34の“トリオ”を比較する、3都市の美術館コレクション

  • 文:河内タカ(アートライター)
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1_モデルたちのパワー アンリ・マティス《椅子にもたれるオダリスク》1928年、パリ市立近代美術館.jpg
アンリ・マティス『椅子にもたれるオダリスク』1928年、パリ市立近代美術館 photo: Paris Musées/Musée d’Art Moderne de Paris (トリオ、テーマ<モデルたちのパワー>より

美術館といっても実にいろいろなタイプがあるが、おもにモダンアートの収集で知られるパリ、東京、大阪の三都市の美術館コレクションを比べ合うというのが本展だ。ありそうでなかった企画であるが、それぞれの都市ならではのコレクションが一堂に会するのが醍醐味だ。タイトルの「TRIO」は3つの美術館のことを指すが、それに加えてなにかが共通する3点を比較して展示するという意図もある。たとえば、パリ市立近代美術館所蔵のアンリ・マティス『椅子にもたれるオダリスク』、東京国立近代美術館所蔵の萬鉄五郎『裸体美人』(展示期間:~7/21、8/9~25)、大阪中之島美術館所蔵のアメデオ・モディリアーニ『髪をほどいた横たわる裸婦』の「くつろいで寝そべる女性」を比較するというもの。それぞれが片手を頭部に添えたポーズを取ってはいるものの、半裸、全裸、着衣と異なり、顔の表情も妖艶であったり穏やかであったりと、なるほど見比べてこその面白さと発見がありそうだ。

20世紀初頭から現代までのジャンルも異なる作品から組まれた34のトリオの共通点と相違点は実にさまざまだ。バスキアと佐伯祐三のストリートアート対決といった絵画セクションのほかに、彫刻、版画、素描、写真、デザイン、映像など幅広く総勢110名の作家が集結する。個人的には日仏の写真の比較が楽しみで、石内都、高梨豊、東松照明、奈良原一高、畠山直哉、森村泰昌という錚々たる顔ぶれに、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ロベール・ドワノー、ブラッサイ、サビーヌ・ヴァイス、マルク・リブーらパリの巨匠たちが、どの作品でいかに比較されるのかが興味をそそられるところだ。テーマやコンセプトに応じて7つの章に分け、新たな見方や魅力を紹介するこの意欲的な展覧会をお見逃しなく。

『TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション』

開催期間:~8/25
会場:東京国立近代美術館
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~17時(金曜と土曜は20時まで) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(7/15、8/12は開館)、7/16、8/13
料金:一般¥2,200
https://art.nikkei.com/trio
※一部作品は展示替えあり。9/14~12/8に大阪中之島美術館へ巡回予定
※この記事はPen 2024年8月号より再編集した記事です。