9月14日まで会期延長! パシフィコ横浜「巨大恐竜展2024」に現れた、史上最大級の陸上動物「パタゴティタン・マヨルム」とは

  • 文:Pen編集部
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世界最大級の巨大竜脚類「パタゴティタン・マヨルム」の全身復元骨格。

巨大恐竜・パタゴティタンをはじめとする数々の生物の標本展示とともに、恐竜の巨大化の謎に迫る展覧会が、今夏、横浜で開催されている。本展の監修者である古生物学者の関谷透に、巨大恐竜の魅力を語ってもらった。

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パタゴティタンには新種として複数の特徴があるが、なかでもわかりやすいのが肩甲骨にある2本の筋。本標本ではそうした新種の特徴も見事に再現されている。

人々が恐竜に惹かれる理由のひとつ。それは、他の生物を圧倒する巨体にある。そんな巨大恐竜の魅力を味わえるのが、パシフィコ横浜で現在開催中の展覧会『巨大恐竜展 2024』だ。

本展の中心となるのは、ロンドン自然史博物館で行われた企画展の巡回展。今年1月のロンドンでの閉幕時には同博物館で史上最多の来場者数を記録した。

恐竜をはじめとする巨大生物の標本が数多く展示される中、注目は日本初上陸を果たしたパタゴティタン・マヨルム。この史上最大級の竜脚類は、全長37m、体重は57tで、アフリカゾウ9頭分より重いという驚異的な大きさを誇る。本展覧会の監修者であり、福井県立恐竜博物館の関谷透主任研究員に、その魅力を訊いた。

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パタゴティタン
全長:37m/時代:白亜紀前期
ティタノサウルス類の竜脚類で、1億100万年前に生きていた植物食恐竜。アルゼンチンのパタゴニアで発見され、2017年に「パタゴニアの巨人」として命名された。約46億年の地球の歴史上で、史上最大級の陸上動物とされるティタノサウルス類の中でも、最大級の巨体を誇る恐竜として知られている。制作:月本佳代美 

「パタゴティタンの魅力は、なんといってもその巨大さです。これだけ大きな恐竜の標本は、大半の人は目の当たりにしたことがないはず。この圧倒的な大きさを目の前で体感する喜びを、ぜひみなさんに味わってほしいです」

そんな本展でフォーカスされるテーマは、「なぜ恐竜は巨大化したのか」。地球史上、恐竜ほど巨大化した動物は未だ存在しない。果たして、その理由とは?

「巨大化はさまざまな動物に起こる現象ですが、そこにはいくつもの要因が存在します。体を大きくすれば敵に負けない強い力を持つため、生存競争では非常に有利になる。これも、生物巨大化の理由のひとつと考えられています」

パタゴティタンを筆頭とする竜脚類が巨大化していく上で、重要な要素となったのが食事のスタイルだ。体を大きくするには食料補給が欠かせないため、パタゴティタンも、1日に約130㎏の餌を摂取したと考えられている。

「より短時間でより多くの栄養を取るためなのか、食べ物は咀嚼せずに丸飲みするのが竜脚類の食事の特徴です。食べ物をかみ砕く必要がなければ、短時間で大量の食事ができる。また、頭は軽くて小さくなります。頭が軽ければ、支える首も細くて長い形状へと進化できます。結果、広範囲の食物を摂取できたことも、巨大化を促進したと考えています」

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驚異的な大きさだったといわれるパタゴティタン。現在で地上最大とされるゾウや、ジュラ紀後期を生きた全長25mのディプロドクスよりも遥かに大きい。

せっかく大量の食べ物を取っても、消化吸収できなければ意味がない。だが、取り込んだ栄養を効率的にエネルギーに変える仕組みも恐竜たちは兼ね備えていた。

「哺乳類の肺では、空気の取り込みと排出が同じ経路で行われます。でも竜脚類の肺は、気嚢と呼ばれる袋も使うことで一方通行で空気を流す仕組みになっています。この場合、肺の中で新鮮な空気と汚れた空気が混ざり合わないため、効率よく体内に酸素を行き渡らせ、食物をエネルギーに変えることができるのです。ただ、ここで謎もあります。丸飲みする食事のスタイルや肺構造は、現代の鳥にも共通する特徴です。本来なら鳥も巨大化していいはずなのに、竜脚類に匹敵するほど大きな鳥は誕生していません」

なお、今回の展覧会では、福井県立恐竜博物館や福井県立大学恐竜学研究所の監修のもと、竜脚類以外の大型恐竜や大型動物も含めた標本が合計約100点展示されている。鎧竜のデンバーサウルスといった竜脚類以外の恐竜に加えて、翼竜のプテラノドンやマンモス、魚竜などの絶滅動物、ナガスクジラなどの現代の哺乳類の巨大化についても検証していく。

「標本だけではなく、恐竜ロボットやインタラクティブな展示を通じて生態を学べるなど、大人も子どもも楽しめる内容を意識しています。また、地球から失われた動物である恐竜を多角的に知ることで、生物多様性の価値が見えてくるはず。展示を通じて、少しでも多くの人がその大切さを感じてくれたらうれしいです」 

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写真はパシフィコ横浜での展示風景より。首の長さだけで12m前後はあったとされるパタゴティタン。標本でもその長さは圧巻。また、会場では巨大な体を持った竜脚類の生存戦略や体の仕組みなどを解説するパネルなども設置。

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恐竜王国・福井からもさまざまな巨大標本が集結

09_印刷用_8.プテラノドン 福井県立恐竜博物館蔵.png
プテラノドン
翼開長:7m/時代:白亜紀後期
プテロダクティルス科の翼竜。北アメリカ大陸に多く生息した。映画『ジュラシック・ワールド』をはじめ、多くの映像作品にも登場するなど、一般知名度の高い古生物として知られる。これまでに発見されている標本数は1100個を超えており、その研究史は長い。魚を主食とし、くちばしには歯がなかったとされる。
08_印刷用_6.チンタオサウルス 福井県立恐竜博物館蔵.png
チンタオサウルス
全長:8m/時代:白亜紀後期
ハドロサウルス科の鳥脚類。白亜紀後期に中国に生息した植物食恐竜で、体重3t近くまで成長する。特徴は、ひたいにある角のようなトサカとカモのくちばしのような口元。なお、展覧会では、食べ物を丸飲みする竜脚類とは対照的に、植物をきちんと咀嚼していた鳥脚類の食性の特徴や生存戦略についても紹介していく。
10_印刷用_5.エウヘロプス 福井県立恐竜博物館蔵.png
エウヘロプス
全長:11m/時代:白亜紀前期
長らくマメンチサウルス類の近縁と考えられていたが、現在ではティタノサウルス形類の竜脚類とされている。非常に長い首を持つ植物食恐竜。中国で歴史上はじめて学名が付けられた恐竜としても知られている。本展では、こうしたアジアや北アメリカなどで発見された竜脚類についても、実物化石を交えて紹介している。
11_印刷用_14.デンバーサウルス 福井県立恐竜博物館蔵.png
デンバーサウルス
全長:4m/時代:白亜紀後期
ノドサウルス科の鎧竜。植物食恐竜で、北アメリカに生息していたとされる。分厚い鎧のような装甲が特徴的で、この硬い鎧のような皮骨板で、鋭い爪や牙を持つ外敵から身を守った。頭が低い位置にあるため、食事は背の低い植物が中心だったのではないかと考えられている。名前は標本を所蔵しているデンバー自然科学博物館に由来する。

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豪華音声ガイドと限定メニュー

音声ガイドナビゲーターは、お笑い芸人のサンシャイン池崎で、声優の山下大輝も「恐竜少年」に扮して登場。そのほか、クイズや本展監修者の関谷透主任研究員による特別解説も楽しめる。

また、鑑賞後に余韻を楽しむため、展覧会場には、恐竜グッズが盛り沢山の本展特設ショップもオープン。限定カフェメニューはもちろん、オリジナルグッズも多数登場する。

子どものみならず、大人であっても好奇心がくすぐられるような最新の恐竜研究を、ぜひその目で確かめてほしい。

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左は「パタゴティタンドッグ」900円。右は「隕石から逃げろ!-レモンスカッシュ×はじけるわたあめ–」各750円。
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左は「ぬいぐるみキーホルダー」1,500円。右は、北陸新幹線W7系「かがやき」とパタゴティタンの大きさを比べた、JR西日本新幹線コラボグッズのひとつ「スリムノート」660円。

巨大恐竜展2024

開催期間:2024年7月13日~9月14日
開館時間:9時〜17時(8/10〜8/18は19時まで) ※入館は閉館の30分前まで
開催場所:パシフィコ横浜 展示ホールA
神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1
https://giantdinos-ex.com