現代アートの上質コレクション650点が揃う、渋谷に誕生した新美術館「UESHIMA MUSEUM」とは?

  • 写真・文:中島良平
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2階展示より。左:ルイーズ・ブルジョワ×トレイシー・エミン『Just Hanging (no.11 of 16, from the series, Do Not Abandon Me)』(2009-2010年)、右:トレイシー・エミン『It's what I'd like to be』(1999年)。

東京・渋谷の渋谷教育学園内ブリティッシュ・スクール・イン東京の跡地に、この6月にオープンした「UESHIMA MUSEUM」。東京大学工学部在学中に起業して以来、幅広い分野で活動する事業家で投資家の植島幹九郎が館長を務める。植島が2022年から収集を開始した、650点を超える現代美術コレクション(2024年6月現在)を公開する館として計画された。

素晴らしい作品は、世界中の人々と共有したい

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1階展示より、名和晃平『PixCell - Deer #40』(2015年)。入口奥の壁面に設置され、来館者が最初に出合う作品だ。

2022年におよそ500点、2023年に150点ほどの作品を購入し、現在もコレクションは拡大を続けている。植島が現代アートに興味を持つきっかけとなったのは、2016年にニューヨークで訪れたMarian Goodman Galleryで見たゲルハルト・リヒターの作品だという。「まだ買えない。でも買いたい」という思いが高まり、満を持して2022年より本格的に作品のコレクションを開始。以後、「同時代性」を軸に、圧巻の勢いで蒐集を進めた。植島は次のように話す。

「コレクションを始めた頃に、アーティストやギャラリーの方と話すと、作品は購入されたけど、公開されることも飾られることもなく倉庫で眠ったままであったり、そのまま売られてしまったりするなど、所在がわからなくなってしまうことも多くあると聞きました。その状況に違和感を感じますし、素晴らしい美術作品は世界中の人々と共有したい。そのような思いもあり、蒐集を始めた当初から、作品を購入したらプロのカメラマンに撮ってもらい、キャプションを添えてコレクションのホームページとインスタグラムで公開してきました」

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地下1階展示より、ゲルハルト・リヒター『Abstrakte Skizze (Abstract Sketch)』(1991年)。
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地下1階展示より、手前の立体作品はアニー・モリス『Stack 7, Ultramarine Blue』(2018年)。奥は左から、ローレン・クイン『Hammerhead』(2023年)、『Third Belly』(2021-2022年)

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教育や研究に関わるミュージアムに

母校である渋谷教育学園に併設されたブリティッシュ・スクール・イン東京が麻布台ヒルズに移転することを知った植島は、学長に相談した。文化と教育を担ってきたこの建物をリノベーションし、引き続き文化と教育に関連する機関である美術館にできないかと。学長は提案を快諾。植島は自身のコレクションをただ公開するのではなく、教育や研究とも関わりを持つミュージアムであることにこだわった。

「渋谷教育学園の敷地内にありますから、当然ながら授業で積極的に利用していただきたいですし、同学園に限らず、多くの学校に対話型鑑賞などさまざまな鑑賞体験を提供していきたいです。しかし鑑賞体験は、教育の観点から考えてあくまでも入口です。たとえば、キュレーションする機会が得られない若手のキュレーターは非常に多いので、空間と作品を活用し、キュレーションを考えていただける機会を設けていきたいですし、そこから新たな学習も生まれるはずだと考えています」

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2階展示より、左から村上隆『untitled』(2016年)、村上隆×ヴァージル・アブロー『Bernini DOB: Carmine Pink and Black』(2018年)。2階は複数の展示室に分かれ、10名以上の作家の作品を楽しめる。

若手作家の発表の場をつくる構想も

オープニング展にラインアップされているのは、ジャンルも世代も多様だが、あくまでも「売れている」作家。話題性を考えれば当然だが、実際には、植島は美術大学の卒業展などにも足を運び、まだ知られていない若手作家の作品も購入を続けているそうだ。そういった若手作家に発表の場をつくることも視野に入れており、そこにも教育的な目線や複数の角度から社会と関わっていく姿勢が感じられる。

「美術館を名乗るのですから、永続性を持って運営することが非常に重要です。そのためには事業をさらに発展させ、コレクションを拡大し、プログラムも充実させていきたいです」

渋谷のど真ん中に生まれたUESHIMA MUSEUM。まずは足を運び、圧巻の現代アートコレクションを楽しんでほしい。その計り知れぬポテンシャルにゾクゾクするはずだ。

 

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2階展示より、オラファー・エリアソン『Eye See You』(2006年)。「2006年にロンドンのテートモダンで発表されたこの作品の前では、光によって肌の色の違いが消えてしまいます」と、作品横で説明する館長の植島幹九郎。

 

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3階展示より、左から今津景『Drowsiness』(2022年)、『Mermaid of Banda Sea』(2024年)。

 

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階段の壁にはフロアごとに杉本博司の作品を展示。杉本博司『Einstein Tower』(2000年)。
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4階展示より、宮島達男『Counter Fragile Np.4』(2004年)。

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渋谷駅から徒歩10分ほどの場所に位置するUESHIMA MUSEUM。

『UESHIMA MUSEUM オープニング展』

開催期間:開催中〜2024年12月31日(火)終了予定
開催場所:UESHIMA MUSEUM
東京都渋谷区渋谷1-21-18 渋谷教育学園 植島タワー
開館時間:11時〜17時 ※最終入場16時
休館日:月・祝
入館料:一般 ¥1,500
※事前予約制
※3F、4Fは土・日のみ公開
https://ueshima-museum.com/launch


出品作家:ゲルハルト・リヒター、ジャデ・ファドジュティミ、カタリーナ・グロッセ、オスカー・ムリーリョ、ミシェック・マザンヴ、ローレン・クイン、イケムラ・レイコ、ベルナール・フリズ、アニー・モリス、名和晃平、ニコラス・パーティー、ミカ・タジマ、岡崎乾二郎、ライアン・ガンダー、オラファー・エリアソン、池田亮司、トーマス・ルフ、アンドレアス・グルスキー、teamLab、塩田千春、シアスター・ゲーツ、杉本博司、村上隆、ヴァージル・アブロー、ルイーズ・ブルジョワ、トレイシー・エミン、ダン・フレイヴィン、今津景、今井麗、近藤亜樹、津上みゆき、工藤麻紀子、さわひらき、宮永愛子、三嶋りつ惠、宮島達男、松本陽子