1.CREDOR(クレドール)
50周年記念 ロコモティブ 限定モデル
ブランド誕生50周年の記念モデルで、オリジナルは1979年に発売。ジェラルド・ジェンタに日本のセイコーがデザインを依頼したことは、当時は伏せられていた。新作は六角形のフォルム、ビスで留めたベゼルなどの特徴を活かしながら、手描きのオリジナルスケッチをもとにアップデートされた。
---fadeinPager---
2.IWC(アイ・ダブリュー・シー)
インヂュニア・オートマティック 40
1955年に初代が誕生したコレクションの中でも傑作の呼び声が高い、ジンタがデザインを担当した1970年代の「インヂュニアSL」を継承。“ブレスレット一体型ステンレス・スチール製高級スポーツウォッチ”の原風景ともいえる完成されたスタイルに、5日巻きのロングパワーリザーブ性能を持つ自社製キャリバーを搭載。さらに、新設計のリューズプロテクターも装備し、現代的なハイスペックでリファインした。
---fadeinPager---
3.BVLGARI(ブルガリ)
ブルガリ・ブルガリ
1970年代に誕生した「ブルガリ・ブルガリ」もジェンタが形にした代表作のひとつであり、ブルガリのロングセラーとして現在に至る。古代ローマのコインの外周に彫り込まれた文字から採用されたダブルロゴを特徴とする、アイコニックなモデルだ。ジェンタは2000年に自らのブランド、ジェラルド・ジェンタをブルガリグループに売却し、傘下に入ったほど関係も深かった。
---fadeinPager---
不世出の時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタの再評価が著しい。本人が2011年に亡くなっているにもかかわらず、生前の代表作はいまもベストセラーを続ける。入手困難な時計の代名詞でもあるパテック フィリップの「ノーチラス」、オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」は、いずれもジェンタによるデザインの傑作だ。
もともとジュエリーデザイナーであったジェンタが腕時計デザインで頭角を現したのは、1960年代のことだ。当時絶大な人気を誇ったユニバーサル・ジュネーブの「ゴールデンシャドウ」や、オメガの「コンステレーション」で評価を高め、70年代に入ると前出の「ノーチラス」「ロイヤル オーク」、IWCの「インヂュニアSL」、そして最初の「ブルガリ・ブルガリ」が大ヒットする。
しかしこれらの傑作がジェンタのデザインであることが正式に公表されたのは、もっと後のことである。ブランドも、依頼を受けたジェンタ自身も、当時の慣習に従って、デザイナーが表に出ることを避けていた。世間が彼の才能を知るのは、自分の名前を冠したブランド、“ジェラルド・ジェンタ”が立ち上がって以降のことだ。
近年になり事情が急変し、ジェンタ作を強調することでむしろモデルの価値は高まっている。そんな中で79年に発表された幻の名作「クレドール ロコモティブ」も再登場を果たす。多角形フォルムやアイコニックなベゼルなど、“ジェンタらしさ”のデザイン文法は、時を経て解凍されてもまったく魅力を失わない。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。新著に『ロレックスが買えない。』。※この記事はPen 2024年8月号より再編集した記事です。