機材やサービスが進化しているように、空の玄関口も旅行者に優しく、多様な進化を遂げている。評判の世界4空港を取材した。第二回は、北欧フィンランドのハブ空港である、ヘルシンキ・ヴァンダー国際空港の、自然と調和した空港ターミナルについて。
Pen最新号は『エアライン 最新案内』。2020年のパンデミックによって、エアラインを取り巻く環境が大きく変わった。リモートが普及し、CO2削減が人々に浸透した現在、円安を考慮しても航空券価格は世界的に高騰している。最新ビジネスクラスは、以前のファーストクラスのようなサービスや価格へと変化し、安いが不便だったLCCは、「ちょうどいい」ハイブリッドエアラインへと進化する。エアラインの最新を知れば、新しい時代の旅が見えてくる。
『エアライン最新案内』
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森林に覆われた国にふさわしい、木材が使用された天井
フィンランドを旅すると森の近さと存在の強さに驚く。日本のように標高が高い場所に森が残っているのではなく、人が暮らす場所と同じ標高に森が広がっているのだ。国土のおよそ70%を森林が占め、行政が木造建築を推進するこの国では、モダニズムに木のぬくもりを纏わせた傑作の建築や家具が数多く生まれている。巨匠アルヴァ・アアルトをはじめ、多くの名建築家、デザイナーを輩出するフィンランドでは、公共建築にもその精神が息づいている。
世界一の公共図書館と称されたヘルシンキ中央図書館「Oodi」を設計したフィンランドの設計事務所「ALA Architects」によって手掛けられたヘルシンキ・ヴァンター空港は、2023年にリニューアル。空港の出発ロビーに入ると、ヨーロッパのハブ空港にしてはコンパクトといえるスケールながら、ダイナミックに表現された天井のデザインに目を奪われる。
おおらかな曲面を描く、美しい木の天井は外部の軒とも連続していて、大空間のダイナミズムがありながらも、フィンランドらしさといえる落ち着ける雰囲気をつくりだしている。天井の素材にはフィンランド産トウヒの集成材を用いていて、折り重なるように波打つ等高線を模した木の板が生みだす空間は、フィンランドのたおやかで豊かな自然風景そのもののような印象だ。
ヘルシンキ到着時に旅人を迎えてくれるのは、地階に位置する到着ロビーの庭園のようなスペース。生きた樹木と植物、苔むした石でフィンランドの自然が表現され、吹き抜けの上の大きな天窓からは自然光が降り注ぐ。
建物の側面にも大きな採光部が取られているのも特徴。「大きすぎるのでは?」という印象を持つが、高緯度に位置するフィンランドでは一日を通して太陽が低い位置にあり、日本とは光の入り方が異なる。やがて訪れる長い冬の、日照時間の短い期間に太陽の光をなるべく多く取り入れるための役割を果たしているのだろう。
フィンランドの空の玄関口として世界中の旅人をもてなすコンパクトな空港には、フィンランド固有の自然が育んだ美学とデザインが反映されている。それは、オーガニックでありながら、ミニマルでモダンな最新のフィンランド建築でありデザインだ。他の空港では感じられない安らぎと心地よさがこの空間にはある。
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