恐竜の復元CGはどのように描かれているのか? つくり手が語る、制作の裏側

  • 文:小野寺佑紀
  • 編集&文:井上倫子
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図鑑に描かれている恐竜たちの姿を見て、子どもの頃に憧れを抱いた人も多いだろう。誰も見たことがない生物をビジュアル化する難しさや楽しさとはどのようなものだろうか。古生物復元画家の服部雅人に話を聞き、恐竜のビジュアル制作の現場をのぞいてみた。

Pen最新号は『恐竜、再発見』。子どもの頃に図鑑や映画を通して、恐竜に夢中になった人も多いだろう。本特集では、古生物学のトップランナーたちに話を訊くとともに、カナダの世界最高峰の恐竜博物館への取材も敢行。大人になったいまだからこそ、気付くことや見える景色もある。さあ再び、驚きに満ちた、恐竜の世界の扉を開けてみよう。

『恐竜、再発見』
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日々明らかになる姿を、テクノロジーで臨場感あふれる作品に

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カムイサウルス・ジャポニクス
全長:8m
時代:白亜紀後期
2019年に新属新種として発表、北海道むかわ町の地層から発見された。上の図は5年後に研究によってわかった環境まで描かれた作品。貝の割れ方までも研究に基づいている。© Masato Hattori

いつの時代も子どもたちを夢中にさせるのは、大迫力の恐竜のビジュアルだ。現代の子どもたちが最初に出合うその絵の多くは、CGで描かれたもの。インターネットで検索すれば、さまざまなCG画像、さらに動画も豊富にある。しかしその恐竜が「正しく描かれているか」は疑問だ。

恐竜や動物のCGを手掛ける服部雅人は、国立科学博物館やNHKなどのCGビジュアルを制作してきた、多くの研究者が信頼を寄せるクリエイターだ。

服部の原点は幼少期に観た昭和のゴジラ。しかし本格的にこの世界に飛び込むきっかけとなったのは、1993年公開の映画『ジュラック・パーク』だと言う。

「この映画を観て、ゴジラを好きだったことを思い出したのです。怪獣であるゴジラのように、それまでは恐竜はどこかファンタジーな存在でしたが、この映画で一気にリアルなものとして感じられた。これをきっかけに自分で恐竜を描くようになり、さらにCGへ興味を持ちました」

最初はアクリル絵の具で描いていたが、独学でCGソフトの使い方を学び、趣味として恐竜の画像をネットで公開するようになった。ある日、テレビ番組で服部がつくった画像を使いたいという依頼が舞い込んだ。

「喜んで使ってください、とお答えしたのですが、番組の監修者である古生物学者の方からストップがかかりました。私は当時、自分の絵のなにが問題だったのかをメールでお尋ねしました。するとていねいに研究と異なる点を指摘してくれたのです」

恐竜のビジュアル制作は“復元”でありアートではない。技術だけでなく知見がものを言う世界だ。最新の研究論文と正確な骨格図を手に入れ、制作をし、監修者からのチェックを受ける。多くの恐竜を制作していると、自ずと近しい種のこともわかってくるというが、やはり研究者との共同制作は日々学びがあると言う。

「前脚にとても詳しい先生がいたりと、専門はさまざまで一緒に仕事をすると勉強になります。なかでも北海道大学の小林快次さんたちと制作したカムイサウルスの復元画は、発見した際だけでなく、数年後に研究によってわかった環境までつくり込んだ復元画も制作しました。思い出深い作品です」

服部は画像だけでなく恐竜たちが動く動画も早くから制作している。最近はARやVRといった新たなテクノロジーを使った依頼も増えた。今後は本ではなく、ARで恐竜を学ぶというのが主流になるかもしれない。

「研究によって恐竜の姿はどんどん変化していきますし、新たな技術も登場する。復元の仕事は日々勉強と進化。大変ですが、それが楽しいんです」

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ズール・クルリヴァスタトル(左)
全長:6m
時代:白亜紀後期
皮膚がトゲ状の突起で覆われ、尻尾の先端に硬い膨らみがある鎧竜。正確性を保ちながらも、ゴルゴサウルスに尻尾で一撃をお見舞いする姿を描いた、臨場感あふれる一枚。© Masato Hattori

ゴルゴサウルス(右)
全長:9m
時代:白亜紀後期
国立科学博物館で開催された「恐竜博2023」のために制作した図。ズールと同じ地層から発見されたためライバルであったと推測。ティラノサウルスより小型な肉食恐竜だ。© Masato Hattori

恐竜の動きまで描いた、服部のCG動画

ズールに脛をぶたれたゴルゴサウルス

服部雅人(はっとり・まさと)

1990年、愛知教育大学教育学研究科芸術教育専攻修士課程修了。2005年からデジタルで制作をはじめ、さまざまな書籍の他、全国各地の博物館やテレビなどで古生物の復元CGを手掛ける。
http://masahatto2.p2.bindsite.jp/index.html

 

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