眼球をハチに刺された男性の「腫れ方が怖すぎる…」と話題に 凄絶体験を医学雑誌が紹介

  • 文:山川真智子
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sunnychicka-Shutterstock ※画像はイメージです

医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』が眼球を直接ハチに刺されるという、非常にまれな事例の報告を掲載した。添付された画像の中の目は痛々しい限りで、ハチ刺されの怖さをまざまざと感じさせるものとなっている。

散歩中にハチが目に…2日後に悪化

眼球をハチに刺されたのは、フィラデルフィアに住む55歳の男性だ。散歩中の出来事で、右目を刺されたという。男性は、すぐに病院の救急外来を受診。そこで医師がハチの針を取り除き、男性は帰宅した。

ところが刺されてから2日後に、男性の視力は著しく低下。右目の痛みも悪化していたため、眼科の専門医を受診した。医師たちが右目を検査したところ、眼球は腫れ上がり、炎症を起こして充血していたという。虹彩(眼球の色が付いている部分で瞳孔より外側のところ)の底に血が溜まっているのも確認された。

男性は強い痛みを訴えており、簡単な検査の結果、視力は指を数えるのがやっとの状態まで悪化していることが判明した。

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角膜を染色してチェック 針の一部を発見!

そこで医師たちは、蛍光塗料を使って炎症を起こしている目の角膜を染色した。その後、スリットランプと呼ばれる明るい光を当てる顕微鏡を使って男性の眼球を検査。その結果、虹彩と強膜(白目)の境目に鋭い針片があることを突き止めたという。

医師たちは、眼科専用のマイクロ鉗子でこの針片を引き抜き、抗菌剤とステロイドの点眼薬を処方した。男性の状態はすぐには改善しなかったが、5か月後の追跡調査では、視力は0.8まで回復していたという。

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恐るべきハチの力! 不運としか言いようがない…

米国眼科学会の専門家は、今回のようなケースで緊急に診察を受けなければ、目の健康と視覚機能に壊滅的な打撃を与える可能性があると、科学系サイト、サイエンス・アラートに話している。

ハチの針は有刺鉄線のようになっており。眼球の組織を切り裂くことができるそうだ。さらに毒も放出し、眼球のゲル状の部分に深く浸透して眼球の裏側を毒にさらし、免疫反応を引き起こす。また針を引きちぎったりすると、ハチの腹部の一部も目の中に入る可能性もあるという。

今回の男性が、どのようにして眼球を刺されてしまったのか詳細は不明だ。このような事故は極めてまれで、科学的文献に発表された症例は数例しかないという。男性は信じられないほど不運だったが、回復したのは不幸中の幸いと言えそうだ。

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炎症で腫れ上がった男性の目。矢印が残っていた針片。

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写真右上Bが取り出した針片。右下Cが拡大したもの。