『ハリー・ポッター』初版の表紙絵が3億円で落札! 描いたのは書店員の青年

  • 文:大村朱里
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Shutterstock-Real_life_photo ※写真はイメージです

世界的ベストセラー小説『ハリー・ポッター』初版の表紙イラストが、オークションで192万ドル(約3億円)で落札。当時、イギリスの美術学校を卒業したばかりだった23歳の少年が描いたイラストは、ハリー・ポッターのシリーズに関連する“最も高価な品”となったーー。

子ども向けの書店で働く23歳の少年が描いたイラスト

「額に稲妻の傷跡を持つメガネをかけた魔法使い」と聞くと、多くの人が同じ少年を思い浮かべるのではないだろうか。第一作『ハリー・ポッターと賢者の石』の初版表紙は、そんなハリーのイメージを広く世に知らしめた。

このイメージの元となったイラストが描かれたのは1997年。表紙を制作したのは、画家のトーマス・テイラーさん。当時、23歳だった彼は、イギリスの美術学校を卒業したばかりで、イギリスのケンブリッジにある子ども向けの書店で働く店員だったという。イラストは若き魔法使いハリーがキングス・クロス駅の9と4分の3番線ホームからホグワーツに向かう様子を描いたもの。水彩絵の具と輪郭に黒い鉛筆を使ったこのイラストは、完成までに2日かかったそうだ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、彼の初めてのプロとしての仕事で当時の報酬はわずか500ポンド(現在のレートで約15万円)だったという。

また、テイラーさんは、ハリー・ポッター第1作の原稿を世界で最も早く読んだ一人。「ハリー・ポッターをどうビジュアル化するかは、彼次第だったのです」とオークションハウスの書籍専門家、カリカ・サンズさんはAFP通信にこう語った。

約3億円で落札「ハリー・ポッター関連で過去最高の予想額だった」

イラストはニューヨークの世界最古の国際競売会「サザビーズ」で他の英米文学作品とともにオークションにかけられた。原画は当初、40万~60万ドル(約6400万~9600万円)で落札されると予想されており、サザビーズによるとハリー・ポッター関連品の中で過去最高の予想額だったという。

現在、絵本作家兼イラストレーターとして活躍するテイラーさんは、声明の中でオークションに対して「私のキャリアの出発点となった絵を、数十年経った今も変わらず輝いている状態で見ることができ、わくわくしています。今日、自分の物語を書いたり絵を描いたりする中で、このような不思議な始まりを振り返ることができることを誇りに思います」とコメント。

さらに表紙を制作した画家のトーマスさんは、「当時JKローリングは私と同じくらい無名だったんだよ」と語っていた。

最近、彼らに「世界で最も有名な本の表紙イラストを担当するプレッシャーにどうやって耐えたのか」多くの人からそんな疑問が寄せられるそうだ。これらの質問に対し、テイラーさんも「当時JKローリング(ハリーポッター作者)は私と同じくらい無名だったんだよ」と回答した。

サザビーズによれば、ハリー・ポッターの初版はわずか500部しか印刷されず、そのうち300部は図書館に送られ、誰も世界的な現象になるとは予想していなかったという。しかし、この本はすぐに大ベストセラーに。それから約27年後、7冊の原作本に大ヒット映画シリーズ、絶賛された舞台劇、ビデオゲームと大きな成功を納めた。本は80カ国語で5億部以上売れたそうだ。

また、アメリカのWarner Bros. DiscoveryはHBO Maxにおいて、ハリー・ポッターのリブートを制作することを発表している。2026年にテレビドラマシリーズを放送する予定だ。

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【画像】3億円で落札! 『ハリー・ポッターと賢者の石』の初版表紙のイラスト。

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【画像】『ハリー・ポッターと賢者の石』の初版表紙のもととなった、手書きイラスト。

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【画像】現在のトーマスさん。