育ての親は人間と2匹の犬…森から連れ出された子鹿、ペットの生活に順応

  • 文:山川真智子
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John Boland-Shutterstocok ※画像はイメージです

1年前、イギリスのデボン州の森でウォーキングをしていた女性が、1匹の子鹿を発見した。子鹿は女性により獣医師の元に届けられた後、動物保護を行う男性に引き取られ、ミリーと名付けられた。保護者となった男性と、2匹の飼い犬との生活にすっかり慣れたミリーは、自分を鹿だとは思っていないようだ。今では家族の一員として、なくてはならない存在となっている。

勘違いから保護されて…森を離れた子鹿

デイリー・メール紙によれば、ミリーは生後24時間足らずで母鹿と離れ離れになった。森でミリーに遭遇した女性が、母鹿に見捨てられたのだと勘違いし、善意のつもりで獣医のクリニックに連れて行ったからだ。

森に戻しても、人間と接触してしまった子鹿を、母鹿が連れ帰ることはない。そう思った獣医は、地元の動物保護活動家のスティーブ・ホッパーさんにミリーを託した。

それから1年経った今、ミリーはホッパーさんの農園で、2匹のジャーマンシェパードと兄弟のように暮らしている。今ではすっかり家族の一員だ。

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気持ちは犬?人と先住犬たちとの生活に順応

ずっと動物に囲まれて生活してきたというホッパーさんだが、子鹿を預かるのは初めてだったという。育て方をネットで勉強し、保護してから10週間の間、毎日4回、近くの農場主が提供してくれたヤギのミルクをミリーに与えたという。

生後2カ月になると、ミリーは徐々にミルクに興味を示さなくなり、食べたいものを探すようになった。BBCによれば、ホッパーさんはミリーの餌にするために、自分の土地に60本ほどの木を植えたという。

当初ミリーはウサギほどの大きさで、まるで接着剤のようにホッパーさんにくっついていたそうだ。2匹のシェパードたちも、妹のようなミリーの面倒をすぐに見るようになったという。彼らはしばしば同じ小屋のなかで過ごし、互いに毛繕いをして頭を突き合い、一緒に駆け回って遊ぶようになった。

通常子鹿は母親の跡をついて回り、母親の行動を真似するものだというが、ミリーはホッパーさんとシェパードたちを『親』と認識しており、彼らの行動パターンに従っているという。

ホッパーさんの農園には他に3頭の鹿がいるが、何度引き合わせても、ミリーは全く彼らに興味を示さないそうだ。

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もう野生には戻れない 飼い主の気持ちは複雑 

少し成長した現在のミリーは、家族からの保護を求めることが減り、自立心が高まっているという。夜は野原で過ごし、犬たちに探しに行かせると、一緒に戻ってきて餌を食べるのが日課だ。

ホッパーさんが名前を呼んだり口笛を吹いたりしても、ミリーは戻って来るという。特にホッパーさんが朝早く出かけたときや、しばらく会えなかったときなどは、声や音を聞いた途端に、駆けつけてくるそうだ。

ミリーはチョコレート・ビスケットや犬用おやつも大好物で、ホッパーさんがおやつを持っていることがわかると、近づいておねだりするという。

ミリーを心から愛するホッパーさんだが、彼女が引き取られた経緯は、「決してあってはならないことだった」と話す。人間に見つけられたことで、本来は野生であるべきミリーの一生が変わってしまったからだ。

獣医師たちも、野生の世界では、たとえ置き去りにされてもやっていける者だけが生き残れるのだとBBCに説明。生まれたばかりの子鹿を見つけた場合は、そのままにしておくべきだとしている。

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 幼かったころのミリーと家族の様子。

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農場で暮らす現在のミリーの様子。