部にLEDライトを利用しています。これならデザインとして活用できるって」

とんだ林の粋な“仕掛け”は「Ploom Design House」プロジェクトチームを感嘆させた。その高い評価は、ラインアップの数とユーザーへの展開方法にも表れている。

「当初は2パターン程度を制作する予定とうかがっていたのですが、提案したすべてのデザインを採用いただきました。また本来、Ploom X CLUB会員の方のみが入手できる限定商品の予定でしたが、会員限定モデルを除いた4つのデザインはオンラインショップやPloom Shopで販売されるなど、思ってもいない展開となりました」

すべてのデザインが採用されたからこそ、今回の狙いでもある“デザインを選ぶ愉しみ”がより感じられるコラボレーションの展開になったのではないだろうか。

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いつもの一服がより有意義なひと時になる、特別なアクセサリー

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花やフルーツに安全ピンやネジといった金属をモチーフの一方に用いることでパンクなテイストをも感じるデザイン。とんだ林は「女性だけでなく、男性にも使ってほしいですね」と想いを込める。

とんだ林デザインの限定フロントパネルは、CLUB JTオンラインショップならびに全国のPloom Shopにて数量限定で販売中だ。

さらに東京・銀座、愛知・名古屋、大阪・なんばのPloom Shopはパネルと同じデザインで演出されている。もちろん、レイアウトも彼女によるもの。「立体的にイメージするのが苦手なので、バランスがとても心配でしたが、実際に店頭の様子を見て、うまくできたなって」と手応えを明かす。

「よい経験ができたし満足度の高いコラボレーションとなった」と語るとんだ林。特に多くの人が所有し常に携帯する、物理的なアイテムに自身のデザインが用いられたことに喜びを感じているようだ。

「たばこを吸うことは何気ない日常の行為だと思いますが、私がデザインしたフロントパネルのPloomを所有することで、その方にとって一服が少しだけ特別な行為となって、有意義な時間を過ごしてもらえたらとても嬉しいですね」

特別な存在感のデザインは持つ者に満足感をもたらし、たばこを嗜むこ時間をより充実したひと時へと誘ってくれることだろう。

Ploom Design House

ploom-x-club.clubjt.jp/