人々との協働を通じて、土地の暮らしや自然を接続させ、景色をつくり変えるような表現活動を行う五十嵐靖晃(いがらしやすあき)。アートとは「自然と人間の関わりの術」であると考える五十嵐は、太宰府や瀬戸内などの国内だけでなく、ブラジルや南極といった世界をフィールドに多様なプロジェクトを展開している。

その五十嵐は、現在、千葉県立美術館にて回遊型美術展覧会『海風』を9月8日まで開催中だ。これまでの活動から『海風展』で表現したかったこと、さらにアートの未来などについて聞いた。
千葉の埋立地で育った五十嵐。アーティストを目指したきっかけとは?

「子どもの頃から物をつくったりするのが好きでした。市川市の埋立地の育ちで、遊び場といえば近所の公園でしたけど、砂場で穴掘ったり、山や道をたくさん作る。それを知らない他の子が作った道と繋げたりするのが面白かったです。大人になった今から振り返ると、違った世界が偶然に繋がることの楽しさを覚えました」
高校の時まではバリバリの体育会系。ただ進路を考えた時にスポーツで生きることに限界を感じて、何かをつくること生業としようと美術予備校に入ったという。
「単純につくることの面白さに加え、あらゆる価値観が許容されるようなアートの世界に魅了されましたね。たとえネガティブな感情を作品として昇華しても問題ない」
1999年に東京藝術大学先端芸術表現科へ1期生として入学すると、川俣正や日比野克彦らに学び、翌年にスタートした『大地の芸術祭』などのプロジェクトに携わっていく。
「先端芸術表現科に入学してまずはじめたのは、居場所をつくることでした。設立されたばかりの先端とは何ぞやということを、大学の中でも存在意義が問われていましたね。そして川俣さんや日比野さんが立ち上げから参加していた『大地の芸術祭』にも関わった経験も大きかったです。ゼロから現場を開拓して、綿密にリサーチし、何かをつくっていくことの大切さ。あとクリストにも衝撃を受けました。ベルリンの国会議事堂やイタリアの島を包むプロジェクトもすごいなあと」
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