好奇心をかき立てる、 大人も満足の恐竜本14選!

  • 編集 & 文:井上倫子
  • 写真:齋藤誠一
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恐竜に関する本は子ども向けの図鑑だけではない。大人になったいまこそ、改めて読みたい本をセレクトしてみた。

Pen最新号は『恐竜、再発見』。子どもの頃に図鑑や映画を通して、恐竜に夢中になった人も多いだろう。本特集では、古生物学のトップランナーたちに話を訊くとともに、カナダの世界最高峰の恐竜博物館への取材も敢行。大人になったいまだからこそ、気付くことや見える景色もある。さあ再び、驚きに満ちた、恐竜の世界の扉を開けてみよう。

『恐竜、再発見』
Pen 2024年9月号 ¥880(税込)
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古生物学者のドラマも描かれた、読み応えある一冊

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恐竜の図鑑というと、子ども向けのものが多いが、この本は子どもから大人まで満足させる一冊だ。大胆にレイアウトされた豊富な図版や写真は子どもたちを飽きさせないし、大人にとっては恐竜に興味がなくとも、読み物として楽しめる内容になっている。

執筆者はアメリカ自然史博物館のマーク・A・ノレル。同博物館が所有する貴重な標本や記録写真で構成されている本書は、恐竜の定義や発見の歴史、基本的な生物学的情報にはじまり、以降は恐竜それぞれを紹介する構成になっている。恐竜の特徴だけでなく、発掘のエピソードや後世の研究によって変化していったことも記され、古生物学の研究者たちの人間ドラマが垣間見える。なかでも20世紀初頭に活躍した探検家で学者、ロイ・チャップマン・アンドリュースの中央アジアでの調査エピソードは非常に興味深い。

監訳は今回の特集にも登場する筑波大学助教で古生物学者の田中康平。少々値は張るが、何度でも読み返せる一冊であり、手元に置いておいて損はない本と言えるだろう。

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 『アメリカ自然史博物館 恐竜大図鑑』

マーク・A・ノレル 著/田中康平 監訳/久保美代子 訳/化学同人 ¥6,050 

恐竜のポートレート集のような、最新の美しいビジュアルが満載

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恐竜図鑑で描かれる恐竜は、全身まで描かれることが定石だ。しかしこの本は大胆にも「顔」だけに寄った絵で構成されている。グラフィックは、リアルな恐竜のイラストで定評のある、リカルド・フラピッチーニによるもの。

黒一色の背景に、最新の研究で明らかになった恐竜の頭部が描かれる。羽毛はやわらかさが伝わるほどに一本一本精密に、硬いウロコは細かに密集して描かれ、その精緻なビジュアルからは恐竜たちの質感までもが生き生きと伝わってくる。さらに恐竜の強い眼差しが、まるでいまも生きているかのようなリアルな感覚を呼び起こす。全71種の恐竜が掲載され、どのページも美しく、文章を読まなくとも楽しめる内容になっている。

解説はアメリカの古生物学者で、映画『ジュラシック・ワールド』の科学顧問やナショナル ジオグラフィックなどで執筆をするサイエンスライターのライリー・ブラックによるもの。恐竜がどのように生き、進化してきたのか、最新の研究からの情報も満載だ。

 

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『ナショナル ジオグラフィック 世界一美しい恐竜図鑑 』

ライリー・ブラック 著/福井県立恐竜博物館 監修(日本語版)/金 成希 訳/日経ナショナル ジオグラフィック/¥3,300

恐竜の理解に欠かせない骨格図を学べる、古生物学の必読書

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もっと本格的に恐竜について学んでみたい、そう思った人にお薦めしたいのが古生物学者でありイラストレーターでもあるグレゴリー・ポールによるこの恐竜事典だ。

『新・恐竜骨格図集』の著者である増川玄哉も、恐竜を知る上で欠かすことができない一冊であると言い、恐竜好きや研究者の間では知らない人はいない名著。

前半は恐竜研究の歴史を紐解くとともに、行動や成長など恐竜の生態について解説。後半は750種近くの主要な恐竜が、骨格図と合わせて学名や全長、化石が見つかった地層など細かに記された事典となっている。

美しい骨格図を眺めるだけでも十分に楽しめるが、生態学も交えて解説されているので、恐竜がどのように歩き、動いていたのかなど、より深い知識も得られる。専門用語も多くやや難解ではあるが、この一冊を読んだ後では、博物館で見る骨格標本がまた違って見えてくるに違いない。

 

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『グレゴリー・ポール恐竜事典(原著第2版)』

グレゴリー・ポール 著/東 洋一 ほか監訳、河部壮一郎ほか訳/共立出版 ¥8,250

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小説からガイドブックまで、目利きの書店員が薦める恐竜本

本のことは本のプロに聞け! ということで、日夜さまざまな書物に接する書店員に恐竜にまつわるお薦めの本を尋ねてみた。大人の知的好奇心を刺激するのはもちろん、親子で楽しめる本も多いので、子どもの夏休みの自由研究にも役立つはずだ。

ジュンク堂書店池袋本店 宮田さん

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ありそうでなかった、恐竜のガイドブック

『全国 恐竜めぐり』
ジー・ビー編集/ジー・ビー ¥1,980 

本書は恐竜博物館だけでなく、テーマパークや公園、ホテルなど、恐竜にまつわるさまざまなスポットを、「学ぶ」「探す」「遊ぶ」「楽しむ」の4つのカテゴリーに分けて紹介しているガイドブックだ。「親子でも楽しめる」と推薦してくれたのは、地下1階から9階までビル1棟を占め、専門書の品揃えが豊富なジュンク堂池袋店の宮田さんだ。

「夏休みが近いこともあり、ご家族連れがよく手に取っている印象があります。この本にはオリジナルグッズや恐竜にまつわる食べ物などの情報もあり、他の恐竜本とは違った楽しみ方ができます。大人も子どもも楽しめる、恐竜ガイドの決定版と言えるでしょう」

ーーOther Recommendationsーー

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『「もしも?」の図鑑 恐竜の飼い方』

土屋 健 著/群馬県立自然史博物館 監修/実業之日本社 ¥990


149種類の恐竜の生態を「もし飼えるなら」という視点で解説したユニークな空想科学図鑑。初心者も楽しめる内容だ。

 

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『いまさら恐竜入門』

田中康平 監修/マツダユカ 著・イラスト/丸山貴史 著 西東社 ¥1,320 


基本的な恐竜学や意外なエピソードを、4コママンガと解説文で紹介。恐竜の面白さを知ることができる入門書。

書泉グランデ 布川路子さん

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恐竜や古生物の、新たな魅力に出合える本

『学名で楽しむ恐竜・古生物』
芝原暁彦 監修/土屋 健 著/イースト・プレス ¥1,980 

恐竜や古生物学に興味を持った人なら、「なぜこんなにも覚えにくい名前なのだろう」と思ったことが一度や二度はあるはず。124種の古生物学の学名の由来を解説する本書を薦めてくれたのは、鉄道から専門書まで、ディープな本が揃う神保町の名店、書泉グランデの布川路子さんだ。

「人気のティラノサウルスは、後年の研究でマノスポンディルスと同種であることがわかり、その名に統一されそうになったとか。他にもスターウォーズにちなんだ名前だったり、興味深いエピソードが満載。学名の意味を知ることで表記だけでは伝わらない恐竜・古生物の魅力に出合える一冊です」

ーーOther Recommendationsーー

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『きょうりゅうのずかん』(コドモエのえほん) 

五十嵐美和子 作/富田京一 監修/白泉社 ¥1,210


温かいタッチが人気の絵本作家・五十嵐美和子による絵本。56種の恐竜と同時代の動物16種を掲載。

 

文喫 六本木店  中澤 佑さん

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恐竜をめぐる、コナン・ドイルの冒険譚

『失われた世界【新訳版】』(創元SF文庫) 

アーサー・コナン・ドイル 著/中原尚哉 訳/東京創元社 ¥968 

文学からアートまで約3万冊の書籍を扱い、入場料を払うと一日中店内で本が読める書店、文喫の中澤佑さんが選んだのは、アーサー・コナン・ドイルの名著だ。

「古生物が生き残っているアマゾンへの探検を描いた冒険譚です。主人公のチャレンジャー教授を、理詰めで思索的な、まるで考古学者のようなシャーロック・ホームズと対比してみるのも面白い。事件という少し前の過去へと繊細に切り込んでいくホームズと、2億4000万年前という過去から現れる恐竜に勝負を挑む主人公とは、どこか通底しているところがあるように思います。失われた世界への想像力をかき立てる一冊です」

ーーOther Recommendationsーー

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『ジュラシック・パーク 上』(ハヤカワ文庫 )

マイクル・クライトン 著/酒井昭伸 訳/早川書房 上・下各¥1,056 

1993年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の映画の原作。カオス理論や遺伝子工学など、映画でも出てきた理論がより深く物語に関わっており、本格的SF小説に仕上がっている。また物語のスケールが映画よりも大きく、映画を観た人でも先の読めない展開と好評だ。

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『大長編ドラえもん 1 のび太の恐竜』(てんとう虫コミックス)

藤子・F・不二雄 著/小学館 ¥550

のび太が発見した化石から、ピー助が誕生し白亜紀への冒険が始まる。大長編シリーズの中でも人気の作品。

代官山蔦屋書店  吉見侑悦さん

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専門知識を深めたい、そんな読者への一冊

『語源が分かる恐竜学名辞典』

小林快次・藤原慎一 監修/松田眞由美 著/北隆館 ¥9,900

他の書店にはない品揃えを誇り、遠方から訪れる人も多い代官山蔦屋書店。そんな人気書店の吉見侑悦さんが選んだのは、普通の恐竜本では満足できない人に薦めたいというマニアックな本だ。

「まず恐竜の学名辞典があることに驚きました。恐竜や古生物の語源は、フタバサウルス・スズキイ、フクイラプトル・キタダニエンシスなど、地名や発見者の名前が入ることが多いのですが、ルゴプス・プリームス(最初の、皴のある顔)のように、発見当時の特徴を名前にしていたりするものもあり、興味深いですね。辞典の要素だけでなく、合間に掲載されている読み物も楽しめると思います」

ーーOther Recommendationsーー

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『グレゴリー・ポール翼竜事典 』

グレゴリー・ポール 著/ 東 洋一ほか監訳、河部壮一郎ほか訳/共立出版 ¥6,600

今年発売された、『グレゴリー・ポール恐竜事典』の姉妹事典。翼竜に特化し、115種の精密な骨格図と復元図が掲載。

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『ディノペディア Dinopedia: 恐竜好きのためのイラスト大百科』

G. Masukawa 著/誠文堂新光社 ¥2,640

『新・恐竜骨格図集』の増川玄哉による著作。なぜ草食ではなく植物食と呼ぶのかなど、知っておきたい科学知識が満載。

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Penによる特別館内ツアーを8/23(金)に開催決定! ナイトミュージアムにご招待

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Penのオリジナル企画として、8月23日の金曜夜に、本展の特別な館内ツアーを実施。限られた当選者のために、識者によるナビゲートも予定。ぜひ、家族や友人とご応募ください。

【応募方法】
Penの公式Xアカウント(@Pen_magazine)をフォローの上、特別ツアー募集の告知投稿をリポストしてください。

応募方法と注意事項の詳細は、下記URLからご確認ください。

www.pen-online.jp/article/016499.html

【応募締切】
2024年8月4日(日)23:59
当選者の発表は、当選者へのDMによって代えさせていただきます。 
※当選通知は2024年8月中旬を予定していますが、諸事情により通知が遅れる場合がございます。

『巨大恐竜展 2024』

期間:開催中~9/13
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1 パシフィコ横浜 展示ホールA
TEL:050-5541-8600
開館時間:9時~17時(8/10〜8/18は19時まで) ※入館は閉館の30分前まで 無休
料金:一般¥2,400
www.giantdinos-ex.com

『恐竜、再発見』
Pen 2024年9月号 ¥880(税込)
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