女性を最高にカッコよく魅せる色彩とディテール!阿波おどりの衣裳をスナップ<14点>

  • 写真・文:一史
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高円寺「しのぶ連」。

日本の女性をこれほどカッコよく、ダイナミックに、優雅に魅せる服装はほかにない!?
そう思ってしまうほど、阿波おどりの衣裳は見事です。

編笠を前に深く被り、極端に後ろの先端を跳ね上げる。
和服のパーツを、着方もわからないほど複雑に組み合わせて着る。
足元は2枚歯の下駄で、頭上に掲げた手を降りながら身体をくねらせ爪先立ちで前へ突き進む。
「ヤットサー! ア、ヤットヤット!」と叫びながら。

踊りの動作と服装とが完璧にマッチして、大人数でスタイリッシュな空間をつくり上げます。
顔を小さく身長を高くする衣裳が、小柄な人もパワフルな存在に高め上げてます。
人と一体化したグラフィック表現が素晴らしくて!

このたび東京・下北沢の歴史ある恒例行事である下北沢一番街下北沢阿波おどりに行き、衣裳をちゃんと見たことで改めて魅力にヤラれてしまいました。
ド派手なのに品がいいのです。
「連」と呼ばれる各団体により独自の装いがあるなかで、帯は黒がベース、白生地を使うといった共通するフォーマットもあります。
どこまでがルールなのかわたしには判断がつかないのですが、どの連もその着こなし方は一定のようです。
この「統一感のある前衛」が阿波おどりの集団の迫力を生み出しているのでしょう。
ここでの写真は2024年8月18日(日)の光景です。

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「燦々」。

爪先立ちで片足を跳ね上げるダンス。
指の付け根にかかる負担はものすごいはず。
体重を全部乗っけるんですから。

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「燦々」。

上写真で腰を覆うように被せた白と黒赤の布は、実は着ている浴衣の裾です。
脚を覆っているピンクの部分は、いわば浴衣の下に穿いたスカートの「すそよけ」。
浴衣のウエスト部分をぐわっと持ち上げて帯の下に折り畳み、裾をグラフィカルにヒップの上に乗せた着こなし。
上半身は中に肌着を着て、さらに白いアームカバーの「手甲」をプラス。
肌の露出を減らす姿勢も、品格や日本らしさに通じるのかもしれません。

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高円寺「しのぶ連」。
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高円寺「しのぶ連」。

傘を前に深く後ろを高く上げて斜めに被る着方は近年のスタイルのようです。
誰かのアイディアが広まっていったのでしょうか。

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高円寺「弁慶連」。

高円寺の連が多いのは、本場である徳島の阿波おどりを東京ではじめてイベント化したのが高円寺だからのようです。

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東林間「壱粋」。

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高円寺 「弁慶連」。

黒・白・赤の美しすぎるグラフィック!
帯から下げた印籠が、装いと踊りをよりダイナミックに演出。

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東林間「伍楽連」。

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高円寺「しのぶ連」。

帯を低く落とした男装での「男踊り」も阿波おどりで古くから続く伝統のようです。
編笠で下駄姿の「女踊り」がしなやかさや優雅さを表すのに対し(踊る体力は相当なものですが)、男踊りは男女の差のない自由な活気を感じました。
どちらを踊りたいか、どちらが好きかは人それぞれなのでしょう。

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下北沢「ひふみ連」。
DSC09041.jpg高円寺 「弁慶連」。

祭りを見て衣裳全般の着方で気づいたのが、皆が後ろ姿を徹底して追求していること。
連の名称入りのウチワを帯に差してアピールしたり、印籠(根付)を下げるのも後ろ側。
後ろ姿といえばオリンピックでは選手のことを「日の丸を背負う」とマスコミが呼んだり、「親の背を見て子は育つ」ということわざもあります。
江戸時代の火消しが仕事を成功させたあとに、裏地に派手な図案を描いたリバーシブルの半纏(はんてん)を裏返して着て、背中で自慢気に街を練り歩いた歴史も。
この感覚は現代の都会暮らしではだいぶ薄れた気がしますが、「背中で語る」日本の表現もいいものですね。

All photos&text©KAZUSHI

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高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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