スニーカーの流行にはメーカー側の仕掛けがあるものです。
その大成功例が約10年前のアディダスの「スタンスミス」。
日本ではアイビー以降のトラッドにおける定番テニスシューズだったものです。
アディダスは2012年にスタンスミスの販売を一旦休止しました。
「どうなったんだ?」と従来のファンをやきもきさせ、市場の飢餓を煽りつつ2年後の14年にモードな打ち出しでリブランディング。
フランスではセレクトショップのコレット別注モデルを、日本ではドーバー ストリート マーケット ギンザ限定モデルをまずローンチして、「お洒落界のトップが認める超クールなスニーカー」というイメージを創造。
スニーカーマニアでない女性層、モード層もガッツリと取り込み大ブレイクさせました。
昔ながらのファンも、「いまスタンスミスが熱いらしい」と盛り上がって。
見事でしたね、このときの一連の流れは。
ファッションメディアに携わる者として「仕掛けとはこうやるんだな」と勉強になりました。
現在の各ブランドが必死にアピールする「人気セレブが着用しました」のSNS宣伝が生まれる前の時代。
個人発信に勢いがあるいまは、大手スポーツメーカーが大ヒットを生むのが難しいようです。
ファッションのハイブランドのように、刺激的な(スマホ映えする)デザインを次々に出せる人たちが強いのでしょう。
「高価格=ブランド価値」という社会通念が彼らに有利に働きますし。
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ここで現在に目を戻しますと、いまアディダスが猛プッシュしているのが「サンバ」。
1990年代にほぼ形が定まったクラシックなサッカーシューズ。
スタンスミスをはじめ「カントリー」「スーパースター」らと並ぶローテクな定番。
メーカーの狙い通りに若い層の食いつきがいいようですね。
それでは今回の主役であるプーマは?
アディダスとも分野が共通する、サッカー&レトロコート系(競技場シューズ)の「パレルモ」が、2024-25年秋冬に打ち出されます。
近ごろよく耳にするファッション用語の「ブロークコア(Blokecore)」とは、サッカージャージなどを着るスポーツミックスの服装のこと。
90年代のイギリスでサッカーの試合に集まった人たちのようなスタイルです。
現代の男性は古着のアンブロのシャツ(サッカーユニファーム)を着て、女性は韓国ガールズグループのようにスポーツ系をカッコよく着る。
このブロークコアと結びつくのがプーマの目指す着地点のようです。
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色展開が豊富ななかで、わたしが入手したのがここに掲載しているブルー×オレンジの鮮やかなバイカラーモデル。
足に馴染むオールレザー(アッパーもサイドも本革)の1足です。
なかなかカッコよくないですか!?
横のアイコンラインに被さるトゥキャップ、ロゴプリントのタブがデザインの特徴。
同じプーマのクラシック定番「スエード」「クラウド」と印象が近いです。
少しジャーマントレーナーっぽいかな?
スエード、クラウドはトゥキャップがありませんから、プーマファンから見れば全然違うのでしょう。
プーマの今年秋冬のラインナップでは、パレルモのバリエーションが大きく広がります。
ファッションブランドやビデオゲーム(!)とのコラボやスケーター用モデルなど、素材も大胆に変えて続々と登場。
トレンドに敏感な人はチェックして損ナシの楽しさです。
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気になる履き心地は、見た目通りのローファイな味わい。
ただプーマはレトロモデルに限らず全般的に、クッション力と反発力があり歩き疲れが少ないと思ってます。
20年近く前にファッションデザイナーの故アレキサンダー・マックイーンとコラボしたシリーズも抜群に履き心地がよく、その機能性ゆえに何足も買い足したほどでした。
わたしと同様にプーマを信頼している人は多いでしょうが、木型が細めだからか足に合わない人もいるようです。
万人向けではなさそうなのでご留意を。
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現在のスニーカー市場では、アシックスやサロモンに代表される派手なハイテク系も大人気ですね。
わたしもファッション気分はそちらに傾いているのですが、定番レトロシューズは時が過ぎても流行遅れにならない永遠性があります。
着る服の色が地味になる秋冬にこそ、パレルモをポップなアクセントとして活用するつもりです。
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ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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