FPMの田中知之さんがプロデュースするミュージックラウンジ「FUL(フル)」が、田中さんの出身地である京都にオープンした。
コンセプトに掲げるのは“サウンドフォレスト”で、店内は世界各地から集められた珍しい植物が生い茂る、森のような雰囲気だ。
天井には米国1SOUND社製のスピーカーを10基配置し、森の上空から音楽が降り注いでいるかのようなファンタジックな空間が広がっている。
田中さんは今回のプロデュースについて、最初に行ったことは一般的なミュージックバーにある記号をすべて外すことだったと話す。
「例えば、大口径のスピーカー、DJブース、アナログレコード、マッキントッシュのアンプのブルーに光るボリュームメーター‥‥。こうしたものを取り払い、すべて存在しない状態でミュージックバーという言い方はちょっと違うよなと。そこで我々が思いついたのはサウンドフォレストという言葉です。京都ということもあり、下鴨神社を囲む糺(ただす)の森をイメージしながら、幻想的な森の中でお酒と音楽を楽しめる空間を作りました」
グリーンが生い茂るインテリアは、北アフリカやモロッコの建築をデザインのベースに、土、鉄、木、石など自然の素材で構成されている。手がけたのはインテリアデザイナーの松中博之さん。店内はラウンジ、バー、ダイニングの3つのゾーンに分かれ、目的や気分によって使い分けができる利便性の高さもFULの魅力だ。
店に入って左手にはラウンジが広がり、くねくねとしたオリジナルのスネークチェアが端と端をつなぎ、存在感を放っている。多肉植物や希少価値の高いユーフォルビア、熱帯植物ピカクシダや南米や中米に生息するチランジアなど、世界各地で買い付けてきた珍しい植物がスネークチェアを取り囲み、さらに奥には個室も備える。
一方、右手はバーエリアで、ハイチェアが並ぶバーカウンターが鎮座。スタンディングでも楽しめるようになっている。さらに奥には壁一面に植物が陳列された植物園のようなダイニングが控え、独特の雰囲気を醸しているのだ。
ドリンクはワインコンサルタントでありソムリエの田代啓さんがセレクトした、ワイン通も気になる120種類の個性的なナチュラルワインと、齋藤恵太さんがプロデュースした独創的なオリジナルカクテルが中心だ。
フードは日本のストリートフードをベースに、オリジナルのアレンジを加えたユニークなメニューがラインナップ。
例えば、「瞬間プレス海老せんべい ハリッサマヨネーズ」は、生食もできるような新鮮な海老を殻ごとギュッと瞬間的に火入れをして、香ばしく焼き上げたもの。自家製マヨネーズにハリッサと呼ばれる中東のスパイスを加えた辛味のあるソースをつけて食べれば、海老の風味が口の中に広がる。
「豚バラ肉のホロホロ煮とスーナのタコス」は、メキシコの伝統的なタコスのスタイルのひとつ、カルニータスをアレンジ。オレンジジュースとコーラで煮込んだ豚肉に、スーナと呼ばれる沖縄の海藻を加えて、ギリシャのザジキソースを合わせたものだ。
そして、忘れてはならないのが、音。人気DJであり、音楽のプロデュースや作曲なども手がける田中さんがこだわり抜いたサウンドシステムは、心地よさを極限まで追求したものだ。
「FULでは音楽をしっかりと浴びながら、お酒やお食事を楽しんでもらいたいんです。そのために音の周波数帯を徹底的に追い込んで調整し、音楽がある程度の音量で流れているにも関わらず、会話の邪魔はしないようなサウンドシステムを構築しました」と田中さん。
店内には、アンビエントミュージックやアコースティック、現代音楽、クラシック、個性豊かなジャズなどが流れ、訪れた人たちに至福の時間を提供する。
店名の「FUL」には、心満たすMindfulと安らぎを意味するPeacefulのメッセージが込められている。
そのネーミングの通り、まさにここは極上の癒しを与えてくれるサウンドフォレスト、心安らぐ鎮守の森なのだ。
FUL
住所:京都市中京区河原町通三条下ル大黒町67-3 フォーラム西木屋町 1F
営業時間:17:00〜27:00(フード26:00L.O.、ドリンク26:30L.O.)
定休日:月曜