NewJeansとaespa、いま最も勢いのあるK-POPガールズグループを徹底比較!

  • 文:soulitude
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いまのK-POPシーンを代表するトップガールズグループ、NewJeansとaespaが相次いで日本に進出した。両グループはともに2020年代にデビューした、いわゆる「第4世代ガールズグループ」の代表格であり、日本進出直前の5月にも韓国でほぼ同時にカムバックして1位を争った。興味深いのは、この時代を象徴する2つのK-POPガールズグループのコンセプトがどちらも「レトロ」に深く関連していながらも、個性が全く異なることだ。この違いは音楽性はもちろん、ファッション、ビジュアル、世界観、活動方向全般に渡って現れる。本記事では、この2つのガールズグループの違いについて論じてみたい。

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NewJeans?

左からダニエル、ヘイン、ヘリン、ミンジ、ハニ。

6月21日に日本デビューしたNewJeansは、韓国出身のミンジ、ヘリン、ヘインと、オーストラリア出身のハニ、ダニエルの5人で構成されたK-POPガールズグループである。2022年にHYBE傘下のレーベル、ADORからデビューし、最初のアルバムから斬新なコンセプトと高い音楽性で韓国国内チャート1位はもちろん、ビルボード「Hot 100」にもランクインした。これまでにリリースしたすべてのアルバムがミリオンセラーを達成するなど、爆発的な人気を誇っている。先月26日、27日に開催されたファンミーティングでは、海外アーティストとしては史上最短となる、デビューからわずか1年11ヶ月で東京ドーム公演を果たし話題となった。

aespa?

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左からウィンター、ジゼル、カリナ、ニンニン。 Ron Adar -Shutterstock

7月3日に日本デビューしたaespaは、韓国人のカリナとウィンター、日本人のジゼル、そして中国人のニンニンの4人からなる。2020年、東方神起やSHINee(シャイニー)を擁するSMエンターテインメントからデビューし、デビュー初年度に韓国大衆音楽賞をはじめとする主要授賞式で新人賞と大賞を総なめにした。2023年には3rdミニアルバム『MY WORLD』で初週販売量169万枚を突破し、歴代ガールズグループ最高記録を更新。同年、11カ国を巡るワールドツアーを成功させ、グローバルな人気を証明した。7月の日本デビュー後、日本アリーナツアーを皮切りに2回目のワールドツアーを予定している。

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温かく懐かしい vs 鋭く強烈

NewJeans「How Sweet」(2024.5.24配信)

音楽性は両グループの最大の違いであり、その音楽性の違いが他のすべての違いの根幹となっている。NewJeansの音楽は、爽やかなデビュー曲「Attention」から韓国大衆音楽賞「今年の歌」に輝いた「Ditto」、そして日本進出直前に発表した「How Sweet」まで、ほとんどが気軽に聴けるイージーリスニング系だ。ジャージークラブなど最新のジャンルを基盤に、懐かしいレトロ感性のメロディと叙情的な歌詞を調和させ、幅広い世代が共感して楽しめるNewJeansならではの音楽を披露している。ステージ上でも明るく自然な姿を見せ、衣装もウェアラブルなスタイリングを追求している。

aespa「Supernova」(2024.5.13配信)

一方、aespaはデビュー曲「Black Mamba」から代表曲「Next Level」、そして最近、韓国国内外のチャートを席巻した「Supernova」まで、強烈なシンセサイザーサウンド、強いベース、独特のリズム、パワフルなラップといった特徴的な音楽性を持っている。韓国では、ポップな傾向の流行とは対照的である、この独特な音楽性を説明するため、金属のような味が感じられる音楽という意味で「鉄味(쇠맛・スェマッ)」という新語まで生まれた。さらに、仮想現実「KWANGYA(クァンヤ)」と現実を結ぶ「SMCU(SM Culture Universe)※」の世界観を込めたユニークな歌詞が音楽の味わいを深めている。ステージでもその世界観に合わせたダンスとカリスマ的なパフォーマンスを披露し、独自の領域を確立している。

※SMCU(SM Culture Universe):現実世界と仮想世界の境界を超えて全世界が文化で繋がるという、SMエンターテインメントが提唱する未来のエンターテイメント、メタバース向けコンテンツ。

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レトロトピア vs レトロフューチャリズム

NewJeans「Ditto」(2022.12.19配信)

5人の少女たちの純粋な笑顔と温かい音楽は、私たちをどこか懐かしい場所へ連れて行く。実際、NewJeansのメンバー全員が2004年以降生まれたことを考えると、彼女たちが1980〜90年代のアナログ時代やY2Kを経験したわけはない。NewJeansが連れて行く場所は、1980〜2000年代が混在する架空の「懐かしいどこか」だ。専用コミュニケーションアプリ「Phoning」のデザインはY2Kそのものであり、「Ditto」のミュージックビデオは1998年という設定でアナログカムコーダーを使用し、その時代感覚を表す。このように、NewJeansは誰もが懐かしむような「レトロトピア(レトロ+ユートピア)」を創り出し、架空の過去への懐かしさを感じさせる。

aespa「Next Level」(2021.5.17配信)

一方、aespaは完全に未来的なビジュアルを披露する。しかし、その未来というのも実際の未来ではない。むしろ1980〜90年代のSF映画などで想像され、描かれた「過去の未来」、すなわち「レトロフューチャリズム」に近い。「鉄味」の音楽性はデジタル空間を背景にしたサイバーパンクスタイルの「Black Mamba」や「Next Level」のミュージックビデオのビジュアルと完璧に調和し、インダストリアルなロケーションに大量のCGIを投下して完成した「Armageddon(アルマゲドン)」に至っては、その頂点に達する。また、これらすべてのコンテンツは「SMCU」という緻密に設定された仮想の世界観の中で展開されるということも独特だ。

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‘Supernatural’ vs ‘Hot Mess’

NewJeans「Supernatural」(2024.6.21配信)

NewJeansの日本デビューシングル「Supernatural」には、NewJeansがいままで追求してきた方向性のすべてが凝縮されている。「Supernatural」はファレル・ウィリアムスが2009年にプロデュースした「Back of My Mind」をサンプリングし、1980〜90年代に流行したニュージャックスウィングを取り入れた楽曲で、振付もオールドスクールニュージャックスウィングスタイルで構成されている。それにNewJeans特有のメロウなメロディが加わると、私たちは存在しなかったかもしれない、懐かしいある夜の東京へと導かれる。藤原ヒロシとのコラボもその延長線上にある。まだ彼女たちが生まれてもいなかった1990年代の裏原のストリートファッションを着こなし、それが流行した時代への漠然とした郷愁を呼び起こすのだ。つまり、「Supernatural」はNewJeansが日本に作り出したもうひとつの「レトロトピア」を体現している。

aespa「Hot Mess」(2024.7.3配信)

aespaの日本デビューシングル「Hot Mess」は、拡張された「SMCU」の世界観に日本のサブカルチャー要素を組み合わせて完成した作品だ。強烈なシンセサウンドからスタイリッシュなラップまで、独特な音楽性やサイバーパンク的なビジュアルコンセプトは健在だ。興味深いのは、ガンダムを思い起こさせるメカニックピースや、魔法少女の変身シーンなど、日本のアニメや特撮物と関連する要素を多く取り入れていることだ。これを日本現地のオタクを攻略するためだと言う人もいるが、それは非常に一面的な解釈に過ぎない。aespaが最近リリースした1stフルアルバム『Armageddon』で多元宇宙に拡張された「世界観シーズン2」の始まりを告げていることから、このミュージックビデオに登場するのは、多元宇宙に様々な形で存在するaespaたちだと言えるだろう。つまり、aespaは独自の世界観の展開に、現地ファンにもアピールする要素を活用すると言う巧妙な選択をしたのだ。

このように、NewJeansとaespaは全く異なる強みと方向性を持ちながら、韓国を超えて日本、さらに全世界で活躍を広げている。彼女たちの音楽とコンセプトは、単にヒット曲を楽しむ以上に興味深い点が多い。今後の活動にも注目してみるといいだろう。

soulitude

日韓の大衆音楽事情を専門とするライター。日韓の音楽にまつわる記事の執筆やキュレーションなど、コンテンツ制作を行う。2022年から韓国大衆音楽賞とKorean Hiphop Awardsの審査員を務める。