ディプティックのはじまりは1960年代のパリ。3人の創業者はグラフィックデザインを愛し、部屋を飾る壁紙をつくった。香りを愛し、生活空間を香りで満たすフレグランスキャンドルをつくった。雑貨店を経営して、インテリアや香りを世界各国から集めた。ディプティックのルーツがライフスタイルにあることは、現在のブランドのポジションを知るうえで重要なエッセンスだろう。
このたび彼らが、「プレミアムライン」と位置づける新定番フレグランスをラインナップに加えた。この新しい試みにも、移り変わった現代人のライフスタイルが感じられる。それは大自然への旅、植物を愛する心、太陽の光を浴びる瞬間、健康的な生活……。アフターコロナとも称される自然回帰の生き方と、ディプティックの次なるフェーズがリンクする。
---fadeinPager---
5種類の新オー ド パルファンの名称は「レ ゼサンス ドゥ ディプティック(Les Essences de Diptyque)」。テーマはそれぞれ、睡蓮、サンゴ、マザー オブ パール、バーク(樹皮)、砂漠のバラ(デザートローズ、またはストーンローズ)。調香のイメージはすべて自然界がモチーフである。すべての香りを試してみると、意外な驚きがあった。プレミアムの名称から事前に予想したのは、濃厚で濃密な香りの世界。ところがレ ゼサンス ドゥ ディプティックは、ナチュラルな透明感がどこまでも広がる。コスメより食品に近いとさえ感じる素材のレイヤーが心地いい。自然界と共に生きることこそが贅沢な現代における、まさしく1ランク上の(=プレミアムな)香りである。
---fadeinPager---
ハーブのような爽やかさが好みの人なら、睡蓮から着想された「リリフェア」がよさそうだ。サンゴがモチーフの「コライユ オスクロ」も、青みのある瑞々しさで美しい。スパイシーで濃密な香りなら「ルナマリス」で決まり。着想源はキラキラした光沢のあるマザー オブ パールだ。シトラス&フローラル派なら「ローズ ロッシュ」に惹かれるだろう。この着想源になった砂漠のバラとは植物でなく、砂漠地帯でバラの花の形に固まった石のこと。レ ゼサンス ドゥ ディプティック5種類のモチーフは、あくまでもイメージソースとして機能している。
---fadeinPager---
5種類のなかで異質といえるのが、バークがモチーフの「ボワ コルセ」。なんと甘いコーヒーの香りが漂うのだ。香料にも本物のコーヒー豆が使われている。時間が経つとコーヒーの風味や甘さが薄れ、ベーシックなフレグランスに近づく。印象は人によって差があるだろうが、味変ならぬ香り変を愉しめるユニークな品である。
---fadeinPager---
新プレミアムラインはこの先に、ディプティックの定番として恒常展開される。限定品ではないから、焦って購入しなくても大丈夫なのでご安心を。ただし1製品だけはすぐ入手を検討するほうがよさそうだ。リリース記念限定で特別に用意された、5種類すべてのミニボトルが詰まった「ディスカバリーセット」である。1瓶につき10mLと十分な量があり、価格も30,140円と手に取りやすいもの。新ラインは全種類をじっくりと試していくと、まるで小説を読むかのごとく自然界の多様な情景へと心が導かれる。セットならこの体験を得やすく、香りの連続性を味わうのに最適だ。1種類ずつ肌につけ身体と香りとの相性をしっかり確かめてから、ずっと愛用する通常製品を選んでも遅くはない。
Diptyque Japan
TEL:03-6450-5735
www.diptyqueparis.com
ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。