「大人の名品図鑑」五輪映画編 #1
今年の7月26日からフランスのパリで第33回夏季オリンピック競技大会がスタートする。この大会ではブレイキンなどの新しい競技も加わり、32競技329種目が実施され、メダル獲得を目指した熱戦が繰り広げられるだろう。今回は「オリンピックを題材した映画」に登場する名品にフォーカスを当てる。
フランスの首都パリでオリンピックが開かれるのは、1900年、1924年に続いて3回目だ。実はちょうど100年前の第8回パリ大会を舞台にした名画がある。1981年に製作された『炎のランナー』だ。第54回アカデミー賞で7部門にノミネートされ、作品賞、脚本賞、作曲賞、衣裳デザイン賞を獲得している。監督はイギリス・ロンドン出身のヒュー・ハドソンだが、この映画が初監督作品というから驚くではないか。
もちろん物語は実話に基づいている。主人公はパリ大会で陸上の短距離競技に出場した2人の若者だ。ひとりはケンブリッジ大学の学生、ハロルド・エイブラハムズ(ベン・クロス)。彼はユダヤ人の血を引いているため、言われなき差別や偏見を受けてきたが、走ることで偏見を打ち破ろうと考え、プロのコーチから指導を受けて記録を伸ばし、オリンピック制覇を目論む。しかし、大学の寮長たちからはコーチにプロを雇うことはアマチュアリズムに反すると非難される。
もうひとりの主人公はスコットランドの宣教師の家に生まれたエリック・リデル(イアン・チャールソン)。エリックにとって走ることは信仰と同義であり、勝つことは神の恩寵を示すことであったが、出場予定の100mの予選は神が定めた安息日の日曜日に行われるため、予選を棄権すしようと考える。その決断に英国のオリンピック委員会の要人たちは、祖国と国王への忠誠のために出場するべきだとエリックに迫る。はたして2人はパリオリンピックに出場し、金メダルを獲得することができるのだろうか……。
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1920年代のジェントルマンスタイルを完全再現
この映画でアメリカと英国の両国でアカデミー衣裳デザイン賞を獲得したのが、イタリア出身のミレーナ・カノネロだ。『時計じかけのオレンジ』(71年)、『バリー・リンドン』(75年)、『ゴッドファーザーPARTⅢ』(90年)、『マリー・アントワネット』(06年)、『グランド・ブダペスト・ホテル』(14年)などの衣裳を手がけ、本作品を含めて4度もアメリカのアカデミー衣裳デザイン賞を受賞している。
彼女が『炎のランナー』で再現したのは、見事なまでの1920年代の英国のジェントルマンスタイルだ。しかもケンブリッジ大学でのカレッジスタイルから、ツイードなどの素材を使ったブリティッシュスーツ、完璧なフォーマルスタイルまで、英国王道のメンズスタイルが堪能できる作品。「まず20年代の古い衣裳を探すことから始めました。そして縫製、パッドの細部を研究。いちばん苦心したのは素材です。なにしろ当時のものと現在のものでは、同じツイードでも厚さがまったく違うのですから。結局、古着を縫い直すことで20年代の男の衣裳らしさを出すことにしました」と、82年の日本公開時に作成された映画のパンフレットにミレーナの言葉が掲載されている。
そんな英国スタイルを満喫できる『炎のランナー』から今回取り上げたのが、ハロルドが過ごしたケンブリッジ大学の場面で多くの学生たちが着ていたストライプ柄のブレザーだ。いかにも英国的な香りがするアイテムで、英国伝統のボートレース「ヘンリー・ロイヤル・レガッタ」など英国スポーツではいまでも欠かせないブレザーだ。しかしこの種のブレザーを日本で見つけるのは簡単なことではない。今回紹介する東京・銀座にあるスローン レンジャー トウキョウでは、このブレザーを英国のようにビスポークで仕立てることができる。1881年創業で、英国の老舗ビスポークテーラーにも生地を供給しているベイトマン・オグデンのストライプ生地の見本の中から好みの柄を選んで、ジャストサイズでブレザーをつくることができるのだ。
この名画を観れば、あるいはこのストライプ柄のブレザーを見れば、英国のジェントルマンスタイルがいつの時代も決して色褪せるものではないことがわかるだろう。
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スローン レンジャー トウキョウ
住所:東京都中央区銀座1丁目9−8 奥野ビル 403
TEL: 03-6263-2230
営業時間:12時〜19時
定休日:火、水
※予約優先
sloanerangertokyo.com
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