テラスと外階段が囲む、街に開いたシェアオフィス「12 KANDA」【今月の建築ARCHITECTURE FILE #21】

  • 文:佐藤季代
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テラスに合わせて家具を設え、室内のように過ごせる場所にした。木や金属、ガラスなど多彩な素材の使い分けで立体感を強調している。photo: Toshiyuki Yano

首都圏を中心に住宅やオフィス、ホテルなどのリノベーション事業を展開するリビタが、LDKという住まいの機能をオフィスに取り込み、新しい働き方を提案するシェアオフィスシリーズ「12」。2024年2月に、都内4号店が神田・秋葉原エリアに開業した。4駅からアクセスできる、利便性の高いオフィス街の一角に立つ。

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オフィスの面積を最大限確保するため、導線の一部を屋外化し、階段や通路、テラスがつながる印象的なファサードをつくり出した。 photo: Toshiyuki Yano

地下1階・地上10階建ての建物を担当したのは、大型商業施設やオフィスを多数手掛けるシナト。「12」シリーズ初の試みとして“食×ビジネス”をテーマに、地下1階〜地上3階までの低層階の一部を一般利用できる商業施設として開放。カフェのほか、業務用シェアキッチンを備えた小商いスペースや、テナントなどの多様な商いの場を用意する。また上階に入居するシェアオフィスは、デスク貸しから大規模な一室貸しまでさまざまなプランがあり、幅広い事業形態に対応する。多目的に使えるLDKやコモンラウンジといった充実した共有空間も魅力だ。

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オフィス利用者が共同で使える7階のLDK。「12」シリーズのコンセプトでもある、住まいの機能が11層の中に点在している。 photo: Toshiyuki Yano

こうしたバリエーション豊かな内部空間がそのままメインファサードのデザインにも引き継がれている。一般的に目立たない場所に設置されがちな避難階段を日常的に利用する動線として通りに向かって配置し、フロアごとに広さや形状の異なる屋外テラスと一体化させた。街に開いた場所が立体的に積み上がる、表情豊かなファサードを形成している。

出会いと交流を促す新しいかたちのシェアオフィス。都心の真ん中で、賑わいの風景をつくり出している。

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低層部を商業施設として計画。地下には小商いスペースやオープンなオフィス区画があり、1階にはカフェがオープンする予定だ。 photo: Toshiyuki Yano

12 KANDA

住所:東京都千代田区神田須田町2-3-12
TEL:店舗によって異なる 
開店時間:店舗によって異なる
定休日:店舗によって異なる
https://12-office.com/kanda
【設計者】sinato(シナト)
代表の大野力は金沢大学工学部卒業後、フリーランスを経て2004年にシナトを設立。JR新宿駅新南口エリアの全体環境デザインといった公共施設から、住宅のリノベーションまでさまざまな建築を手掛ける。

※この記事はPen 2024年8月号より再編集した記事です。