食事中の観光客に“水鉄砲”で攻撃…過熱する反ツーリズム抗議デモの実態 スペイン

  • 文:大村朱里
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Shutterstock-CHUCHAT TREEPRAPHAKORN ※写真はイメージです

この夏、スペインへの旅行を考えているなら、雨具をパッキングする必要があるかもしれないーーー。スペイン・バルセロナで7月上旬、約2,800人の参加者による大規模な反ツーリズムの抗議デモが開催。一部の参加者がレストランで食事をする観光客へ水鉄砲で攻撃するなど、街全体が大混乱に陥った。

今回行われたデモの一番の被害者は、人気観光地・ラ・バルセロネータ地区のレストランで食事をしていた観光客だろう。一部のデモ隊から水鉄砲で水を浴びせられ、食事を台無しにされた上にずぶ濡れになっていた。

SNSに投稿された映像には、女性たちが小さなおもちゃの水鉄砲をレストランのテラス席に座る観光客に向け、水をかけている。中には、楽しんでいるのか笑顔で何度も水を浴びせる参加者の姿も見られ、観光客は荷物をまとめ店内へ移動する様子が映されていた。また、観光地中心部では、約2,800人の参加者たちが道いっぱいに広がり「観光客は帰れ!」「バルセロナはディズニーランドではない」などと書かれたポスターを掲げ行進した。

「街は完全に観光客向けになってしまった」と住民

「観光に反対はしないが、バルセロナは観光客が増えすぎて住みにくくなっている」とデモ隊の参加者は通信社AFPに語った。

世界遺産サグラダ・ファミリア教会などの建築家アントニ・ガウディの作品群が見られる「アートの街」や、ナイトライフが栄える観光地として絶大な人気を誇るバルセロナ。スペインの国家統計局INEによると、2024年の5月までに3300万人以上の観光客が同国を訪れ、前年比13.6%増と年々観光客の数が増加しているという。これらのオーバーツーリズムは、市民の暮らしに大きな影響をもたらしている。バルセロナでは過去10年間で住宅費が68%も上昇。その他にも、住宅不足や中心部の過密、生活費に対する様々な問題により住民の怒りはついに爆発した。

「ここ数年、街は完全に観光客向けになってしまった。我々が望むのは、観光客向けではなく、市民のための街だ」と参加者はロイター誌に語っている。

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バルセロナだけじゃない、各地で問題視されるオーバーツーリズム

観光産業が地元住民に与える影響に頭を悩ませているのは、バルセロナだけではない。スペイン南部のマラガでは、6月に約1万5000人が過剰観光に反対する集会を開き、パルマ・デ・マリョルカ島では5月に1万人以上がオーバーツーリズムに反対するデモ行進を行った。また2024年1月、イタリア・ベネチアは観光客に料金を課す最初の都市となった。

スペイン政府の新たな動きとは?

連日続くデモ活動を受けスペイン政府は先日、短期賃貸や季節休暇の賃貸の取り締まりを発表。AirbnbやBooking.comなどのプラットフォームに掲載される物件はライセンスを取得する必要があり、政府はライセンスを取得しているかどうかの調査を強化するという。また、バルセロナのジャウマ・コルボニ市長は2028年11月までに、現在短期賃貸として認可されている10,101戸のアパートの免許を取り消し、観光客に家を貸すことを禁止する計画を発表している。

いよいよ夏休みシーズンが到来し、さらなる観光客の増加が懸念されるスペイン。また日本でも連日、観光客による問題がニュースに取り上げられるなど、各地でオーバーツーリズムが問題視されている。各国の柔軟な対応が求められるだろう。

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【動画】水鉄砲で地元住民が観光客を攻撃、バルセロナでのデモの様子。

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【動画】レストランで水鉄砲の襲撃にあった観光客は、苦笑いを浮かべていた。

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【動画】周りを地元住民たちに完全包囲された観光客。

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【画像】町中の至る所に観光客へ苦情の落書きが。中には記念撮影をする人も。

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【画像】「観光客は家に帰れ」という落書き。